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おすすめのマンガを紹介します≪魔王 JUVENILE REMIX≫

私が今まで読んできた中で最も考えさせられたマンガ『魔王 JUVENILE REMIX』の紹介文を書いてみようと思います。よろしければ読んでいただけるとうれしいです。

『魔王 JUVENILE REMIX』(まおう じゅぶないる りみっくす)とは、2007年27号から2009年30号まで週刊少年サンデーで連載された少年マンガ。
原作:伊坂幸太郎、漫画:大須賀めぐみ。全10巻(全97話)。
伊坂幸太郎の小説「魔王」を原作として、同作者の小説「グラスホッパー」の要素もふんだんに加えて、少年マンガ風に大胆にアレンジした作品。
(以上、ニコニコ大百科より)

一部ネット上では、伊坂先生の小説に出てくるキャラクターが作品(出版社)の垣根を越えて登場したので、『スーパー伊坂大戦』と言われていました。

「ミステリ」らしく、後半にかけての伏線回収を始めとした怒濤の展開が素晴らしいマンガです(特に第7巻第64話の「第2章」からの展開)。
最終巻の第10巻が特に圧巻で、第92話のタイトル「清算」は「凄惨」にも掛けているかなと思うほどの描写がされ、第93話で「魔王は誰なのか」の答えも自ずと出ると思います。

ストーリーを説明すると長くなる上に、ネタバレにもなるので避けますが、この作品には展開ごとに印象的なセリフ(言葉)があります。
本作をおすすめするに当たって、私の印象に深く残っているセリフ(言葉)を5つ紹介したいと思います。

①  たとえでたらめでも、自分を信じて対決していけば、世界だって、変えられる。

第1巻第1話『第一次接触』での「犬養」のセリフです。
「犬養」は自警団「グラスホッパー」(黒い飛蝗・バッタ)のリーダーです。

若くカリスマ性のある「犬養」が市民の支持を集める中で、主人公である高校生の「安藤」は「犬養」と「グラスホッパー」に対して疑問を持ちます(過度な煽動や暴行事件への関与を疑います)。
「安藤」は息を止めている間に自分が念じた言葉を他人にしゃべらせる『腹話術』という能力を持っており、大衆を扇動する「犬養」と対決します。

このセリフは「犬養」の行動原理ですが、『腹話術』と『考える力』だけを使ってたった一人で対決する「安藤」の支えにもなった言葉であり、お互いが対峙した際に何度も出てくるので、印象に残っています。

②  生きてるだけ。……あぁ… あの人は…俺だ。これから先、一生、ただ生きて…  ただ生きていくだけの俺とあの人が何が違うと、どうして言いきれる。どうして…

第4巻第37話『目の前の未来』での「安藤」のセリフです。
ホームレス風の老人がファミレスでドリンクを飲もうとしていました。その老人を見た若いカップルは「きたなぇジジイだ」「何が楽しみで生きてんのかしら」等と言っていました。その光景を見た「安藤」が心の中で思ったことです。
こう思った「安藤」は急に泣き出し、弟の「潤也」は戸惑いながら励まします。

「犬養」から「君の役目は僕を止めることなのかもしれない」と言われた「安藤」は、「犬養」と対決する中で危険な目に遭うとともに、『腹話術』の副作用も出てきます。全部忘れて平凡な生活に戻るべきなのかもしれないと考えていた中でのシーンです。

ここから「安藤」は覚悟を決めて「対決の舞台」へ上がるため、印象深いです。

③  考えろ!!  今までも、そうやって越えてきた! 考えろ!  信じろ!自分を!! 考えろ…っっ!!  マクガイバー。

第6巻第55話『逃亡者の悟り』での「安藤」のセリフです。
マクガイバーは「冒険野郎マクガイバー」という1985年から1992年まで制作されたアメリカドラマの主人公の名前です(このドラマを私は見たことがないです)。
マクガイバーは世界中の悪と戦うエージェントですが、超人的な能力ではなく、陥った危機には身の回りにある素材と科学知識を使って切り抜けるのが特徴のようです。
「安藤」はマクガイバーの戦い方に憧れており、危機に陥っても「考えろ」と自分に言い続けて切り抜けようとします。

本作で「安藤」が「考えろ」とつぶやくシーンは多いですが、このセリフは、「犬養」の参謀であり、強力な能力を持つ「マスター」との直接対決の中で出た集大成のような言葉であり、印象深いです。

④  巨乳大好き  そう…言わせようと思っていた。……洪水は、止める。運命は… まだあんたを… 選んじゃいない!

第8巻第77話『約束Ⅱ』の「潤也」のセリフです。
この描写はトリハダものでした(「巨乳大好き」で感動するとは思ってもいませんでした)。

ここから、「潤也」が兄と同じように「犬養」と対決する意思を示し、怒濤の展開が繰り広げられていくので、印象的な言葉です。

⑤  クラレッタのスカートを直そう。

第10巻最終話『兄弟』の「潤也」のセリフです。
クラレッタは、第二次世界大戦中のイタリアの独裁者ムッソリーニの恋人です。
クラレッタはムッソリーニと一緒に銃殺されますが、二人の遺体は広場に逆さに吊るされました。そうすると、クラレッタのスカートがめくれて群衆は大喜びしました。ただ、その時に一人がブーイングを浴びながらも梯子に登って、スカートを戻し自分のベルトで縛り、めくれないようにしました。
「クラレッタのスカートを直そう」とは、興奮する群衆に殺されてもおかしくない中で、やりすぎではないかと疑問に思った人がとった、勇気ある行動を伝えるエピソードです。

「安藤」が「犬養」の演説会場に向かう際に、弟の「潤也」に送ったメールの末尾に書いてあったのが、『クラレッタのスカートを直してくるよ。』でした。

このイタリアのエピソードは本作を読むまで知りませんでしたが、本作のテーマに一貫性を感じさせるもので、とても印象深い考えさせる言葉です。

最後に

以上、私が印象的だと思う5つのセリフ(言葉)を元に、「魔王 JUVENILE REMIX」を紹介してみました。
他にも印象的なセリフは、「消灯ですよ」「俺はぜんぜん普通だよ」など多くあります。
また、「蝉」や「スズメバチ」といった登場キャラクターも魅力的です(スピンオフに当たる「Waltz」も面白いです)。
本作に興味を持たれた方は、ぜひご一読ください。

原作小説の「魔王」は、「安藤」が20代のサラリーマンであり、「憲法改正」を取り扱っています。
少年マンガとしてアレンジされた本作のほうが、ストーリーが明快で、メッセージ性も分かりやすいのではないかと思います。
個人的にはアニメ化してほしかった作品です。前半が頭脳戦中心で展開もゆっくりしているので、アニメ化するほどの人気が出なかったのかなと思います。ニコニコ動画だと、魔王JRの英雄MAD動画が好きです(第1章の安藤が孤独に戦う姿に泣けます)。

長いマンガ紹介文になりましたが、最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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