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ガザから13歳の声「まだ死にたくない。」

10月7日に始まったイスラエルとガザの戦闘は、2ヶ月を迎えようとしています。11月30日現在で、死者は少なくとも15,000名、そのうち6,150名が子どもです。電気もインターネットも、水・食料・燃料・医薬品など、人々が生きるのに欠かせない物資がほとんど入ってこないうえ、病院やクリニックなどの医療施設も、学校も、国連の施設なども、ガザ全域のすべてのものや人を対象に激しい空爆が行われ、どこにも安全な場所がありません。誰一人、命を守る術がありません。

そんな中で、13歳の男の子か書いた文章をご紹介します。


私は近くで空爆が起きるたびに同じ言葉を繰り返しています。

「私はまだ若い。まだやりたいことがある。まだ死にたくない。」

まだ私には未来があるかもしれません。しかし、同じ年やもっと小さい子たちにはもうそれがありません。

この血塗られた戦争によって、膨大な破壊と多くの民間人が犠牲になっているにも関わらず世界が静かにテレビを見守る中、ガザとその人々は今もここにいて、邪悪で無慈悲なイスラエルの占領の中で持ちこたえています。

1948年から75年間、イスラエルは、国際人道法によって守られるはずのパレスチナ人に対し、次から次へと罪を犯しています。

しかし、私たちは守られていません。イスラエルは世界に対して言い訳をし、嘘をつき、強大国の支援を得て冷酷な殺人行為を続けています。

アル=リマール地域は、なんでも売っている市場として知られています。私にとっては、ガザの中で最も好きな場所の一つでした。

私は週末に母とそこに行く予定でしたが、そんな場所も、悲しく憂鬱な岩(コンクリートの塊)や瓦礫の山と化してしまいました。

何も、一かけらも残っていません。

そして、私のように恐怖に怯える子どもたち、あるいはイスラエルが「テロリスト」と呼ぶ子どもたちに対し、禁止兵器である白リン弾なども使用されています。

この戦争では、誰も安全ではありません。民間人は、理由もなく家を出て避難することが求められました。

これらの命令を拒否した人々は、自分たちの家の瓦礫の下で運命を迎えることになるでしょう。イスラエルには特定の目標がなく、世界に対して「勝利」のイメージを示すために目標をでっち上げています。

この戦争は13歳の子どもである私を精神的に破壊しました。しかし、私は感謝しなければなりません。他の子どもたちは、物理的に破壊されたり、この不公平な世界から完全に排除されたりしているのです。

この後どうなるのかについて考えることは、恐ろしくてとてもストレスになります。私は死ぬのでしょうか?

良いシナリオを考えようとしていますが、それは(悪いシナリオを考えるよりも)より難しいことです。

幸いなことに、私と私の家族は戦争の初期段階でガザ南部のハン・ユニスにある姉の家に避難しました。しかし、住んでいる地域が危険にさらされて避難を余儀なくされ、持ち出せた限られた物以外をすべて破壊されてしまった人もいます。

人間は皆平等ではないのでしょうか?
私が恐れる最悪のシナリオの一つは、この大量虐殺で家族を失った他の子どもたちと同じように、家族が殺され、私だけが生き残ることです。

私の母に神のご加護がありますように。彼女は大丈夫ではありません、私には彼女の気持ちがわかります。母の涙は私の心を溶かしてしまいます。

私はほとんどの時間を、できる限り彼女を落ち着かせることに費やしています。それは私の姉妹たちに対しても同じです。

インターネットは制限され、電気は完全に遮断され、近所の間で水を分け合い、パン屋は自分や愛する人に食べさせるものを手に入れようとする人々で混雑しています。

このままでは、爆撃ではなく栄養不足で命を落とす人もいるかもしれません。

私たちの周りでは、何が起こっているのか誰も知りません。最も有効な情報源はラジオです。

私たちはラジオの周りに座り、静かに耳を傾けています。ある時、突然大きな音が鳴り響き、全員が叫び、家は爆発で揺れました。

"これが最後か?"私は自分自身に問いかけました。

あまりのストレスで、心臓の鼓動がとても速くなります。

ただ言えるのは、あの時、神は私たちにもっと生きるチャンスを与えてくれたということだけです。

世界中の子どもたちは、安全に遊び、人生を楽しみ、適切な食事と教育を受けて日々を過ごしています。しかし、私たちにはそんな日々はありません。

封鎖下のパレスチナの子どもたちは、他の子どもたちが考えることと同じことを考えることができません。私たちが見たり、聞いたり、感じたりするものは、他の人たちとは異なります。

人間は皆平等ではないのでしょうか?もし平等なら、なぜ私たちは同じ権利を持っていないのでしょうか?

他の子どもたちと同じように、私にも遊ぶ権利、安全を得る権利、教育を受ける権利、そして子ども時代を生きる権利があります。

この地獄が早くに終わり、世界がイスラエルによる占領の犯罪性に目を向けることを願っています。

皆さんと私の故郷であるガザ地区に神のご加護がありますように。

アブダッラー・アイマン、13歳、ガザ


イスラエルとガザを含むパレスチナの問題は、10月7日に始まったわけではありません。元々パレスチナ人が何世代にもわたって暮らしてきた土地に、1948年イスラエルが建国され、戦争と占領が始まりました。とりわけガザは2007年から非常に厳しい封鎖下に置かれ、これまでに何度も一般人を巻き込んだ空爆が行われて来ました。

ガザには、彼のように生まれた時から完全に封鎖された地域で暮らし、子ども時代を子どもらしく過ごすことができない子どもが何十万人といます。

彼らが一番望んでいることは、”普通の暮らし”です。家族と平和に暮らし、好きなことを勉強して、行きたいところに行って、好きなことをやる。そんな基本的な人権が守られていないのが、今のガザ、そしてパレスチナの人々の現状です。

一刻も早く恒久的な停戦がなされ、パレスチナの人々が安心して自由に暮らせる日が来ることを願って止みません。


JVCのパレスチナ事業では、現地に暮らす人びとの意思を応援する形での支援を行なっています。また、パレスチナの問題を日本社会にも伝えることで、一人ひとりが取り組むための橋渡し役を担うことも試みています。 サポートしていただいた分は全額、JVCのパレスチナ事業に寄付いたします。