奥野じゅん

ミステリなど書くひと//『江戸落語奇譚』『雨月先生は催眠術を使いたくない』角川文庫/『…

奥野じゅん

ミステリなど書くひと//『江戸落語奇譚』『雨月先生は催眠術を使いたくない』角川文庫/『名著奇変』飛鳥新社など//将来の夢はものしり博士です。お仕事のご依頼について→https://note.com/junsta/n/n267a802a1139

マガジン

  • 刊行物スピンオフまとめ

    出版作品のショートストーリーなど

  • Xで書いた妄想物語まとめ

    即興で書きXに投稿したものをまとめています。

  • はるまひ廃墟探訪(名著奇変スピンオフ)

    『名著奇変』春親・真尋コンビの廃墟めぐり短篇集。無かったはずの世界線で、部活してます。

  • 内省の三行

    ランダム生成された写真をお題に、地の文の心理描写3行を書く練習をします。写真は https://picsum.photos さんから。

  • 突発的な短編マガジン

    1話完結の短編です。

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noteの目次・自己紹介

◆noteコンテンツ一覧○読みもの(上の方が更新頻度が高いです) ・刊行物スピンオフまとめ  出版作品のショートストーリーなど ・突発的な短編マガジン  単話読み切り…

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ラジオ2405文体を変えています

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Day2.9「ウミガメのスープ」 八日後、君も消えるんだね 正幸誕生日SS

(SSと言いつつ脚本形式です。有料版限定エピソード候補だった話です) ○二日目の夜、陽平の家。畳の上に布団を並べて寝ようとするも、みんな眠れない SE:莉子が寝返…

奥野じゅん
1か月前
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Xで書いた妄想物語まとめ27

奥野じゅん
1か月前
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身に覚えのない交通系IC - 『雨月先生は催眠術を使いたくない』スピンオフSS

(ネタバレを含みますので、未読の方はご注意ください)  有楽町線・桜田門駅というのは、名前の華やかさとはうらはらに、あまり存在感のない駅である。  日本の中枢、…

奥野じゅん
1か月前
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Xで書いた妄想物語まとめ27

奥野じゅん
2か月前
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旧繰川高等学校(名著奇変-はるまひ廃墟探訪2)

 我が校伝統の写真部が実質廃墟部になってしまったのは、幼馴染みの圧倒的スポンサー力のせいであった。  大手菓子メーカー・秋野製菓の御曹司であるこのピアスバチバチ…

奥野じゅん
2か月前
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Xで書いた妄想物語26

奥野じゅん
3か月前
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 喰われて死ぬのかな、という本能的感覚と同時に、なんだかみすぼらしくてかわいそうだという理性で、目の前の野良犬を見ていた。  深い雪に長靴を打ち込んで行くように…

奥野じゅん
3か月前
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2/11

 この霞の先には何も無い――本能が悟っていた。  足がすくむ。一歩踏み出す。  わずかな砂利がぽろぽろと、崖下にこぼれ落ちてはすぐに消えていた。

奥野じゅん
3か月前
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 え!? ホームボタンある!? 懐っっつ!!  ……と思いながら、宝物をすくい上げるように両手でスマホを包む。  そう、これは、犯人の過去の写真を大量に載せた夢の…

奥野じゅん
3か月前
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 合宿そのものは楽しかった。  予想どおり癖の強めのひとが多かったけれど、それも含めて非日常体験だった。  問題は、直美の与り知らぬところで、全く異なるプログラム…

奥野じゅん
3か月前
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 被害者が最後に目撃されたのは、海外系大型家具店だった。  店内・店外の防犯カメラを繋ぎあわせると、三時間ほど滞在していたようだ。  弥山が気になったのは被害者が…

奥野じゅん
3か月前
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 ふざけているとしか言いようがなかった。唯一の証拠写真がこれだなんて。  なに? この遠景とベンチの位置から撮影場所を特定しろってこと? 自転車の車種で犯人を絞…

奥野じゅん
3か月前
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 字であればなんでもいいとさえ言った。  まごうことなき濫読派である。  枕辺はもじゃもじゃの頭を掻きながら「いつからうちの弥山はこんなになっちまったんだ」と嘆く…

奥野じゅん
3か月前
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 日の出寸前、海の向こうに黎明を感じながら、大きく息を吸い込んだ。  冷たい空気が一気に入って、気管支から肺胞までも、氷の粒を取り込んでしまったかのように思える…

奥野じゅん
3か月前
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noteの目次・自己紹介

noteの目次・自己紹介

◆noteコンテンツ一覧○読みもの(上の方が更新頻度が高いです)

