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【オペラ】午後の曳航

 2023年11月26日(日)、日比谷の日生劇場に、オペラ『午後の曳航』を観に(聴きに?)行きました。以下、メモを残します。
 なお、上演期間は、11月23日(火)から26日(日)の4日間で千穐楽を迎えています。

■オペラ『午後の曳航』について

 オペラ『午後の曳航』は、ドイツの作曲家であるハンス・ヴェルナー・ヘンツェ(1926-2012)が、1986年から89年にかけて作曲し、1990年にドイツで初演された作品です。当時は『裏切られた海』というタイトルだったようです。
 そして、このオペラは、三島由紀夫(1925-1970)が、1963年に発表した長編小説『午後の曳航』を原作としています。

 今回、公益財団法人東京二期会による上演です。二期会は、1952(昭和27)年に結成された声楽家団体で、2022年に創立70周年になります。記念の2022年を中心に2021年から2023年にかけて、「二期会創立70周年記念公演シリーズ」として、オペラ公演を行なっていました。その掉尾を飾る作品ともなります。

 私は、オペラを生ではほとんど観たことがなく、映画館で何回か観たことがあるだけですが、今回、原作が三島由紀夫という点に惹かれて観に行きました。

■会場の日生劇場について

 日生劇場は、東京の日比谷にある劇場です。周辺には劇場が多く、帝国劇場、東京宝塚劇場、シアタークリエなどを見かけました。
 日生劇場は、1963年に開場した劇場で、60周年の旗を入口付近で見かけました。私は、入るのは初めてです。

 事前のチケット購入で、どのあたりの座席がよいか考えました。私は全体が見渡せることと、料金の面から2階席にしました。
 会場で、1階席、GC席、2階席の前や後ろと、色々な場所から舞台を見てみました。1階席はあまり勾配がありません。ネット検索でも見かけましたが、1階席と2階席の間のGC席が人気のようです。
 (見えるに越したことは無いのですが)上演者の表情まで、私はあまり気にしないので、個人的には、勾配が明確な2階席のうち、後ろの方でもよいような気がしました。(劇場の作りにもよりますが。)

■公演スタッフ&キャスト

※一部分ですみません

(1)公演スタッフ

・指揮:アレホ・ペレス
・演出:宮本亜門
・舞台美術:クリストファー・ヘッツァー

(2)公演キャスト

・黒田房子:林 正子・北原瑠美
・登/3号:山本耕平・新堂由暁
・塚崎竜二:与那城敬・小森輝彦
・1号  :友清 崇・加耒徹
 ※私の鑑賞した日は、後者の方々による上演でした。

■あらすじ(ネタバレあり)

 実は、私は僭越ながら、三島由紀夫の『午後の曳航』は未読です。
 事前にあらすじを調べて行ったのですが、あらすじはシンプルで、ネット検索でも多く見ることが出来ました。ここでは、新潮社のホームページから引用します。

十三歳の登は自室の抽斗奥に小さな穴を発見した。穴から覗く隣室の母の姿は艶めかしい。晩夏には、母が航海士の竜二とまぐわう姿を目撃する。竜二の、死すら厭わぬ船乗り精神と屈強な肉体に憧れる登にとって、彼が海を捨て母を選び、登の父となる生ぬるい未来は屈辱だった。彼を英雄に戻すため、登は仲間と悪魔的計画を立てる。大人社会の綻びを突く衝撃の長編。【新装版】

新潮社のホームページより

 すごいあらすじですね。
 YouTubeの動画で、新堂由暁さんが「原作小説の「登」とオペラの「登」では、若干違うように感じた」といったことを仰っていましたが、おそらく違いがあると思うので、早めに原作も読んでみたいです。

■感想(ネタバレあり)

(1)鑑賞しながら

 ドイツ語の上演でしたので字幕もあり、①舞台上での物語の展開、②音楽、③字幕と、目や耳を行き来することが多く、台詞の一語一語までは追えませんでした。
 個人的には、とても楽しむことが出来た作品でしたので、料金が低めの席で、2回見ても良かったのかもしれないと思いました。

(2)舞台演出について

 13歳の少年の「目」から見た世界という点が、クローズアップされていたように思います。購入したプログラムの表紙もそうですが、舞台背景でも、モノクロの渦巻きが表現され、少年の視点が混乱・錯綜していくような、陰謀渦巻くような印象を受けました。(上手く言い表せなくて、すみません。)

 回転するようなセットも面白かったです。登の母と航海士・竜二の交わりを、登は隣の部屋から覗き見るわけですが、隣接する二つの部屋が回転する形で、それぞれの部屋がクローズアップされる場面もありました。
 また、そのセットを舞台上でダンサーたちが動かすなど、「人」が舞台を動かし、作っている感じが多く残されていたように思います。

 そして、登がベッドに枕を叩きつけると、枕の羽が舞うなど、こういった部分も古い感じが残り、デジタルではない「人」の感じを受ける舞台演出だったように思いました。

(3)物語について

 プログラムには、小説家・平野啓一郎さんの文章も寄せられていました。
 平野さんは、三島由紀夫の創作活動をおおよそ四期に分けているようですが、本作を『金閣寺』、『鏡子の家』と『豊穣の海』とを架橋する位置づけと書かれていました。

 「ロマン主義」という言葉が頭に浮かんだのですが、ネット検索すると、三島由紀夫との文脈では、「ロマン主義」にあわせて「古典主義」という言葉も出てきて、この点は、もう少し勉強をしてみたいと思います。

(4)音楽について

 音楽についてさほど詳しくないのですが、今回の観劇を通じて、登場人物たちの葛藤や感情のせめぎ合い、緊張感などを、音楽で表現する・音楽に織り交ぜて感じる・音楽で聴くことの面白さを実感出来たように思います。

(5)その他と言いつつ

 最後に、私の思い込みを含めて、どうでも良さそうなことかもしれませんが、メモを残しておきたいと思います。
 最後のシーンで、登が「紅茶」に睡眠薬を混入しますが、やはり「コーヒー」ではなく「紅茶」でなければならないように思いました!
 同様に、「元旦の朝」に、竜二が登の母である房子に求婚しますが、ここも、「クリスマス」より「元旦の朝」で良かったように思いました!「ハレの日」の男のように感じます。
 こういった点は、三島由紀夫らしさであり、ある種の必然性のように感じました(←私の思い込みかもしれませんが)。

 また、竜二が「海を愛していたのではなく、陸を憎んでいた」という台詞を吐く場面があります。ここで私は、ずっと昔に読んだ宮本輝の小説で、「山(陸?)のような男」と「海のような男」という表現があったことを思い出しました。
 竜二自体が、身寄りのない船乗りであり、どんな人生を歩んできたのかなと思い、孤独な未亡人である房子と、その息子である登、三人が迎えるラストが一層悲しいもののように思いました。
 そして、一号を含め、少年たちも大人へと変わっていきます。奥深い話のように思います。

 まだまだ書きたいこと、調べたいことなど、たくさんあるのですが、本日はここまでにしたいと思います。

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