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【伊坂幸太郎】火星に住むつもりかい?

伊坂幸太郎さんの「火星に住むつもりかい?」をご存知でしょうか。
最近私が読んだ本の中で一番ショックだったというか影響を受けたというか、とにかくすごい引力を持つ作品でした。
一言で感想を述べると、怖い、です。
一文だと……、こんな国になったらと思うと怖くて眠れない、です。

読後感は正直悪すぎ。
ですが、こんなテーマで読後感が良い方が怖いですね。おそらく、狙った通りの受け止められ方、で合っているのではないでしょうか。
この読後感でなければいけないと思う、そんなお話です。

簡単にあらすじをかいつまむと、交代制の安全地区では住民から密告のあった "危険人物" は平和警察に取り調べという名の拷問を受け、最期は処刑されてしまいます。ギロチンで。しかし、黒ずくめで謎のある武器で戦う正義の味方が平和警察を邪魔します。平和警察は、正義の味方を追うためにあらゆる手段を使います。……こんな感じですかね?

このお話のテーマは私が思うに、平和警察のある社会についてと偽善あるいは正義とは何かの2つ。

平和警察、これが怖いんですよ……。普通の警察とは異なる機関でして、住民同士の密告から危険人物を連行・拷問し、最後は処刑するのが仕事。
大事なのは、平和警察は危険人物を "見つける" のではなく危険人物に "してしまう"、という点です。本当に危険人物かどうかはどうでもいいんです。拷問して無理矢理吐かせて、危険人物にしてしまえばいいのですから。あらゆる情報を持ち、あらゆるところに監視カメラを設置させて監視する平和警察。
……こんな社会になってしまったらどうしよう、そう思って本当に怖かったです。権力が、自らに都合の良いものは声高に主張して都合の悪いものは蓋をして口封じする時、国民は気が付かないなんて、あらゆる情報を国民から収集する権力からすればお手の物でしょう。

もう一つの偽善あるいは正義。
……偽善って何でしょう。正義って何なのでしょう。どこからどこまでが偽善でどこからが正義なのか。
自分に得にならなければ偽善だ、と叫んでしまうようなところが人間にはあると思います。
しかし、正義が確かに存在するとは思えません。戦争では人を殺せば英雄と呼ばれ、文化が違えばあらゆる価値観が変わる世の中で、確かな正義など存在するのでしょうか。
……まだまだ、私にはよく分かりません。

今の時期に読んで良かったと思える作品でした。
人が殺されたりするのでちょっと怖いですが、社会について考えさせられる作品です。
たぶん私は、火星に住みたいと足掻く人種だと思います。

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