【掌編】とあるシングルマザーの誕生日

【完全妄想日記】
《アラフォー・シングルマザーの誕生日》

私には母がいた。

当たり前か。
みんなお母さんがいて、生まれてくる。

でも私に母は特別な、
そして強烈な存在でした。
母ほど私を苦しめた人はいない。

母は、私には「父」になる人と
私が生まれる前に別れ、
一人、私を育ててくれた。

以來、母は一度も「父」について
話をしてくれなかった。
だから私には「父」はいないのと同じ。

そんな母を、
今日の誕生日で私は、
一歳、追い越してしまう。

朝からじっと、キッチンに座り、
さっきからずっと
母の最後の写真を見ている。

母の顔。

鏡で見ると、私の顔も母にそっくりだ。
どちらも、やつれ、疲れた顔をしてる。

母はなぜ私に何も言い残さず、
突然、命をたったのだろうか?
この15年、ずっと、そればかり
考えてきた。

私がどんなに苦しむかを思えば、
思いとどまれなかっただろうか。

子供の私の事よりも大切な事が、
母にはあったのだろう。
それが私にはむしょうに悲しかった。

でも、仕方ない。
母は母である前に、
女であり、人だったのだから。

そして、今日、
私はそんな母より、一歳長く
歳をとることになった…。

私にも、娘がいる。

私はどんなことがあっても
母のようなことはしまい、
そう、誓って生きてきた。

これまでどんなに挫けそうな時も
娘を最優先に考えられたのは、
自分勝手に逝った母のおかげ。

そして、いつか母に伝えたい。
私はあなたを恨んではいない。
母には母の人生があったはずだから。

同じように、私には私の人生がある。
私にしか生きられない人生が。

今日まで、あっという前だったのに、
不思議なもので、気がついたら
母を追い越していた。

当たり前だけど、受け入れるには、
今日一日はかかりそうな、
事実の重さに圧倒されている。
朝からじっと母の写真を見てる。
にらみっことしては、互角かな。

あら、もう7時だ、
娘がそろそろ起きてくる頃。
それまでに、サッパリ
顔を洗っておかねば。

私の第2の、
母が生きれなかった領域に
足を踏み入れるスタート。
泣いててはいられない。

新しい人生が始まるのだから。

(これは、架空日記です)

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