見出し画像

【遠藤周作】神と対話し続けた男が生誕100年

遠藤周作は、いつまでも古びない作家だ。
『沈黙』や『深い河』を読むと、
まるで今、一緒に生きている
同時代作家にすら思えてしまう。

彼はいつだって、
弱い人を描いた。
臆病な人を描いた。
自分に絶望する人を描いた。
孤独に向きあう人を描いた。

だけど、遠藤周作は一度も、
成功しようとは描かなかった。
新しい未来のステージに立とうとは
描かなかった。
トップになろうとも言わなかった。

遠藤周作がいつまでも古びないのは、
その辺りにあるのかもしれない。

そんな遠藤周作は、
今年が生誕100年だそうで、
今、河出書房新社から、
初期エッセイ集が何冊か出ている。

私はその一冊を読んでビックリしました。
『深い河』の頃のような
円熟味のある遠藤周作の姿は
まだそこにはなくて、
周囲から「小難しい作品だな」と
言われていたデビュー期、
よほど悔しかったんでしょう、
遠藤がエッセイで反論する、
とんがった姿を見つけたからです。
遠藤周作だって、こんなに
腹を立てたり、怒ったりするらしい
(汗)。

そんなエッセイ集の中には
「この世に生まれ、生きていく以上、
人生を捨ててはいけない。」
という言葉が印象的でした。

「人生を捨ててはいけない。」
きっと、遠藤周作も、
人生を捨てかけそうになったに
ちがいない。
捨てたくなったことも
あったにちがいない。
何度も、何度も。
そんな神との対話から、
名作が生まれていったらしい。



この記事が参加している募集

推薦図書

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?