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【日本保守党14】飯山陽とショーペンハウアー 学者たちの戦争

(タイトル画像は飯山陽のXポストより。敬称略。これまでの経緯は下の参考記事を参照ください)

日本保守党界隈でおこっている、池内恵・東大教授VS飯山陽・麗澤大客員教授のたたかい。

双方の援軍がふくらみ、戦線は拡大するも、戦況は膠着している。


飯山陽は、12月16日に、以下の動画を公開した。


【外務省補助金問題からの?!】飯山陽、ウィキペディアでも攻撃される!(12月16日16:27)


飯山は、この動画で、改めて日本の中東イスラム学界にケンカを売っている。

この動画では、「中田孝(元同志社大教授)」の、飯山に関する以下のポストが蒸し返された。



(中田孝)
私は学界の第一人者ではありません(むしろアンタッチャブル)が、彼女は私と対立しているのではなく学界の総体から相手にされていません。詳しく知りたければ学会誌の東大イスラム学研究室の松山先生による書評をお読み下さい。
https://jstage.jst.go.jp/article/jorient/61/1/61_74_78/_article/-char/ja


この「(飯山は)学界の総体に相手にされていない」の部分にたいし、飯山は、


「結構でございますよ。なにが悲しくてあんたらみたいなのに支配されている学界の総体から、相手にされないといけないんですか。こっちから願い下げですよ。あんたらみたいな気持ち悪いのと一緒にしないでほしい」


と、感情をあらわに反発している。


細谷雄一、島田洋一、有馬哲夫の積極的参加


Xでの応酬では、慶応大教授、細谷雄一が池内側に「正式に」くわわった。


(細谷)
まさに恩を仇で返すという、言葉そのまま。それも何十倍もの破壊力で。


それに、飯山はこう応じた。


なるほど、一度自分の本に推薦文を寄せてもらったら、たとえその人に「狂乱インフルエンサー」だの「虚言癖」だのと罵られ、研究者としての信用を毀損され、毎日Xに執拗に悪口を書き込まれ、「家族はこいつを家に閉じ込めろ」とまで言われてもなお、反撃せずじっと耐えるのが正しいというわけか。


(細谷)
私の場合はそもそも能力が不足していたため、多くの方々のご指導やご支援でここまで仕事を続けて来れたと思っております。そのような方々に常に特別な感謝の念を常に抱いています。池内さんの言葉は時に辛辣で、ご賛同は頂けないと思いますが、是非若手を励ますその努力を妨害せぬことを願います。


飯山側の島田洋一(福井県立大名誉教授)も、以下のように細谷を攻撃。


細谷雄一氏という、何の切れ味もない三流の自称「国際政治学者」をなぜ一部保守系メディアがよく使うのかよく分からないが、要するに「外務省のペット」の1人。


不都合な真実を突きつけられて「狂乱」した池内某が墓穴を掘っただけで、誰も「妨害」などしていない。 それにしてもウダウダと男らしくない文章の典型だ。


それに池内がこう応じた。


三流の自称学者


そこに、もっぱら百田尚樹を攻撃していた有馬哲夫(早大名誉教授)がくわわり、島田を攻撃。


島田氏は保守党エコーチェンバーの中しか知らない、世間の常識を知らない井の中の蛙。 空の深さも知らない蛙。


いっぽう飯山は、17日になっても池内側学者たちへの攻撃の手を休めず、以下のように、この戦争の構図を再定義している。


TBSサンデーモーニング「イスラエルがガザでやっていることは民族浄化」
東大教授・池内恵氏「イスラエルはグロテスク」
国際政治学者たち「池内先生が正しい」

一致。

飯山陽「イスラエルがやっているのは対ハマス軍事作戦。
イスラエル殲滅までテロすると誓うハマスを放置できない」

孤立。


いかりちゃんをつけ狙う謎の秘密結社JKISWAに、Hが加わったようだ。敵が増えても負けないように鍛えるぞっ!


東大池内氏「飯山陽は狂乱インフルエンサー!」
東大池内氏「飯山陽は虚言癖!」
東大池内氏「飯山陽は扇動家!」
東大池内氏「飯山陽は無知!」
東大池内氏「飯山陽の仕事は切れ!資金源を断て!」
東大池内氏「家族は飯山陽を家に閉じ込めろ!」 ↓
慶應細谷氏「池内さんは格好いい」

呆。


上のポストで飯山が言う「JKISWA」とは、自分の論敵である、上念司(J)、KAZUYA(K)、池内恵(I)、篠田英朗・東外大教授(S)、和田政宗・自民党議員(W)、有馬哲夫(A)だが、それに細谷雄一(H)がくわわった、というわけだ。

いっぽうの飯山には、百田尚樹、有本香、島田洋一などがいる。いまだ飯山と日本保守党との関係は公式ではないが、敵側からは、飯山は「日本保守党」と連動していると見られている。


(有馬)
保守党に憲法改正ができるのか? 防衛増税ができるのか? 自主外交ができるのか? 最高の国防策である少子化対策できるのか? できるどころか考えてもいないだろ。知識もないだろ。 できたら批判していいよ。 なにが保守だ。 政党だ。党首だ。 尻尾まいて逃げたくせに。



大学教授VS野良学者


この「戦争」、そもそもの発端は、飯山が高橋和夫らを攻撃した10月12日の動画だと見られている。

【デマ解説!】高橋和夫・放送大学名誉教授のウソを暴くよ!(飯山陽のいかりちゃんねる10月12日)


