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映画「日本で1番悪い奴ら」


どんな形であっても正義を貫いた男


 今回、白石和彌監督の映画「日本で1番悪い奴ら」を視聴させて頂きました。

 今までで、1番の熱量を注ぎ感想を書きました。

 自分が綾野剛さんを好きになる要因になった作品。綾野剛さんの役者としての良さが滲み出ている作品。

①【内容】 

 主人公・諸星要一(綾野剛さん)は、大学時代に鍛えた柔道の腕前を買われて北海道警の刑事となった。

諸星は強い正義感を持ち合わせているが、なかなかうだつが上がらない日々。

そんな中、先輩刑事の村井(ピエール瀧さん)から、「刑事は点数、点数稼ぐには裏社会に飛び込み『S』(スパイ)を作れ」と教えられる。

暴力団と密接な関係を持ちながら、上司からの難題を次々と解決していく。

だが、そこから少しずつ安定という歯車から外れていく。



②【役者 綾野剛】
 先程、綾野剛さんの良さが出ていると申しましたが、具体的になにがすごいのか。
 自分の意見も交えつつ説明したいと思います。

〔役作り〕
綾野剛さんの役作りに対してのストイックさは、役者業界でも有名です。その色が今作から滲み出ています。

まず、今作での主人公・諸星の26年間を描いている。

撮影期間約3ヶ月。

3ヶ月間で諸星の26年間を演じるにあたって、綾野さんは10kgの増減をしている。

さらに作品終盤。
50代を演じる際には、撮影の前日に焼肉を食べ、あえて歯を磨かず撮影に挑んだという。
自力で歯石と加齢臭を纏って現場に臨む綾野さんの役に対する姿勢は、とても真似できない。

そして、今作を視聴すればわかる特徴的な耳。
柔道をしていると畳に耳を打ち受け、耳が硬くなってしまう。この耳を”餃子耳”と表される。

この耳は特殊メイクだが、綾野剛さんは、耳にヒアルロン酸を注入し、本当に耳を膨れ上げさせようとしていたが、白石和彌監督に止められたという。

〔受けの芝居とアドリブ力〕
 最近では、菅田将暉さんの受けの芝居が絶賛されている。菅田将暉さんも素晴らしいが綾野剛さんの受けの芝居も忘れないで欲しい。


特に今作中盤から終盤にかけての芝居だ。
太郎(YOUNG DAISさん)と黒岩(中村獅童さん)とのやりとりは終始勉強になる。

最後にアドリブ力。
終盤の夕張の食堂での演技。
4回目の視聴にしても『すごい』と感じてしまう。あの狂気じみた演技をするのにどれだけ覚せい剤使用者のことを理解し、自分に落とし込んだのだろうと考えさせられた。


③【撮影・演出】
 今作の撮影を担当した今井孝博さん。
本当にすごいと感じます。

なにがすごいのか。
4度目の視聴でやっと気づきました。

作中、画面が突然斜めになる部分が2度ありました。

では、なぜカメラワークを斜めにしたのか。

環境が変わっています。

それは、斜めになった後、次のシーンに移行し、1個前のシーンよりも諸星という人物が壊れていくのをカメラワークで表しているのだと気付きました。

その変わり方が2回

1回目 純粋無垢な警官→Sを使い捜査をする悪徳警官へ。

2回目 悪徳警官→麻薬警官へ。

諸星の人生の下降具合をカメラワークで表している今井孝博さんは、素晴らしい。


④【まとめ】
 自分は、ヤクザ系バイオレンス系の作品が好きです。特に白石和彌監督の作品はもちろんののと、深作欣二監督、藤井道人監督、マーティン・スコセッシ監督などが挙げられる。

 やはり、白石和彌監督の演出はすごい。
綾野剛さん演じる諸星は、終盤覚せい剤に手を出す。覚せい剤に手を出してから諸星は終始水を飲んでいる。

自分は「なぜこんなにも水を飲んでいるのだろう?)と考えた末に答えに辿り着きました。

それは、
覚せい剤使用者は過度に喉が渇くとのこと

そんな細部にまでこだわり、役に落とし込むよう演出をする白石和彌監督が作る映画は見応えがある。


白石和彌監督といえば、たばこというキーアイテムにも注目して頂きたい。

今作でも、村井(ピエール瀧さん)が捕まった後に、純粋無垢な警官だった綾野剛もたばこの吸い始める。

たばこというアイテムを使い、その役の切り替わりを表していることにも注目して欲しい。

これは、今作だけでなく、映画「孤狼の血」の最後でも同様だ。
役所広司から松坂桃李へ。
たばこが切り替わりの合図だった。

些細な演出があるからこそ、白石和彌監督の映画はより際立つ。

だから自分は白石和彌監督の作品が好きだ。


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