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翔んで川崎

川崎市民が、東京都の「高校無償化」に嫉妬している。

多摩川を挟んで東京都の南隣にある神奈川県の川崎市。市内から都心の私立高校に長女(16)を通わせる男性会社員(50)は「家族から『東京都との境がすぐ近くにあるのに、なぜ住む場所をこっちにしちゃったのか』と責められました」と苦笑いします。(中略)

前出の男性と同じく東京都との境まで徒歩5分の場所に住んでいるという子育て中の50代男性会社員も「(東京都は)物理的な距離以上に、果てしなく遠く感じる」。

”東京都の「高校無償化」に隣の川崎市民はもやもや 徒歩5分でも支援格差「果てしなく遠く感じる」”(東京すくすく 12月12日)


ふむ。

でも、東京に住めなかったから、あなたも私も川崎に住んでいる。現実を認めないわけにはいかない。

上の記事で、福田紀彦・川崎市長も言っている。

「東京都の財政力と比較されては、もう全く太刀打ちできない」


なるほど、都道府県別の平均年収では、神奈川県は、日本第1位の東京都に次ぐ第2位だ。

第1位 東京都  455万
第2位 神奈川県 435万
第3位 千葉県  422万
第4位 埼玉県  415万
第5位 茨城県  412万
(doda調べ 2022年9月~2023年8月)

https://doda.jp/guide/heikin/area/


しかし、市区町村別の所得では、川崎市は、トップの東京都港区から遠く離されて、44位にすぎない。

第1位 東京都港区    14,713,762円
第2位 山口県周防大島町 11,769,535円
第3位 東京都千代田区  10,767,673円
第4位 東京都渋谷区   10,000,844円
第5位 東京都中央区     7,608,681円


第10位 東京都世田谷区   6,030,702円

第42位 神奈川県横浜市   4,292,838円

第44位 神奈川県川崎市   4,252,719円

(総務省2022年度住民税統計データをもとに、シゴトリサーチ編集部調べ)


多摩川をはさんで、「5分の距離」にある世田谷区と、年収で200万の差がある。

川崎市民と東京都民とでは「身分」がちがうのである。


川崎と東京の間には、深くて暗~い溝がある。

という名文を、えのきどいちろうが書いている。


僕の実家は川崎市にあるんですよ。川崎市多摩区。小田急線の向ヶ丘遊園というところなんですけど。これが物凄く微妙なところなんですね。(中略)
だけど「東京」との間には川が流れている。意識のうえで、いつも川が流れている。(中略)テレビを見ていて、タレントに「どちらにお住まいですか?」と尋ねられて「小田急線です」と電車の線で答えた女子高生が映った。ははぁ、さてはと思ったが案の定、タレントにもっとつっこまれて川崎市多摩区登戸だと白状していた。(中略)僕は賭けてもいいが八八パーセントくらいの川崎市民は内心、出来たら川崎なんてなくなってくれないかなぁと思っていると思う。

(えのきどいちろう「川崎と東京の間には、深くて暗~い溝がある」杉山康彦『川崎の文学を歩く』=1992、多摩川新聞社=p3の引用による)


川崎市民の意識のなかで、いつも東京都との間に「川が流れている」。

川崎とは、「川の先、川の向こう側」という意味だ。多摩川のあっちとこっちで世界がちがう。


それだけではない、川崎の北は東京だが、南は横浜市だ。

神奈川のなかで、人口でも、人気でも、年収でも、川崎は横浜を抜けない。

絶対にかなわない、東京と横浜にはさまれて、川崎は永久に嫉妬にもだえる運命にある。

川崎は、神奈川のサイタマだ。

「翔んで川崎」映画化、待ったナシでしょう。



(タイトル画像は、川崎市教育委員会の「かわさきいいところマップ」より)



<参考>


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