奥野じゅん

ミステリなど書くひと//『江戸落語奇譚』『雨月先生は催眠術を使いたくない』角川文庫/『…

奥野じゅん

ミステリなど書くひと//『江戸落語奇譚』『雨月先生は催眠術を使いたくない』角川文庫/『名著奇変』飛鳥新社など//将来の夢はものしり博士です。お仕事のご依頼について→https://note.com/junsta/n/n267a802a1139

マガジン

  • 刊行物スピンオフまとめ

    出版作品のショートストーリーなど

  • Xで書いた妄想物語まとめ

    即興で書きXに投稿したものをまとめています。

  • はるまひ廃墟探訪(名著奇変スピンオフ)

    『名著奇変』春親・真尋コンビの廃墟めぐり短篇集。無かったはずの世界線で、部活してます。

  • 内省の三行

    ランダム生成された写真をお題に、地の文の心理描写3行を書く練習をします。写真は https://picsum.photos さんから。

  • 突発的な短編マガジン

    1話完結の短編です。

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noteの目次・自己紹介

◆noteコンテンツ一覧○読みもの(上の方が更新頻度が高いです) ・刊行物スピンオフまとめ  出版作品のショートストーリーなど ・突発的な短編マガジン  単話読み切りの短編集 ・振り返るな、書け  時間制限付きでランダムお題の掌編を書く ・Xで書いた妄想物語まとめ  2~3ツイートの即興で書いた話のまとめ ・はるまひ廃墟探訪  アンソロジー『名著奇変』スピンオフ短篇集 ・作家犬と、影武者の僕  なぜかじゅんすたによく似た生活を送る犬の近況 ・日常の異変シリーズ

    • 4年目になったよ

      ×滑り止め ○滑り込み

      • Day2.9「ウミガメのスープ」 八日後、君も消えるんだね 正幸誕生日SS

        (SSと言いつつ脚本形式です。有料版限定エピソード候補だった話です) ○二日目の夜、陽平の家。畳の上に布団を並べて寝ようとするも、みんな眠れない SE:莉子が寝返りを打つ音 莉子「んー……寝れなーい」 正幸「うっせーなあ。言ったら余計寝れねえだろ」 莉子「だってさあ」 凪「色々考えちゃうよね」 陽平「(クスッと笑って)じゃあ、気晴らしに問題出すよ」 莉子「なんの?」 陽平「ウミガメのスープ。僕が出した問題に、みんなが質問して、僕はイエスかノーだけ答える。それを繋げて、正解者

        • Xで書いた妄想物語まとめ27

        • 固定された記事

        noteの目次・自己紹介

        マガジン

        • 刊行物スピンオフまとめ
          20本
        • Xで書いた妄想物語まとめ
          28本
        • はるまひ廃墟探訪(名著奇変スピンオフ)
          2本
        • 内省の三行
          67本
        • 突発的な短編マガジン
          26本
        • 振り返るな、書け
          27本

        記事

          身に覚えのない交通系IC - 『雨月先生は催眠術を使いたくない』スピンオフSS

          (ネタバレを含みますので、未読の方はご注意ください)  有楽町線・桜田門駅というのは、名前の華やかさとはうらはらに、あまり存在感のない駅である。  日本の中枢、官公庁舎が集められたこの場所には、千代田線・丸ノ内線・日比谷線が乗り入れる絶対王者の霞が関駅があり、わざわざ乗り換えがだるい有楽町線に乗る理由があまりない。  それは、桜田門と呼ばれる警視庁本部に出勤する者も例外ではなく、捜査二課の刑事である不破修平も、当然のごとく霞が関駅ユーザーであった。  これからもずっと、霞が

          身に覚えのない交通系IC - 『雨月先生は催眠術を使いたくない』スピンオフSS

          Xで書いた妄想物語まとめ27

          Xで書いた妄想物語まとめ27

          旧繰川高等学校(名著奇変-はるまひ廃墟探訪2)

           我が校伝統の写真部が実質廃墟部になってしまったのは、幼馴染みの圧倒的スポンサー力のせいであった。  大手菓子メーカー・秋野製菓の御曹司であるこのピアスバチバチ野郎は、遠出の撮影のたびに、息子の活動に寛容すぎる偉大な父から『部費の足しにしなさい』と言って十万円を支給されていた。  真尋はピュアなので、にっこにこの笑顔で『部長、この金好きに使ってください!』と言って大金を渡し、恐縮した部員たちは秋野製菓の圧倒的財力の前で何も言えなくなり、これまた無邪気に『先輩、この廃墟行きたい

          旧繰川高等学校(名著奇変-はるまひ廃墟探訪2)

          Xで書いた妄想物語26

          Xで書いた妄想物語26

          2/12

           喰われて死ぬのかな、という本能的感覚と同時に、なんだかみすぼらしくてかわいそうだという理性で、目の前の野良犬を見ていた。  深い雪に長靴を打ち込んで行くように、ぐぽっ、ぐぽっと前に進む。  弥山が犬の目線に合わせてしゃがみ「どしたの」と微笑みかけると、犬はしょぼくれたまま、所在なさげにうろうろと肉球の跡を増やした。

          2/11

           この霞の先には何も無い――本能が悟っていた。  足がすくむ。一歩踏み出す。  わずかな砂利がぽろぽろと、崖下にこぼれ落ちてはすぐに消えていた。

          2/10

           え!? ホームボタンある!? 懐っっつ!!  ……と思いながら、宝物をすくい上げるように両手でスマホを包む。  そう、これは、犯人の過去の写真を大量に載せた夢のタイムカプセル。  

          2/8

           合宿そのものは楽しかった。  予想どおり癖の強めのひとが多かったけれど、それも含めて非日常体験だった。  問題は、直美の与り知らぬところで、全く異なるプログラムが進行していたことだ。

          2/7

           被害者が最後に目撃されたのは、海外系大型家具店だった。  店内・店外の防犯カメラを繋ぎあわせると、三時間ほど滞在していたようだ。  弥山が気になったのは被害者が手ぶらだったことで、モノをじっくり見るような仕草が一切見られなかったことにも、違和感を覚えた。

          2/6

           ふざけているとしか言いようがなかった。唯一の証拠写真がこれだなんて。  なに? この遠景とベンチの位置から撮影場所を特定しろってこと? 自転車の車種で犯人を絞り込めとでも言いたい?  慣れない酒を飲みくだをまく弥山は、据わった目で枕辺の顔を見る。  

          2/5

           字であればなんでもいいとさえ言った。  まごうことなき濫読派である。  枕辺はもじゃもじゃの頭を掻きながら「いつからうちの弥山はこんなになっちまったんだ」と嘆く。  しかし、その言葉に弥山が反応することはなく、一点を見つめたまま超速でページをめくっていた。  字、なんでこんな落ち着くんだろ……やっぱりあの妙なきのこを食べたからかな。  思考の隅で、派手な紅色のきのこが溶ける。  麻薬みたいな成分でも入っていたのでは云々と、ぼんやりとは考えられるものの、やはり自分の思考よりも

          2/4

           日の出寸前、海の向こうに黎明を感じながら、大きく息を吸い込んだ。  冷たい空気が一気に入って、気管支から肺胞までも、氷の粒を取り込んでしまったかのように思える。  弥山は細く息を吐きながらしゃがみ、無線を耳に突っ込んで、相手の動向を探る。