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【読書】最終的に本は人になります。

本日の一冊
「書架の探偵」
ジーン・ウルフ、酒井昭伸(訳)
早川書房、2017

「著者名はわたしになっていますが、これはわたしの死後に書かれたものと思われます。この本のことは、まったく記憶にありません」
「そんな——そんなことって!」

 暖かくて寒くて、このところ気もそぞろでした。

 本を途中まで読んでは放り出したりして。

 偶然見つけたこの本はいまの私でも読み通すことができました。

 近未来の書物にまつわるSFミステリです。

 人口が十億人まで減少した22世紀の図書館には蔵書ならぬ"蔵者"と呼ばれる本の著者のクローンが収蔵されています。

 この物語の主役であるE・A・スミスも同名の推理作家のクローンであり、借りる者も滅多にいない蔵者でしたが、父と兄を立て続けに亡くした令嬢コレットが彼を借り出したことで物語は始まります。

 どうやら兄が殺される直前にコレットに託したスミスの著書「火星の殺人」が関係していると言う——。

   *

 いい意味でこんなにもあらすじの当てにならない本も珍しいです。

 中盤からの大きな展開、読んでいてどうも噛み合わない違和感、本の中の本「火星の殺人」の果たす役割。

 純粋に読書体験として楽しかったです。

 ネタバレは重罪なのでここに書かないことが多すぎる!

 新⭐︎ハヤカワ・SF・シリーズの新書判のサイズ感と手塗りされて色のついた小口がカッコいいのです。


↓私の日々の読書記録がこちらにあります。
 この中で一冊、面白そうと思ってもらえたら嬉しいです。
 本について語りませう。


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