デザインの限界について考える

デザイン経営、高度デザイン人材、デザインシンキング…
「デザイン」というキーワードを中心に、
デザイナーが持つデザイン力、デザイン力が生み出すアウトプットがとても注目されています。

私もこの1年近く、仕事の多くの場面でデザインシンキング手法を用いた取り組みに関わってきましたし、
この数週間はまた仕事として、多くのデザイナー・クリエイターの方と会話をさせていただいておりました。

「デザインとは何か?」という話については、
意匠を表現すること
設計をすること
課題を解決する取り組みそのもの
著名な方々から色々な意見が出ておりますが、
多くの人にとって重要なことは、細かい定義論よりも、デザイン力・デザイン人材・デザイナーが解決してくれることは何なのか?解決できないことは何なのか?について、なんとなく理解し、それとなく活用できるようになることなんじゃないでしょうか。

その「デザインの限界」について、考えておりました。

デザインの限界が何か、を一言で説明するのは難しいのですが、
デザインの限界を決めているものは何か、について見えてきたのが

「人」の限界。

何かしらの仕事において、何かしらのデザインと向き合うステークホルダーのリテラシー、ボキャブラリー、表現と解釈に対する限界が、少なくともその仕事におけるデザインのポテンシャルの限界を定めているということがよくわかりました。

例えば、面白いアイデアがたくさん出てきたのに試作や事業化に至らないケース。

アイデアをデザインするフェーズでは、人間中心設計手法、デザインシンキング手法を用いることで、新しい(と俺は思う)発見、面白い(と私は思う)アイデアがどんどん出てくるかもしれません。
でもそれが、制作や実行段階に着手するところで、役員や、同僚や、クライアントの理解を得られない。
この面白さがわかってもらえない。うまく伝わらない。
アイデアを作れないか、陳腐なものにしかならない。どこかで見たことあるもの、誰かが褒めたものしか理解されない。

それは、自身に表現力が足りないから。そして相手にその表現の理解力が足りないからです。

アイデアをデザインする段階の次にある
ビジネスモデルをデザインする
インターフェース・機能をデザインする
必要なヒト・設備・資本をデザインする
その手法を理解し、実行する力。あるいはそのアウトプットを理解する力。
それが十分でないと、アイデアが芽を出すことはないようです。

そして、少なくとも「デザインシンキング」はその部分を解決しません。
シンキングだから。思考法だから。アウトプット制作スキルではないからです。

ストーリーボーディングと、実際のUIや機能を設計・開発することは違うし
レゴブロックやボール紙のモックと、実際の施設/店舗設計・施工は違うし
ビジネスモデルキャンバスやビジネスフローを基に、具体的な顧客獲得チャネル、集客見込み、値付け、コスト等の具体的・定量的なモデルに落とし込まなくちゃいけない。

別のスキルが必要となってきます。

アウトプットを出す人の問題だけではありません。
そのビジネスケース、UI、意匠、体験の良さを理解できなくては、同意や支持、承認することは怖くてできないでしょう。人は知らないものを理解することはできないし、理解できないものが傍にあることは耐え難いストレスです。

アイデアが具現化できない、あるいは具現化したらとても陳腐なものになってしまったのだとしたら、具現化フェーズのデザイン力・理解力が自身やスポンサーに足りていないのが原因です。

それが現時点における「デザインの限界」と考えております。

デザインがビジネスをブレイクスルーするためには、取り巻く「人」のアップデートがまだまだ必要そうです。


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