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ペリーネ渓谷のスープと冬山の週末

冬の終わらないうちに、もう一つ冬向きのレシピの投稿です。
野菜のブイヨンを使えばベジタリアン料理にもなります。
その時の食欲に合わせて野菜やチーズの量を加減しましょう。

数年前の事、パトから週末彼女の友人が借りているサン・ニコラスの山の家に行くから一緒に来ないかとのお誘い。正確には記憶がないけれど、出発の前日とか当日とかいう急な誘いだった。特に用事もなかったので快諾。

サン・ニコラスはイタリア最北西のヴァッレ・ダオスタ州の、いつも行くクネアツよりももっと先。スイスとフランス国境に近い。

冬の山、と言っても私はスキーは出来ないので楽しみは歩くこと。つまりハイキング。でもパトはパオラのような健脚ではないので軽い山歩きになる。
土曜は初めて行く私のために風光明媚で有名なフェレ(ferret)渓谷ハイキングを計画してくれた。ほぼ標高差のないハイキングだった。

モンブランの麓。風光明媚で有名なフェレ(ferret)渓谷

そして歩くことよりも何よりも山の綺麗な空気と光がすばらしい。
山には子供の頃に見た光がある、といつも思う。

金曜夕方に出発し、金曜土曜の夜の食事はパトと彼女の友人が家で用意してくれたので、急な誘いで何も用意できなかった私は日曜のランチをレストランで奢ることに。

その時パトのお気に入りのヴェンスという集落のレストランで食べたのがこのZuppa Valpellinese(ペリーネ渓谷のスープの意)。


Hotel Ristoro Vagneurhttps://www.hotelristorovagneur.it/


石造りのヴェンスの村

スープといってもオーブンで焼いている間にスープはほぼ無くなり、液体は残らない程度に焼き上げるのが特徴。なのでスープといいうよりはグラタンのような仕上がりになります。

こんがりと焼き目のついたチーズで覆われたスープは一見重そうですが、その日の食欲に応じて、または好みに応じてチーズの量を加減すればそれほど重たくはなりません。

寒い冬の日曜日、標高1740mの山小屋風の良い感じのレストランで初めて食べた「ペリーネ渓谷」のスープはとっても美味しかったのでミラノに帰って早速再現。
その後も何度かクネアツで作っています。

本当のペリーネ渓谷はヴェンスよりも更に北のスイスの国境に極近い場所にあり、生憎行ったことはないのですが。


ペリーネ渓谷(wikipedia より)

ちなみにサン・ニコラスやペリーネ渓谷やクネアツのある州をヴァッレ・ダオスタ州と言いますが、名物にZuppa Valdostana (ヴァッレ・ダオスタのスープ)というのもあります。

これをネットでレシピを検索するとこれと似たようなキャベツ入りのレシピがヒットして来ることがありますが、ヴァッレ・ダオスタ州で食べる本当の「ヴァッレ・ダオスタ・スープ」にはキャベツは入れず、パンとブロード(コンソメ)とフォンティーナチーズだけで作ります。

ノートではレシピの後にフォンティーナチーズとマスコーニャッツのチーズの話を少し。
ブログの方では食材として別途投稿します。


材料写真

<材料 二人分>

・サボイキャベツ(縮緬キャベツ):200g程度

・フォンティーナチーズ: 200g程度
*日本で入手が難しければ適当にとろけるチーズなどで代用。

・残って乾燥してしまったパン(を取って置いたもの):お皿に並ぶ程度数切れ

・ブロード(ブイヨンで作るコンソメでもOK) 0.5 lt.
*本来は牛肉のスープを使いますが、野菜スープを使えばベジタリアン料理にもなります。

<作り方>


1・サボイキャベツはよく洗い、芯を取る。
*日本のように芯を削ぐ方が経済的でエコ、とも思うのですがいつもイタリア風に横着にざっくり芯を取ってしまう。


2・鍋に0.5 lt.の湯をわかしブイヨンを入れ、1も加えて茹で、キャベツがしんなりして来たら火を止める。


3・フォンティーナチーズは3、4ミリ程度の厚さにスライスしておく。


4・乾燥したパンをオーブン用の銘々皿に並べる。
*このスープは一人用のお皿で焼き上げるのが一般的。でもグラタンのように仕上がるので、オーブン用の銘々皿がない時は大きなオーブン皿で人数分焼いてもOK.


5・4の上に2を加える。まずキャベツを均等に並べ、スープを同量流し込みます。


6・5の上に3のチーズを並べる。

7・6を180度に熱したオーブンで20ー30分程度焼き、適度な焼き目がついたら熱々をテーブルに運びます。


完成写真

*****

フォンティーナチーズとマスコーニャッツのチーズについて


フォンティーナチーズ


マスコーニャッツのチーズ
フォルマ(型)1個は小さいもので5kg、大きめで8kg程度


1、2年前のフォンティーナチーズの広告のキャッチコピーで

「フォンティーナはヴァッレ・ダオスタのもの、ではなくて
フォンティーナがヴァッレ・ダオスタなのです。」

というのがありましたが、それほどヴァッレ・ダオスタ州を代表するチーズです。

ミラノで買うと軽く1kg 3000円を超えるので、私はクネアツから森の中を歩いて1時間半ほどのマスコーニャッツで買うことにしています。

マスコーニャッツのチーズはほぼフォンティーナチーズとお同じ味だけれど、やや軽い。
普通フォンティーナチーズを作っているところではバターは売っていない。何故ならバターになる脂肪分も全てチーズに入れてしまうから。

マスコーニャッツのチーズ屋さんではバターは別にに売っている。
だから本物のフォンティーナチーズより軽く(健康にも良く)味はほぼ同じで、地元のチーズ業界で「コストパフォーマンス賞」などを受賞するほどリーズナブルな価格。


マスコーニャッツのチーズ屋さんの看板


マスコーニャッツのチーズ屋のチーズ保存庫 チーズはここで熟成される。


フォルマ(型)を切らずに丸々購入する場合こうやって小さな穴を開け味見をさせてくれる。

そして何よりもマスコーニャッツの立地の素晴らしさ。
マスコーニャッツもクネアツ同様のワルサー集落で一時期は過疎化が進み廃れかけていた。

十数年前村に点在する古い木造の建物を利用して、昔ながらの景観を壊さずに高級リゾートホテルが作られた。今ではフランスの元大統領サルコジなどが夏のバカンスを過ごしたりしている程。
https://www.hotelleriedemascognaz.com/

手前は高級リゾートホテルの室内プール
左上端に見えるのがマスコーニャッツのチーズ屋さんと牛舎

アヤス渓谷の幹線道路から標高差約300mを登って来る車はこのホテルの送迎車くらい。
だから喧騒もなく空気も澄んでいる。


マスコーニャッツからアヤス渓谷を見下ろす。

この牛たちは毎年6月から9月末まで美しい高山で過ごし、秋が深まると気候の穏やかな谷に降ります。
こんなところで放牧されて山の草を食べている牛たちは幸せだな、とつくづく思ってしまう。

クネアツの移動中の放牧の牛と山羊


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