浮き出る夜

暗くなると僕はどこかへ行きたくなってしまう。何かに呼ばれているようなそんな感覚。
何に縛られているわけでもない解放されたそんな感じ。
ふらふらと外に出る。

誰もいない道路にまばらに通る車とか、家の明かりすらも消えた時間に僕は惹かれてしまう。
世界に自分しか居なくなったかのような孤独感と静けさ。

昼間にあったことなんか全部忘れて、何もかもから解放されて、自由に走り回る。
冷たくて、でも冷たすぎない。そんな空気が服を抜けて肌を撫でる。

この瞬間だけは何もかもから解き放たれて自由になる。
思考は緩やかに、でも澄み切っていて、心地よい。
聞こえた音をなんとなく口ずさんだりする。

口ずさんだ音は頭の中で響いてなんだか気持ちが良い。
音が響きながらなんてないことを考えて、明日は半歩だけ先にすすめるような気がしてきて。

周りには誰も居ないはずなのに不思議と怖さなんか微塵も感じなくて、なんだかこの家の形は良いとか、この道の凸凹加減が良いとかそんなどうだって良いことばっかり頭のなかに浮かんで。

昼間は見えなかったものが夜になると見えてくる気がして。
夜は特別なのだ。静かで孤独で、それでいて少しだけ先が見えなくて。

昼間は人間で居ようと気を張っていたはずなのに。
夜は、そんな気を張った僕らを癒やしてくれるみたいで。

夜になると自分が浮き出てくるようなそんな気がする。


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