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日本近代文学

92
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2020年10月の記事一覧

vol.92 森鷗外「最後の一句」を読んで

vol.92 森鷗外「最後の一句」を読んで

口ひげの、しかめっ面の、横顔写真から、森鷗外は、古くさくて、とっつきにくいと、勝手に思い込んでいた時期があった。

今では、年に一度は読みたくなる作家のひとりになっている。

それはたぶん、人間本然の姿を美し描くから、権力者たちをたじろがせてくれるから、人間の潔さや強さのようなものを感じさせてくれるから、そんなふうに僕が感じているからなのかもしれない。

この作品もそうだった。

あらすじ

積み

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vol.91 有島武郎「生れ出ずる悩み」を読んで

vol.91 有島武郎「生れ出ずる悩み」を読んで

心の奥の生々しい悩みにひたって、どこか落ち着かない感じのまま読みおわった。

大正7年(1918年)、毎日新聞に連載された「生れ出ずる悩み」は、画家を目指しながらも、才能に自信が持てず、生活のために働こうとする青年と、その青年をおもんばかる文学者の煩悶が描かれていた。

又吉直樹氏の作品も、よく創造的な職業への苦悩を題材とした小説があるように思うが、100年前の有島は、この作品に何を込めたのだろう

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