競争戦略の謎を解く

 を読みましたので簡単にまとめ。著者はブルーズ・グリーンウォルド+ジャッド・カーン。辻谷一美訳。

 この本は第Ⅰ部理論編と第Ⅱ部ケース・スタディ編に分かれています。第Ⅱ部では第Ⅰ部で学んだ戦略をもとに、具体的な業界や企業を挙げて説明しています。第Ⅰ部を理解していれば第Ⅱ部も理解できるため、ここでは第Ⅰ部に絞ってまとめたいと思います。

 企業の戦略分析は、①現在の市場または今後進出する市場に競争優位は存在するか、②存在するとすればそれは何か、の2つを問うことから始まるとありまし。そしてその競争優位の源泉は主に3つしかなく、それは

供給面での優位性≒製造やサービスのコストを低く抑えられる。
需要面での優位性≒顧客の囲い込みができる(習慣化・スイッチングコスト高・探索コスト高)。
規模の経済=総費用に対して固定費の割合が大きい場合、規模が大きくなると1単位生産するコストがやすくなる。

であると述べられています。
 他にも政府の介入による優位性、法改正による優位性というものもありますが、基本的にここでは自由主義下でありうる優位性を考えています。

 そしてこのような競争優位を評価するときには、
①自分が属する市場とその競争状況の確認
②それぞれの市場に対して競争優位が存在するか調査(上記を参考に )
③競争優位の源泉としてありうるものの特定
を通して行うとあります。本書ではアップルを例に解説されていました。

 次に、プレーヤーが少ない市場での考え方が示されていました。具体的にはゲーム理論の囚人のジレンマの考え方です。マトリクス構造(数分割された四角)とツリー構造(ロジックツリーみたいな)での検討がなされていました。これらを用いて、例えば価格競争や参入撤退の利得を考えます。

 そして、これまでは企業同士敵対した中での戦略でしたが、一転協調戦略にも触れられていました。協調戦略では業界での利得を最大化するために適切な配分を考えるということになります。上記の囚人のジレンマゲームでは各プレーヤーの行動を先に考えますが、ここでは結果(つまりどう配分するのが最適か)をまず考え、そこから各プレーヤーがとるはずの行動を導きます(なぜなら結果が最適であればプレーヤーは全員合理的な行動を取るはずだから)。実際には非現実的かもしれないが、未来を見通すためには競争戦略を補完する有用な考え方であると述べられています。

 さらに企業の成長戦略について、
①M&A
②新規事業投資
③ブランド拡張

が述べられていました。まとめると、
・M&Aでシナジーが生まれるには競争優位が存在することが必須
・M&Aで生まれるシナジーは主にコスト削減にのみ立脚する(つまり買収プレミアム-削減コスト>0であることが必要)
・新規事業参入は、自社が競争優位を持つ既存市場に関係あれば良い考え
・ブランド拡張も、自社が競争優位を持つ既存市場の周辺が妥当
ということでした。

 最後にあったのは競争優位不在の市場での振る舞い方です。結論は、徹底的な効率性の追求です。


 ここでは本当にざっくりしか紹介できませんでした。第Ⅱ部のケース・スタディも非常に面白いのでぜひ読んでみてください。

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