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須恵器・土器を愉しむ【『縄文土器をよむ』(町田)、縄文人なら通いたくなる「品揃え」の良さ】

「須恵器・土器を愉しむ」では、個人的関心事の須恵器・土師器を中心に「考古・郷土全般」に関する都内および近郊の展示に関する感想・情報を綴っていきます。施設側の情報発信が少なく「どこに何が展示されているのか分からない」ことも多いので、参考にしていただければ幸いです。
 今回は、町田駅から徒歩8〜12分の町田市民文化館ことばらんどで開催中の「縄文土器をよむ 文字のない時代からのメッセージ」です。

■分かりやすい分類展示による「縄文」全体の俯瞰

 1000か所以上の遺跡が確認されている町田市では、縄文期の遺跡も豊富で、創世記から晩期まで各期の発掘資料が豊富に出土しているそうです。その中から、「表現」に着目し、文字のない時代の縄文人たちのメッセージに読み取るというのが本展の特徴です。
 とくに展示側の「この形にはこういう意味がある」というようなものはなく、導入部は「動物等に見える造形」「細かな表現」という「見た目が特徴的な土器」が並びます。「過剰な表現」「使いにくいくらいの装飾」など、パッと見誰もが思うことを何度も言ってくれるので、「ああ、そういう感想からスタートしてもいいんだ」とビギナーにも安心です。

中期(約5200年前)相原町・相原坂下遺跡の深鉢3点。

中期(約4800年前)原町田・高ヶ坂南遺跡の台付深鉢。これは2018年秋に三鷹市役所の「さわれる縄文展」で初展示された西谷遺跡の曽利式土器と模様が同じ。↓

 これだけでも見応えはあるものの、特徴的な土器ばかりがセレクトされるとお腹いっぱいになり、「珍しい外見ありき」の縄文土器展になってしまいがちですが、この展示では「見せたい」の画角がかなり広めです。
 その後、「器種」「生活」「道具」「土偶・祈り」等々へ視野を広げ「縄文期」全体が俯瞰できるような流れが作られています。そして町田市の特徴である縄文期全体の土器の変遷が分かる展示へ。個人的には晩期の薄作りな土器が好きなので、「縄文とひとくちで言ってもいろいろ」までを一周で大まかに把握できる展示は、とても「分かりやすい」構成だと思います。

 ↑縄文全期を並べた展示。

■縄文人が通いたくなるだろう「品揃え」の良さ

 注口土器がこれだけ数多く並ぶと、まるで食器売り場のようで目移りします。縄文人が見たら「品揃えのいい店」と常連になるかもしれません。

 土製耳飾りもたくさん。土偶もたくさんあります。「1度に見比べられる展示」は、いろいろな発見や気付きもあります。
 展示はゆったりとしています。何周もしていると、後から気になることが増え、さらに何周かしたくなり、やがて自分なりの「見方」「感想」が持てると、お気に入りの一品ができて、それをじっくり観察する。「学ぶ」だけでない楽しみがあります。

「お買い上げ」したいくらい気にいった独特な「阿玉台式土器」。

 やはり晩期の薄くて軽そうな土器は気になります。ここに載せた写真は、全体のほんの一部です。竪穴式住居の実物大復元や、土器文様を展開図を添えて見比べられる展示など、見所はまだまだたくさんあります。

 田端東遺跡出土の中空土偶の頭部は「まっくう」というキャラクターとなっています。
 ラストに縄文期とは関係ない墨書土器(9世紀の土師器)。「町田で見つかった最初の文字」が「手寺」「弥」が書かれています。「文字のない時代からのメッセージ」としての「表現」「言葉」から「文字」へと、一歩先まで考えさせる展示。
 その横が「アンケートのお願い」なので書かざるを得ません。

 縄文好きも唸らせる見応えの展示は、ビギナーにも分かりやすい心遣いがされています。入場無料、写真撮影OKなので、小学生の夏休みの自由研究にも最適かと。9月23日(月・祝)まで。詳細はこちら ↓

フリーランスの編集・ライターとして活動しています。編集・ライター作品紹介webサイト「神楽出版企画」(企画から制作進行・執筆までワンストップ対応)
http://www.kagurasyuppan.com




須恵器・土器・考古・郷土史等々に関し、都内近郊の博物・資料館・展示の情報を整理記録がてらアップしていく予定です。