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おいしかったとは言っていない〜もしくは粘土クッキーとバレンタインの話〜

中学2年生だったバレンタインデー。
ある女の子が、同学年の部活動生に友チョコをくれました。女ばかりの部活で、人数も少なかったですしね。
チョコレートとプレーンの二種類の味のクッキー。ラッピングも、可愛くて女の子らしいものでした。

その日は土曜日だったのでお昼に家に帰り、お昼ご飯のあと頂くことに。
しかし、先に食べた家族が無言。どう?と聞いても、うーん……という微妙な返事。ん?と反応を疑問に思いながらも食べると。
……えーと、うーん……、と言うしかない味ってあるんだなぁと。生焼けというか、甘くないけどどうなのというか、そもそも味あるか?というか。
「試食したんだろうか……?」お母様それは言わないであげてください。

その次の日。「○○〜!クッキーありがとうね!!」と大声で言った子を皮切りに、皆口々に「ありがとう」とお礼を言いました。
……しかし。私は気付いてしまいました。誰一人として「おいしかった」と言ってなくないか……?(えぇ、勿論私も言っていませんでしたけどね)

で、隣にいた子に
「ねぇ、昨日の○○に貰ったお菓子さ、……」
と言葉を濁したところ、
「うん、……なんか……あれだったね……」
とやはり言葉を濁され、頷きの視線を交わしたのです。
「さっき、おいしいって言った人いなかったからさぁ、あれ?って思って」
「去年のカップケーキも、なんか、あれだったんだよね」
言葉を濁しまくりながら会話を交わす私たち。
「ほら、Rなんてさ、昨日食べて『粘土みたい』って言ってたらしいよ」
マジですか、そこまで言いますRさん?あなた一番大声でお礼言ってたのに怖いですよ。まぁあなたは毒舌だし気持ちは分からんでもないですがね。

その一週間後、お菓子作りの得意な子が配ったブラウニーに対しては、皆きちんと「おいしかったよ!」と言ってました。いや、本当においしかったので……。

これ以後、バレンタインデーとホワイトデーの前日には、しすぎるほど試食をし、家族に何度もチェックを頼むようになった私です。

粘土クッキーの彼女は女の子らしいことが大好きだったので、たぶんあれからもバレンタインデー毎にお菓子を作っていると思います。味について指摘できた人はあれからいたのでしょうか。心配です、色々なことが。


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