・刊行物スピンオフまとめ
 出版作品のショートストーリーなど

・突発的な短編マガジン
 単話読み切りの短編集

・振り返るな、書け
 時間制限付きでランダムお題の掌編を書く

・Xで書いた妄想物語まとめ
 2~3ツイートの即興で書いた話のまとめ

・はるまひ廃墟探訪
 アンソロジー『名著奇変』スピンオフ短篇集

・作家犬と、影武

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Day2.9「ウミガメのスープ」 八日後、君も消えるんだね 正幸誕生日SS

(SSと言いつつ脚本形式です。有料版限定エピソード候補だった話です)

○二日目の夜、陽平の家。畳の上に布団を並べて寝ようとするも、みんな眠れない
SE:莉子が寝返りを打つ音
莉子「んー……寝れなーい」
正幸「うっせーなあ。言ったら余計寝れねえだろ」
莉子「だってさあ」
凪「色々考えちゃうよね」
陽平「(クスッと笑って)じゃあ、気晴らしに問題出すよ」
莉子「なんの?」
陽平「ウミガメのスープ。僕が

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身に覚えのない交通系IC - 『雨月先生は催眠術を使いたくない』スピンオフSS

(ネタバレを含みますので、未読の方はご注意ください)

 有楽町線・桜田門駅というのは、名前の華やかさとはうらはらに、あまり存在感のない駅である。
 日本の中枢、官公庁舎が集められたこの場所には、千代田線・丸ノ内線・日比谷線が乗り入れる絶対王者の霞が関駅があり、わざわざ乗り換えがだるい有楽町線に乗る理由があまりない。
 それは、桜田門と呼ばれる警視庁本部に出勤する者も例外ではなく、捜査二課の刑事で

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旧繰川高等学校(名著奇変-はるまひ廃墟探訪2)

旧繰川高等学校(名著奇変-はるまひ廃墟探訪2)

 我が校伝統の写真部が実質廃墟部になってしまったのは、幼馴染みの圧倒的スポンサー力のせいであった。
 大手菓子メーカー・秋野製菓の御曹司であるこのピアスバチバチ野郎は、遠出の撮影のたびに、息子の活動に寛容すぎる偉大な父から『部費の足しにしなさい』と言って十万円を支給されていた。
 真尋はピュアなので、にっこにこの笑顔で『部長、この金好きに使ってください!』と言って大金を渡し、恐縮した部員たちは秋野

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2/12

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 喰われて死ぬのかな、という本能的感覚と同時に、なんだかみすぼらしくてかわいそうだという理性で、目の前の野良犬を見ていた。
 深い雪に長靴を打ち込んで行くように、ぐぽっ、ぐぽっと前に進む。
 弥山が犬の目線に合わせてしゃがみ「どしたの」と微笑みかけると、犬はしょぼくれたまま、所在なさげにうろうろと肉球の跡を増やした。

2/11

2/11

 この霞の先には何も無い――本能が悟っていた。
 足がすくむ。一歩踏み出す。
 わずかな砂利がぽろぽろと、崖下にこぼれ落ちてはすぐに消えていた。

2/10

2/10

 え!? ホームボタンある!? 懐っっつ!!
 ……と思いながら、宝物をすくい上げるように両手でスマホを包む。
 そう、これは、犯人の過去の写真を大量に載せた夢のタイムカプセル。
 

2/8

2/8

 合宿そのものは楽しかった。
 予想どおり癖の強めのひとが多かったけれど、それも含めて非日常体験だった。
 問題は、直美の与り知らぬところで、全く異なるプログラムが進行していたことだ。

2/7

2/7

 被害者が最後に目撃されたのは、海外系大型家具店だった。
 店内・店外の防犯カメラを繋ぎあわせると、三時間ほど滞在していたようだ。
 弥山が気になったのは被害者が手ぶらだったことで、モノをじっくり見るような仕草が一切見られなかったことにも、違和感を覚えた。

2/6

2/6

 ふざけているとしか言いようがなかった。唯一の証拠写真がこれだなんて。
 なに? この遠景とベンチの位置から撮影場所を特定しろってこと? 自転車の車種で犯人を絞り込めとでも言いたい?
 慣れない酒を飲みくだをまく弥山は、据わった目で枕辺の顔を見る。
 

2/5

2/5

 字であればなんでもいいとさえ言った。
 まごうことなき濫読派である。
 枕辺はもじゃもじゃの頭を掻きながら「いつからうちの弥山はこんなになっちまったんだ」と嘆く。
 しかし、その言葉に弥山が反応することはなく、一点を見つめたまま超速でページをめくっていた。
 字、なんでこんな落ち着くんだろ……やっぱりあの妙なきのこを食べたからかな。
 思考の隅で、派手な紅色のきのこが溶ける。
 麻薬みたいな成分

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2/4

 日の出寸前、海の向こうに黎明を感じながら、大きく息を吸い込んだ。
 冷たい空気が一気に入って、気管支から肺胞までも、氷の粒を取り込んでしまったかのように思える。
 弥山は細く息を吐きながらしゃがみ、無線を耳に突っ込んで、相手の動向を探る。