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【ジャンル】インタビューによる聞き書きも立派な文学?

小説はあきらめた。
その代わり、評伝に
チャレンジしたい。
惹かれる人物の評伝を書きたい。

先日、そんな話を書いたばかり。

ですが、私は
もっと面白いジャンルが
あることを知りました。
聞き取り、聞き書き、 
そういうジャンルがあるんですね。

ウクライナ生まれ、
ベラルーシ国籍の
ノーベル文学賞作家、
アレクシェービチさん。
彼女が書いてきた作品は、
主に聞き書き式の作品ばかり。
『戦争は女の顔をしていない』
『チェルノブイリの祈り』
『亜鉛の少年たち〜
アフガン帰還兵の証言』などは、 
何十人もの人をインタビューして、
一人一人の生き様をまとめあげた、
気が遠くなるよう記録作品です。

あれ、これはなんだか
見たことがあるぞ、
読んだことがあるぞ、、、
そうです、この表現方法は、
村上春樹が地下鉄サリン事件の
被害者の方々をインタビューして
まとめあげた労作
『アンダーグラウンド』と
とてもよく似ています。

それから、石牟礼道子が
水俣病の人たちの人生を
心を込めて描きとめていった、
ドキュメンタリー文学、
『苦海浄土』もまた、
似たスタイルですね。

いっけん、ルポルタージュの
作り方に見えるけど、
もっと深い所で
事件や人間に肉薄するスタイルです。

これはただのルポルタージュや
ノンフィクションを超えている
ようにさえ感じます。

あ、まだ、ありました。
藤本和子という文筆家がいましたね。
リチャード・ブローティガンの
小説や詩歌を訳した翻訳家という面が
もっとも知られた顔ですが、
そればかりではありません。

この藤本和子さんには、
たくさんの黒人女性に、
苦難に満ちた半生を聞き取りした
本が何冊かあります。

『イリノイ遠景近景』
『塩を食う女たち〜北米の黒人女性』
『ブルースだってただの唄』
どれも藤本さんが、
対象となる黒人女性から
信頼を得ながら、
彼女たちから、その貴重な人生の
さまざまなシーンを
聞かせてもらった言葉の数々。
高度な信頼関係の上ではじめて
行われた聞き取りの積み重ねですね。

こうした聞き取りによる
表現方法は、 
フィクションによる創造を超える
果敢な輝きがありますね。
イマジネーションによる創作が
時には脆弱になりがちですが、
こうした聞き取りスタイルには
脆弱になる余地はありません。
ストイックに積み重ねていく、
忍耐力が作品の根底にありますから。

こんな表現スタイルもいいですね。
小説はあきらめたけれど、
まだまだ、描く行為には、 
たくさんの表現方法がありそう。

私なら、どんな事件や状況の
人々たちに対して、
インタビューして行こうかしら?

2000年以降に書店業を始めた人々
全員にインタビューしてみたいな。
どんな気持ちで始めたのだろう?

あるいは、
先の大戦で、
ドイツ語がわかるということで、
日本政府に頼まれて、
ナチス政権の書類を
片っ端しから訳す仕事をせざるを
得なかったドイツ語畑の人たち。
その心の葛藤について、
インタビューしてみたい。

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