飯山さんが高橋和夫先生や中東研究者の方を嘲笑混じりに叩いたのが発端。高橋和夫先生を「高橋おかず」呼ばわりしてLIVEしてましたよね。最低限の敬意すらなかった。 「狂乱YouTuber」と言われても仕方のない内容。


飯山陽という学会(学界)から独立した「野良学者」が、学会に集う主流派の大学教授たちにケンカを売った、というのがそもそもの構図だった。

この最初の段階では「日本保守党」は関係なかったのだが、11月15日に飯山が篠田英朗を攻撃したことで、池内恵が「仲間が日本保守党から攻撃されている」と認知して全面戦争化した、というのが私の見方だ。


ここであえて「日本保守党」を外して考えると、非主流派学者が主流派を攻撃したり、「野良学者」が「講壇教授」にケンカを売ることは、しばしばあることである。


私が覚えているのは、たとえば1980年代、早稲田大学心理学科の本明寛教授に、和光大学の岸田秀がケンカを売ったことがあった。

岸田は、早稲田出身なのだが、心理学科で力をもつ本明と合わずに、早稲田の教授になれなかったと言われていた。

岸田が、早稲田内のミニコミ紙で、本明を攻撃する内容を書いたため、その新聞は回収になった、と、そのミニコミ紙編集者から聞いたことがある。

岸田は当時、「現代思想」などで常連の売れっ子心理学者だったが、心理学会に属さず、学術論文はまったく書いていなかった。その構図は、今回の飯山VS東大を中心とした主流派学者、と似ていなくもない。

ただ、この場合、本明のほうがまったく反撃しなかったので、「戦争」にはなっていない。


さらに歴史上、有名な例を挙げるなら、アルトゥール・ショーペンハウアーVSヘーゲル派の主流学者、の「戦争」がある。

これは、19世紀の半ば、ドイツの哲学界で権勢をふるい、大学教授の職を独占したヘーゲル&ヘーゲル派哲学者にたいし、大学で職を得られなかったショーペンハウアーが仕掛けた喧嘩だった。

とくに後期の「倫理学の二つの根本問題」序文(1840)、「余禄と補遺」(1850)の「大学の哲学について」、「自然における意志について」第二版序文(1854)で、激しい攻撃をおこなっている。

ショーペンハウアーは、名文家といわれたその文章力で、ヘーゲル派哲学者たちを口をきわめてののしった。以下、「余禄と補遺」から引用する。


ヘーゲルの贋知恵(にせじえ)がたどった運命を見るがよい。その根本思想たるやあきれはてた思いつきであり、逆立ちの世界、哲学的茶番、内容にいたっては最も空疎で無意味な、ただし馬鹿者を満足させるにたる駄弁、また創始者自身の著作におけるそれの講釈ははなはだ不快でナンセンスなうわごとであり、否、瘋癲院の患者の精神錯乱を思わせる。(中略)それは二十年にわたって、つねに俸給と謝礼をもたらす最も輝かしい講壇哲学として栄え稼ぎ、ついにきわめられた人間の知恵の絶頂、哲学中の哲学として何百巻の書物により全ドイツに喧伝され、いや天上に祭りあげられたのである。学生たちはこれにもとづいてテストされ、教授たちはこれにもとづいて雇用される。ともに歩むことを潔しとせぬ者は、上に弱く精神なき教祖に従う厚かましい補習講師から「夜郎自大の馬鹿者」呼ばわりされ・・
(白水社版「ショーペンハウアー全集」第10巻p210)


その罵倒は果てしなくつづく。もしその時代にSNSがあったら、ショーペンハウアーも、飯山のように、動画やテキストで主流派学者を罵倒し続けたに違いない。

こうした歴史上の事例でわかることは、

一匹狼の野良学者は、決して折れない

ということである。ショーペンハウアーも、岸田秀もそうだった。たぶん飯山もそうだろう。

そして、池内の方は「仲間(あるいは組織、プロジェクト)のために戦う」という構えだが、飯山は、少なくとも表面上、だれかのために戦っているわけではなく、自分のための戦争をしている。これも、こうした戦争における通例で、組織人と非組織人のちがいが出る。


ショーペンハウアーは、主流派学者と野良学者とを「犬と狼」にたとえた。

その戦争が、結局、どういう結末になるのか。それについて、ショーペンハウアーは有名な箇所でこう語っている。


大学教授と一本立ちの学者とのあいだには、昔から一種の敵対関係があるが、これはもしかしたら犬と狼の関係で解明されるかもしれない。

大学教授はその地位のおかげで、同時代人に知られるという大きな利点をもっている。これに反して独立した一本立ちの学者たちには、その立場のおかげで、後世に知られるという大きな長所がある。というのは、後世に知られるためには、めったに見られぬことではあるが、とりわけある程度の閑暇と自主性が必要だからだ。

人類がその眼をだれに向けるべきかを見つけだすまでには時間がかかるから、そのあいだは両方ともあいならんで活動することもありえよう。

全体として見れば、大学教授などという反芻動物には、畜舎にいれて餌をやるのがいちばんぴったりしており、これにひきかえ、自然の学から自分の獲物を手にいれる者は、野放しのほうがぐあいがいいのだ。

(白水社版「ショーペンハウアー全集」第14巻p53-54)


<続報>


<参考 これまでの経緯>


<日本保守党 参考>




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