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紙とペンとパスポート

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これだけ持って気ままに旅をしたい
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河童になってインドを覗く夢

私の人生に影響を与えた読書体験は、同時に旅行体験でもあった。

10歳の時の私といえば、終わりの見えない退屈な小学校生活にとにかく飽き飽きしていた。やることと言ったら、自転車で行ける範囲をひたすらぐるぐるするか、友達の家でDSに興じるか、家に帰って延々と教育テレビを見るだけ。図書館の本もあらかた読み終わってしまい途方に暮れていたころ、父が数冊古ぼけた文庫本をくれた。図書館の本よりずっと刺激的な背表

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ソイカウボーイと青春

ソイカウボーイと青春

マライヤキャリーとワム!にいい加減耳が疲れ切ってしまったクリスマス前、大学の授業はすべて終了していたが、私にはこのまますごすごと日本に帰るわけにはいかない事情があった。散々観光した半年間だったが、やり残した大切なことがひとつある。まだ、日本人男性が大挙して詰めかけるというタイの性風俗店に行っていない。

タイの観光ガイドブックのページのはじにひっそりと、しかし何か含みがある感じで書かれている「ゴー

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凍える上海姑娘

凍える上海姑娘

飛行機が上海に降り立つと、周りの乗客が一斉にごそごそと荷物を探り始めた。随分とせっかちに降りようとするものだと思ったが、どうやらそうではないらしい。みんな一様に、荷物から分厚いダウンジャケットを取り出し着込み始めた。タイを出国した時よりも機内の密度が上がったような気分になる。皆の顔が引き締まり、一気に冬の雰囲気に変わった。私はというと数分前まで口をだらしなく大きく開けて寝ていたので、まるで夢の延長

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夢の国シェムリアップ

夢の国シェムリアップ

夢の国と言えば何を連想するだろうか。タイ留学に出発する前、性産業が盛んでしかも日本よりもうんとやすく女を買い叩くことができるということから「いいなあタイ、男の夢の国だよ」といった気色悪いオヤジがいたがマジで死んでほしい。それはともかく、一般的に言って夢の国というとディズニーランドを連想する人が多いように思う。ディズニーランドはいうなれば合法的な麻薬のようなもので、幸福感に浸っているうちは国外に待ち

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真夜中のタイ散歩

真夜中のタイ散歩

ド田舎で生まれ育ったためか、危機管理能力がとことん低い。例えば深夜の一人歩きだって平気でしてしまう。お化けや熊は遭遇したら嫌だなあと思うけれど、不審者に気を付けてと言われてもぴんとこない。地元では怪しげな人に遭遇したことはなかった。そもそも日が沈むと、ここは廃村になったのか?というくらいに人の気配がしなくなる。そのようなガバガバの危機管理意識のうら若き乙女が都会に暮らすことなど、不審者からすれば鴨

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それでも恋するバルセロナ 2017.2



2月に1週間ほどバルセロナに滞在していた。ひとり身の女子大生にも優しい街であった。まず治安がよい。1週間で身の危険を感じたことと言えば月末恒例の限度額オーバーが来てしまいクレジットカードが使えなくなったことくらいか。
しかしこの街やたらとカフェがある。バルセロナの人々は朝早くから夜遅くまでやたらとカフェに行く。仲良くなったスペイン人はこの街は娯楽が少ないからねと言っていた。そんなことない。少な

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