見出し画像

認知症リスクを下げる食事:地中海食

今日のポイント

  1. 地中海食は認知症リスクを低下させる

  2. 地中海食を食べていると動脈硬化や脳の異常タンパク質蓄積が進みにくい

  3. 認知症リスクを上げる食品を少なくして、代わりにリスクを下げうるとされる食品を取り入れることが大事

参考文献
[Adv Nutr. 2016 Sep; 7(5): 889–904.]
[Neurology. 2023 May 30;100(22):e2259-e2268.]

参考記事

本文

認知症リスクを上昇させてしまう食事はありますが、リスクを下げることができる食事はあるのでしょうか。欧米では以前から地中海食が健康に良い可能性があるとして注目されてきました。地中海食は、イタリア料理・スペイン料理・ギリシア料理など地中海沿岸諸国の食事や食習慣のことです。ナッツ・オリーブオイル・野菜・果物・全粒穀物・豆・種子・魚・鶏肉・ヨーグルトが多く、赤肉・卵・菓子は少なめといった特徴があるとされています。そして、地中海食は動脈硬化やがんのリスクが近代の西洋的な食事よりも低い可能性があるとされています。ではまず、地中海食と認知症の関係を見た研究についてお話しします。

地中海食と認知症についてはいくつかの疫学研究がなされており、それらの研究をまとめて整理した論文があります。32研究を対象として整理した結果、多くの研究は地中海食が認知症リスクを低下させると報告していることが分かりました。しかし、一部の研究では関連性が見られない、と報告されていたとのことです。

2023年3月には脳組織を剖検 (死後に解剖して観察することです) した結果と地中海食の関係を見る研究もなされています。アメリカに住んでいる 581人を対象としたこの研究の結果は、地中海食をしっかり食べている人たちはアルツハイマー型認知症の原因となる異常タンパク質の蓄積が進んでいなかったというものでした。

なぜ、地中海食が認知症リスクを下げたり、アルツハイマー型認知症の原因となる異常タンパク質の蓄積を抑制するのでしょうか。まだはっきりとしたことは分かっていませんが、一説には地中海食はナッツやオリーブオイル、緑黄色野菜、果物、魚などが多いので不飽和脂肪酸の割合が高く、抗酸化作用も得られる結果、認知症のリスクを下げられるのではないか、とされています。また、地中海食では肉やバター、超加工食品、菓子が少なめですので、動脈硬化や認知症リスクを上げる食品の摂取量も少ないのでそれも良い結果につながっているのでしょう。

さて、私たち日本人は地中海食を積極的に取り入れるべきでしょうか。実は、地中海食ほど研究結果が揃っていませんが、伝統的な和食も認知症リスクを低くできるのではないかと言われています(これに関してはまた別の記事で扱おうと思います)。ですので、伝統的な和食をメインで摂取しておられるのであれば、強いて地中海食に変更する必要はないのかもしれません。

最後になりますが、例えばポテトチップスなどを食べる量を減らさずに、ナッツやオリーブオイルをさらに追加で食事に取り入れたとしても、健康に良いということはないでしょう。カロリーや脂質の摂りすぎになるだけです。大切なのは認知症リスクを上げる食品を少なくして、代わりにリスクを下げうるとされる食品を取り入れることだと思います。日々の生活を見直して、健康的な生活を送っているという現在の充実感満足感を得ながら、将来に備えていきましょう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?