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母は手負いの虎だった6 「偏見は無知なり・人が本来見るべきところ」

手負いの虎シリーズ。全部はとても書けないボリュームなので。メインイベント的なことを書き綴っています。

壊滅的に何か壊れた気がした19才の私。

なんかもう、とにかく、ぜんぶ、

ぜーんぶどーでもよくなっちゃったんですよね。

この世なんかどうせ自分とは関係ないし。

国の相談所も全然、具体的には力かしてくれなかったし。

身内はみんな他人事扱いだし。

異性にモテても全然現実味ないし。

唯一、弟だけは気にかかる幸せになってほしい人でした。

けど!

もうそれさえ、当時のわたしには原動力湧かないほど電池切れで。

この世とはおさらばじゃ!って感覚がMAX振り切っているのですよ。

で。

最期に。死出の旅に出ることにしました。

不慮の事故とかで他界出来たらいいな、と虚ろに思って。一度くらい、ここではないどこかに行きたくて。

当時、隠し持っていたへそくりと、父から追い剥ぎのように奪い取ったお金との合計額で。

航空券が安くて、一番長く滞在できる貨幣価値の国を調べて。

ある東南アジアへ飛んでみました。

弟のことが気がかりだったけれど、もうどうにもこうにも。

「この世におなかいっぱい」って絶望が圧倒的に勝っていまして。

高飛びしか思いつかなかったのですよ。

その国にはジゴロと呼ばれるストリート男子がいっぱいいて。到着するなり日本女性にわいわい寄ってきました。みんなおメメぱっちりで背が低くて細め、アイドルみたいな感じで。(残念ながら、わたしの好みではない)

日本女性にホストサービスをして、ちょっとお金や物をもらうのがお仕事。

わたしはタクシーで安宿へ向かい。日がな一日、ランニングと短パンでずっと屋台で座ってたり、ビーチでぼーっと野犬と一緒に海眺めたりしていて。

燃え殻です。

完全に。

ある日、ジゴロの一人が道端に座っている私の横で、ギター弾いて歌い始めて。

「あー、お金ないわー。今日のご飯も買えないわー」(日本語)

とかへらへら言ってきて。

これも彼らのお仕事です。

でも、アイドル系男子のホストサービスとか、もう、どうでもいい私なので。

「へー。でも、ギター弾いて楽しそうだねぇ。わたしもお金ないけど、生きるのもホントに嫌になっちゃってるから、楽しそうな君のほうがすごいねぇ」

と返したら。

アイドル顔のジゴロが。

静かに泣きはじめましてね!

「さみしい。。かなしい。。」

ってね。

子どもみたいに綺麗な目をした。本来、穏やかな静かな性格であるのが伝わってくる人でした。

真っ黒に日焼けしてジゴロよりボロっちい服を着た、もじゃもじゃパーマ頭の死ぬ気でうろついている、日本人に見えない日本人が。道端でジゴロとお互いの人生相談をしているという。

シュールで、ちょっとフォトジェニックな絵面。

滞在1週間が経つ頃には。

私の周囲にいるジゴロ男子の数が10人くらいになっていて。夜な夜な、彼らが集団生活をしているアパートの中庭で。焚き火を囲んで、色々な話をしていました。

話せば。皆、普通に平穏を望む人たち。

たまたま穏やかなグループではあったのですが。

街では輩扱いされていても、それぞれに、かなしさ、さみしさ、絶望と希望が入り混じる心の葛藤を抱えている。無理くり、ハイテンションのスイッチを入れて、いつでも陽気なパーティーピープルみたいに見せている。

いつの間にか、屋台のおばちゃんも「観光客価格」じゃなく、「現地民価格」で私にご飯を食べさせてくれているし。

どこへ行くにも彼等の何人かが、タチの悪いジゴロから私を守るためにボディガードで付いてきてくれる状態。

「もう、安宿に泊まるのやめて、ここのどこかに泊まりなよ!」とまで言ってくれる彼等。

なんだろう。この状況。

消えて無くなりたい、、と無鉄砲に飛び出した旅が、極めて安全なことになっている。

見た目もやっていることも、半分ストリートギャングのような彼等が、わたしにはとても温かい。

反面、観光で来た日本人からは。ここでもわたしは、群集心理と一般常識の反感を買いました。

「日本人の女がジゴロにいれあげて、下品なビッチになっている。日本人として関わりたくない。最低だな。恥を知れ。」「1人でなにやってるの?どうしてそんな生活しているの?」とわざわざ言いに来た人もいました。

死ぬ気の絶望で荒れていたわたしですから。そう見えるのは事実ですし、仕方ないですけどね。なのに。わたしを軽蔑しているわりには、現地で困ったことがあると、わたしに相談に来たりする。

遠い異国でも、何も知らない人から偏見とお説教w うんざりでした。

【ここでの悟り】

心根の善き人は。今の状態、状況がどうであれ。善き人のままだと痛感しました。逆も然り。

自分はせっかく海外にバカンスで来ていると言うのに。わざわざ、わたしにお説教をしたり、日本人同士で悪口を言う、綺麗なリゾート服を着て、高級ホテルに泊まっている同国民の日本人。

輩扱いされているジゴロ君たちの中の数人は。未来に希望を描けない心境でも、わたしとまっすぐに話しをして。「淳子はやさしいね。聞いてくれて嬉しい」と、なけなしのお金でフルーツを買ってきてくれたりする。

見た目の印象は大切。服装も髪型も大切。

でも、本当に感じる価値のあるところは、その人が漂わせる雰囲気と振る舞い。その人が何かを目にした時に無防備に発せられた言葉。それを感じ取る真ん中の視点。ブレなさ。

「善良な敗者」がいるこの世。

必ずや、タフに善き魂で立ち上がり、愛で人と関わりながらこの世を生き抜く、命を生き切る人は、静かに多いはず、と確信。そうゆう人たちは「勝ち組」「負け組」なんて感覚を人には向けないだろうな。自分が勝ち組と呼ばれるようになったとしても。

「偏見は無知」

同時に、直感、感覚を研ぎ澄ませて、本質を感じ取る姿勢で、人と向き合おう。

ーーー

この後、日本人代表みたいな事態になるとは思ってもいませんでした。。。

つづく

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