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【村田沙耶香】「西加奈子と仲良くするな」と3回言われた

「西加奈子と仲良くするのをやめろ」

村田沙耶香のエッセイ集を
読んでいたら、いきなり
こんな文に出会い、びっくりしました。

特定の作家と、
付き合うなとは、なんて不穏な…?

かなり狼狽えた後、
もう一度読み直した。

「『西加奈子と仲良くするのをやめろ』
と直接、言われたことが、三回ある。
お二人は大好きな編集者の女性で、もうお一人は小説家の男性だった。」

まず、前提として、
村田沙耶香さんと
西加奈子さんは仲良しらしい。
かつ、村田さんは西さんを
作家として尊敬している。

傍からみたら、良きライバルって
感じですね。
作風はかなり違うから、
ファン層を奪い合う訳ではない。

それにしても、独立心の強いであろう
作家という生き物に、
もう一人とは仲良くするなって、
命じるなんて、一体何があるんだろう?

しかも、他人が、
アイツとは仲良くするな!
と交際関係について、
口を出すのは、余計なお世話だ。
というか、ショックでした。

「文壇」は、それくらい
窮屈な場所なんかなあ。

ただ、なんとなく、
編集者や作家の言わんとする感触が
わからなくもないんです。

以前、私も西加奈子さんの
トークイベントに一度行きましたが、
彼女の人間的なバイタリティには
まあ、ぶったまげました。

あまりに話しまくる、
自由自在な関西芸人みたいな…! 
それがまた、
面白く中身があるから衝撃だった。
とにかくパワフルで、
文壇みたいな窮屈な場所には
西加奈子はとても収まり切らない。
同じ中学や高校で
西加奈子がクラスメートにいたら
もうクラスは西加奈子色一色に
なることは間違いない。

関西弁、
明るさ、
純粋さ、
面白さ、
逞しさ、
欲望に素直。

一方で、
村田沙耶香さんは
こちらもまた同じくらい超〜純粋で、
なんでも吸収してしまいそうな
素直さを感じさせる人です。
テレビで見たところ(笑)。

そんな二人をよく知る編集者らが
面と向かって、
西加奈子と仲良くするな、
と助言してきたという。

単なる偶然でもないような。

これが思春期なら、
仲良し二人組に対する
周りの嫉妬かな、とでも
思って済ませられるんですが。

両者は大の大人だ。
でも、考えたら、
作家は言ってみれば、
永遠の思春期のようなものか。

ちなみに、
村田沙耶香さんは、
西加奈子と仲良しというのに、
小説や文学に関する話をしたことは
一度もない、という。

ただ、なぜか西加奈子と
話をしてると、
作品のイメージがわくわく
湧いてくるんだとか。

とにかく、村田さんは
このエッセイで、
自己分析、西加奈子分析、
作家分析、文壇分析を
おこなっている。

気になったらとことんまで
やる方らしいですが、
このエッセイはぜひ、
皆さんにも直接、読んで欲しいな。

非常にデリケート過ぎて、
私がここで要約してもしきれない
大切な、不穏なものが
詰まっている気がします。

これを要約するのが私の役割?
だとしたら、責任放棄かしら?

朝日文庫
村田沙耶香
『私が食べた本』
収録エッセイ
「人間を剥がす生きもの」
全10p

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