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【伝われば、どんな形でも愛なのだ】『そしてバトンは渡された』瀬尾まいこ/著(文藝春秋)

数奇な人生の中で、家族の愛につつまれる女の子の話。
心が辛い時にこそ、手に取りたい。


おすすめ度・読者対象・要点

おすすめ度:★★★★★
読みやすさ:★★★★★

読むなら中学生から。
主人公は基本高校生。
子ども目線でも、親目線でも読める、優しい作品。(易しくもある)

主人公・優子には3人の父親と2人の母親がいて、現在は3人目の父と2人で暮らしている。
それを苦に思った事はないが、周りから同情されることに違和感を覚えている。
受験を機に父親と向き合ったり、鋭い先生から、違和感の正体に気づきを得たりする。


好きなポイントと注意点

このお話は、親が読んでも、こどもが読んでも良い本だ。
特に、自分の境遇に不満がある人、やるせない思いを持っている人は、少し救われるかもしれないと思う。

この世界の主人公に対する大人の目線はいつだって優しい。
それにちょっぴり嫉妬もするし、素敵な関係だなとあこがれもする。
見えない愛があるんだって、わかる気がする。

「梨花さんが言ってた。優子ちゃんの母親になってから明日が二つになったって」
「明日が二つ?」
「そう。自分の明日と、自分よりたくさんの可能性と未来を含んだ明日が、やってくるんだって。親になるって、未来が二倍以上になるってことだよって。明日が二つにできるなんて、すごいと思わない?未来が倍になるなら絶対にしたいだろう。それってどこでもドア以来の発明だよな。」

『そしてバトンは渡された』瀬尾まいこ/著(文藝春秋)

「自分のために生きるって難しいよな。何をしたら自分が満たされるかさえわからないんだから。金や勉強や仕事や恋や、どれも正解のようで、どれもどこか違う。でもさ、優子ちゃんが笑顔を見せてくれるだけで、こうやって育っていく姿を見るだけで、十分だって思える。おれが俺の手にしたかったものなんだって」

『そしてバトンは渡された』瀬尾まいこ/著(文藝春秋)

何より、子どもに対して無理強いをしないところが好きだ。
子どもは自由に生きていい、どんな境遇であったとしても。

「当たり前だよ。親のことじっくり見てる子どもなんて気持ち悪いよ。子どもは親のことなんて気にせず、自由にあるべきだもんね」

『そしてバトンは渡された』瀬尾まいこ/著(文藝春秋)

基本だれがよんでも心が温まる小説、と言えるだろうが、そんな虫のいい話!と思う人もいるかもしれない。
そういう人は、気分転換がしたいと思える時にでも手を取ってみてはいかがだろうか。

読みやすく、読了感も悪くない。
本屋大賞に輝く一冊、いかがだろうか。


余談

本は、新しい可能性に気づかせてくれる。
どんなに悲しみのどん底にいても、見えなかった希望を強く照らしてくれるものだ。

大変久しぶりになってしまい、恐縮です。
しばらく夏休み期間、皆さんはこの灼熱の夏をいかがお過ごしでしょうか。

どこかにいてくれるのと、どこにもいないのとでは、まるで違う。血がつながっていようがいまいが、自分の家族を、そばにいてくれた人を、亡くすのは何より悲しいことだ。

『そしてバトンは渡された』瀬尾まいこ/著(文藝春秋)

さて、以前コメントにはしましたが、この春に大切な人を亡くしました。急なお別れでした。
これからも将来を語り合った仲間で、私の活動を応援してくれていた人。
私は途方に暮れて、これから何をすれば良いか、急に分からなくなってしまいました。

この本は、その人が大好きだと言っていた本なのです。
言われて買って、読むのを楽しみにしていました。
ふと手に取って、一気に読みました。

その人は本当に明るくて、優しくて、強い人でした。
その人の愛が、この本に滲んでいる気がしました。
その人が好きだと言ったこの本に、その人がくれた愛が一つ、宿っていた。

本は、誰でも読むことができます。
だからこそ、誰かを救える本の力を信じて、この力を届けようと思いました。
私はこの活動をまだ続けるべきだ、と思ったんです。

さて、私個人の話はこのぐらいにしましょう。

せっかくの夏休み、読書感想文にお困りかと思いますので、
追い風になるような読書感想文向きの本をバンバン紹介していこうと思います。

年齢層は小学3年生〜中学生、もしくは中高生
紹介する本はリハビリもかねて、紹介しようとしていたストックから引っ張ってくるので、最新の本よりはロングセラーの本が多くなる予定です。
なので、購入はもちろん、図書館・図書室でも手に入りやすいと思います。

合間を見てビジネス書もかじる予定です。
更新頻度は週3~4回、リハビリに頑張ります!

みなさんもこの機会にぜひ、
せっかくなら思い出に残る一冊に出会えますように!

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