見出し画像

「男も女も関係ない」という言葉の本当の意味ー映画現場の撮影期間、「バービー」を見て号泣した

女として映画業界で働くということについて、この半年、何度も考え続けていた。
撮休の日に、日比谷ミッドタウンで映画「バービー」を見た。
「死を恐れるバービー」を構想した、マテル社の女性社員、グロリアのラスト近く、女性として働くことについての「怒りの演説」のシーンで、それまで爆笑していた私は号泣した。確実に、映像現場で働く自分自身と彼女の痛みが重なったのだろうと思った。 以下全文↓(意訳が含まれます)

It is literally impossible to be a woman
女でいる事はそれこそ不可能な事だわ
You are so beautiful and so smart
あなたはとても美しく賢い
It kills me that you don’t think your good enough.
なのにあなた(バービー)が、自身を不充分だと思うのなら、私は行き場を失ってしまう
We have to always be extraordinarily, but somehow we are  always doing it wrong.
私たちはいつもずば抜けていなければならない。でもいつから、わたしたちは間違えてしまったんだろう
You have to be thin but not too thin
細くなければいけないけれど、ガリガリはだめ
And you can never say you wanna be thin
なのに「細くなりたい」と言ってはいけなくて
You have to say you wanna be healthy but also you have to be thin
言うとしたら「健康でありたい」が正解。でも絶対細いに越したことはない
You have to have money, but you can’t ask for money because that’s crass
お金は持っていなきゃだめ。でもガメつくのは良くない
You have to be a boss, but you can’t be mean
上司であるべきだけど意地悪ではダメ
You have to lead, but you can’t squash other people’s ideas.
仕事を率先するべきだけど他の人の意見を押しのけてまでのことじゃない
You’re supposed to love being a mother.
母親であることを愛するべき
But don’t talk about your kids all the damn time.
だけどベラベラといつまでも自分の子供の話をするな
You have to be a career woman, but also always be looking out for other people
キャリアウーマンでなければいけない、その上で他の人に気を配り面倒を見なければいけない
You have to answer for men’s bad behavior, which is insane,
男性の目も当てられない態度にも応えなければならない
But if you point that out, you’re accused for complaining.
一度でも彼らのそんな態度を指摘しようものなら、あなたは文句の標的になるYou’re supposed to stay pretty for men but not so pretty to tempt them too much man or that you threaten other woman
彼らに愛想よくしなくてはいけないけど、彼らを誘惑しない程度に、他の女性を脅かさない程度に愛想よく。
because you’re supposed to be a part of the sisterhood
なぜならあんたは女性同士の共感コミュニティの一部であるはずだから。
But always stand out and always be grateful. but never forget that system is rigged so find a way to acknowledge but also always be grateful.
でもいつでも周りより卓越していて、そして謙虚でいろ
でも忘れないで、社会システムは不公正なのだから、受け入れる道を探せ、でもいつも感謝の念を忘れるな

You have to never get old
年をとってはいけない
Never be rude.
不貞腐れてはいけない
Never show off
自慢げにしてはいけない
Never be selfish
利己的ではいけない
Never fall down never fail, never show fear,
もろく崩れるようではダメだし何事も恐れてはいけない
Never get out of line
ハメを外してはいけない

It’s too hard! It's too contradictory and nobody gives you a medal or says thank you.
それって大変すぎるし矛盾だらけ、それに誰かが功労賞をくれるわけでもないし
ありがとうと感謝されるわけでもない

And it  turns out in fact  that not  only are you doing everything wrong, but also everything is your fault.
そして実際には、やってきたこと全部が間違ってるだけでなく、その全てが自分のせいだなんて。

制作現場において業務が完璧であることは大前提。性別なく“フェア“に。
新人に教えるシステムなんてこの業界にはないから自分で経験して覚えろ。そうやってやってきた。 ーまあそういうものか。成長には欠かせないことかも。
現場が終わって、男性プロデューサーが主催する飲み会には女性ばかり。求められる受け答えをニコニコしながら答える、お酒は弱い方が可愛いからガツガツ飲まない。カラオケも率先して歌う。ーそれが仕事において自分の立場を守ってくれるなら。その方が楽だし。
セクハラ発言に口答えする女は大抵偏差値が中途半端に高い女子大のやつ。
お前は俺に壁を作っている。女というより男だ。だから容赦はしない。驕り高ぶるな。助監督なんだからなんでもしろ。
ーなんか都合良くないか?

つまり、私たちには “全部“ が課される。女を捨ててフェアに競り合うときに私たちは女らしさを失うし、彼らが気持ちよくなりたい時には“女らしさ“によってコミュニケーションを取る。その時は、女らしさの中で何かを失う。

嫌な目にあったと告発することは、その業界を去る一定の覚悟ができないと、言い出せることではない。そこまで心理的コストをかけてまでのことでもない。
すべてにおいて相手に都合良くあること、それが“仕事“、とりわけ“映画“という業界に私たちが入れてもらうための生存戦略だったのだと、よく分かる。
それを、歴史における女性の権利に全て、重ね合わせられるとは限らないけれど、すくなくとも私の人生の歴史という点では、2024年という今になっても、確かにある。
日本でこの映画があまり評価されないことを悲しく思う。
私たちの心の鉱脈に眠っている静かな「怒り」と「あれ、なんかおかしくない?」
を、目覚めさせてくれるこの映画を、見ないのは勿体無い。

#映画にまつわる思い出

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?