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【32.水曜映画れびゅ~】"Call Me By Your Name"~原作を読んでから、観てみました。~

"Call Me By Your Name"君の名前で僕を呼んでは2017年公開の映画で、アカデミー脚色賞受賞作品です。

あらすじ

家族に連れられて北イタリアの避暑地にやって来た17歳のエリオは、大学教授の父が招いた24歳の大学院生オリヴァーと出会う。一緒に泳いだり、自転車で街を散策したり、本を読んだり音楽を聴いたりして過ごすうちに、エリオはオリヴァーに特別な思いを抱くようになっていく。ふたりはやがて激しい恋に落ちるが、夏の終わりとともにオリヴァーが去る日が近づいてきて……。

(映画.comより一部抜粋)

本棚に眠らせていた原作本

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2年半前、蔦谷書店で暇をつぶしていた時にこの洋書に出会いました。

当時はたいして映画に興味を持っておらず、この作品がアカデミー賞を取ったことなど知らなかったのですが、思わずジャケ買いしました。

しかし読んでみると、かなり英語のレベルが高く、読み切るのは無理だと早々に見切りをつけて本棚に眠らせることにしました。

そうしてこの本が眠っている間に、私は思いがけず映画マニアになってしまいました…

そうなってしまうと『君の名で僕を呼んで』という映画を避けては通れることはできません。観たい映画リストの上位に常にリストアップされていました。

しかしこの映画を観ようと思うたびに頭をよぎるのが、本棚に眠っているこの原作本。原作本を買っているにもかかわらず、それを差し置いて映画を観ることを私はどうしてもできなかったのです。

とは思いつつも、246ページもある洋書を読むのはさすがに腰が引けました。読み切る集中力に自信がなく、読もう読もうと思いながらもなかなか手を付けることができなかったのです。

そんななかでTUTAYAにふらっと立ち寄った先日、『君の名で僕を呼んで』のDVDを衝動的に借りてしまいました。

もう本当に見たかったです、私…

しかしそうなったからといって原作本を無視することはできません。

「そうなれば、返却期限が来る1週間以内に原作を読むだけだ」と少し開き直り気味に本棚からこの小説を取り出しました。

原作を読んで

そんな経緯で読み始めた"Call Me By Your Name"

「集中力が持つかな」なんて心配していましたが、読み始めればそんな心配はどこ吹く風。完全にストーリーに没頭してグングン読み進め、無事1週間で読み切ることができました。

(ちなみに1週間きっかりで読み切ったので、映画をみる時間の余裕がなく、レンタルは1週間延長しました笑)

そして原作を読んでの感想ですが、一言で表すなら…

こんな美しい恋愛小説、初めて読んだっ!

本当に美しい。

主人公エリオの一人称目線で書かれたこの作品では彼の心の揺れ動き加減、そして人を愛する心情の深さがものすごく繊細に描かれていました。

また本作はゲイ小説というカテゴライズされているのですが、男と男など関係なく、愛する人と想いを通わせることの難しさと大切さがヒシヒシと伝わってきて、なんか自分もいろんなことを思い出しちゃいました(笑)

そんなエリオの心の内側、そしてオリヴァーとの関係を描き出すストーリーは「美しい」の一言に尽きました。

そして"Call Me By Your Name"というタイトル。
本当にいいタイトルであると読み終わってしみじみ思いました。

そして、映画を観る。

そんなこんなでやっと映画を観るまでこぎつけました。

アカデミー脚色賞受賞、そして『インターステラー』(2014)や『レディ・バード』(2017)に出てたティモシー・シャラメが主演男優賞ノミネートということで期待度MAXで観ました。

率直な感想として、映画になって物語の美しさがより鮮明になりました。

イタリアの美しい情景やエリオが奏でるピアノの音色など、文字だけでは完全に感じ取れなかったものが物語を引き立ててくれました。

そして小説ではエリオの一人称目線で描かれた物語が、映画ではモノローグなしの完全なる三人称目線になっていることが物語を新鮮に映させました。

劇中では小説のようにエリオの心の声が表されていないからこそ、エリオを演じたティモシー・シャラメとオリヴァーを演じたアーミー・ハマーが作り出す繊細な空気感が小説とは異なる形で、二人の美しい関係性を感じさせました。

物語の筋としては、大方原作に忠実でした。

多少の脚色や部分的に省略されている箇所はありますが、小説で印象的だったセリフなどは映画にそのまま反映されており、「おおっ、小説のあの部分だ!」と思うシーンがいくつもありました。

ただ小説より展開が早い分、二人が強く惹かれ合った理由が曖昧になってはいるのでは、と思う節もありました。仕方ないといえば仕方ないのですが、そういった部分はやはり小説の方が勝るものがあると思います。

映画のその後…

かなり原作に忠実だった本作ですが、原作と大きく脚色されていた部分もあります。

それがラストシーンです。

実は映画のラストシーンの部分というのは、小説で言えば残り20~30ページのところ。

つまり小説では「映画のその後の物語」が描かれていることになります。もちろん映画のラストシーンも素晴らしいのですが、原作を読んだ立場から言わせていただくと、小説はもっと素晴らしい終わり方をします。

それこそが「"Call Me By Your Name"というタイトルをいいタイトルと思った」理由へとつながります。

私は洋書で読破しましたが、今になって調べてみる、翻訳本が出版されていたのですね(笑)

映画とは異なるラストに興味がある方は、ぜひ一読されることをお勧めします。


前回記事と、次回記事

前回投稿した記事はこちらから!

これまでの【水曜映画れびゅ~】の記事はこちらから!

次回の記事では、コーエン兄弟監督の珠玉のコメディー作品"Burn After Reading"バーン・アフター・リーディング(2008)について語っています。