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【演劇と読書】森は生きている

 今日は、2023年の大晦日です。
 12月28日(木)に、劇団仲間の公演『(十二月物語)森は生きている』を観た記録を残します。

■児童劇『森は生きている』について

(1)作品の成り立ち

 『森は生きている』は、スラブ民話をもとに、旧ソ連時代の1946年(Wikipedia上は1943年とあります。どちらが正確かはいつか調べてみます。)、ロシア人の児童文学作家サムイル・ヤーコヴレウィチ・マルシャーク(1887〜1964年)によって書かれた戯曲です。
 日本では、1953年に湯浅芳子(1896〜1990)によって翻訳されました。その際、マルシャークの原題『十二月』を、湯浅は『森は生きている』と訳したそうです。
 戯曲なので上演される訳ですが、舞台としては、ソ連で、1946年にスターリン芸術賞を受賞し、1948年5月には世界的に有名なモスクワ芸術劇場で上演されています。日本でも劇団「俳優座」や「仲間」などで上演され、現代に続いています。
(※岩波少年文庫の「訳者あとがき」などを参考にまとめました。)

(2)あらすじ

新しい年を迎える大晦日、わがままな女王が、真冬のさなかに関わらず、春の4月に咲くマツユキ草を欲しいと言い出したため、国じゅう大騒ぎ。継母の言いつけで吹雪の森に分け入った少女は、たき火を囲む12の月の精たちに出会います。

岩波少年文庫やWikipediaより。

■(今回の)公演概要等

(1)会場・日程等

  • 日程:2023年12月23日(土)〜28日(木)

  • 会場:紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMA(新宿)

  • 上演時間:休憩10分を含み二幕165分。

(2)スタッフ・キャスト等(一部です)

  • 作:サムイル・マルシャーク(上述)

  • 訳:湯浅芳子(上述、岩波書店版)

  • 演出:菊池准(演劇企画JOKO)

  • 劇団仲間公演

(3)劇団仲間について

 劇団仲間は、1953年に結成された劇団です。今年で創立70周年になります。
 配布されたチラシによると『森は生きている』は1959年の初演以来、2100回を超える上演回数とあります。主催者・中村俊一さんの演出でスタートし、中村氏亡き後も継承されているようです。会場には、中村俊一さんに始まり、以降の演出家の方々の名前と、それぞれの期間の舞台写真が展示されていました。
 また、ホームページによると、劇団仲間は、幼少期から質の高い演劇に接することによって子どもたちの感性を高め、成人後も芝居を愛する感覚を持った人たちを増やしていこうとの狙いもあり、創立当初から児童・青少年演劇に力を入れているようです。毎年、年末には、紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAで上演されているのではないでしょうか。

(4)会場にて

 児童劇であることもあり、会場には親子連れが多く、子どもたちで賑やかでした。
 私は、背の高い大人が前の方にいると、後ろの子どもが見えづらいかなという気もしたので、最後列チケットを購入して観劇しました。児童劇では、同様に考える大人の方もいるようで、腰を下げてご覧になっている人もチラホラ見かけます。やはり座席の段差は重要ですね。

■舞台感想

(1)子どものときの出会い

 私が『森は生きている』を知ったのは、子どものときの絵本でした。戯曲ではなく物語として構成されていたように思います。
 好きだった場面は、少女が吹雪の森をさまよい、たき火に集う12の月の精に出会う場面です。(そうした背景もあり、今回は冒頭の画像として、緊急豚宣言さんの「たき火」のイラストを使用させて頂きました。ありがとうございます。)

 寒暖の差が伝わってくる感じがしますし、何より、12の月の精全員が、(屋外ですが)一堂に会するという点が好きでした。
 同様に季節を感じさせる『クレヨン王国の十二か月』という本も好きだったのも思い出します。

(2)印象に残った台詞など

 舞台を見ながら印象に残った台詞を、本からいくつか抜き出してみたいと思います。

5月の精:暖まらせてやるさ。たき火のあったかさが、減るわけじゃないもの

岩波少年文庫の76ページ

老婆:せめて黒テンとでもいえばいいのにさ

岩波少年文庫の201ページ

→「黒テン」について2回ほど出てきたのですが、やはり高級品なのですね。

1月の精:こんどは、もうお前がわしらのとろこへ来るんではなく、わしらがお前のところへ呼ばれにいくよ。
5月の精:みんなが順番に、お客に行こう。めいめいが、それぞれの贈り物を持って行くよ。
9月の精:わたしたち12月は、豊かに富んでいるからね。私達の贈り物を受け取ることさえ、出来ればいいのだ。

岩波少年文庫207ページ

→四季の恵みを、精霊たちの側からみるとこんな風に見えるんでしょうね。

 そして、12の月の精霊を演ずる人たちの年齢・性別なども重要な気がします。冬(12月・1月・2月)の精霊たちは比較的高齢で、春や夏は若めの方々のようでした。そして、3月の精(演:中屋力樹さん)と4月の精(演:町屋圭佑さん)は、年の近い兄弟、見方によっては主人公であるみなしご(演:大和田遥奈さん)を巡るライバルのようにも個人的には映りました。(解釈によるかもしれません。)

(3)衣装や舞台装置について

 上記した「黒テン」もそうですが、「シューバ」など、登場人物が着る衣装が、原作地のロシアを感じさせるものでした。
 後半、主人公のみなしご(少女)が、高価なシューバを身に着ける場面がありますが、水色だったこともあり、ロシアのスネグーラチカ(雪娘、ジェド・マロースの孫)のようにも見えました。

 舞台装置としては、スクリーンが上手く使われていました。スクリーンが下りたり、スクリーン上に映し出される映像(?)で舞台を覆っている内に、スムーズに舞台装置が入れ替えられていました。

(4)時代背景

 岩波少年文庫の訳者あとがきを読むと、マルシャークは、1887年に貧しい労働者の家庭に生まれたそうです。ユダヤ人の出で、ロシア革命前の帝政時代には圧迫を受けたともあり、彼の詩才を惜しんだゴーリキイの世話を受けたともあります。
 本作が書かれたのは1940年代で、創作から100年と経たず、それほど古くない(意外と新しい)作品ですが、作者や作品の背景をもう少し詳しく知りたくなりました。(相変わらず積み残しが多いです。)

■最後に

 本日は大晦日。あと数時間で今年も終わろうとしています。12の月の精たちは、集まっているのでしょうか。上記引用した台詞にもありますように、来年もそれぞれの月が我々に恵みを運んで来てくれると比喩的に考えると楽しくなります。それが2月の精が運ぶ冬の厳しい寒さであっても。

 そして、本記事が今年最後のnote投稿になります。今年も1年間皆さまにお世話になりました。末尾ながらお礼を申し上げます。
 そして来年もどうぞよろしくお願いします。
 よいお年をお迎え下さい。

 (詰め込み過ぎな気もして)少し長くなりましたが、本日は以上です。最後までお読み頂き、ありがとうございました。

↓おまけです。

チラシの上部
ロビーの飾り

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