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心の中の象と象使い

クライアントのしずこさん(仮名)がとても楽しい夢をみたそうです。

「夢の中で朝起きて玄関から出ると、近所で飼っている子象のみどりちゃんがどどどっと走ってきて、”遊んでえ〜”とじゃれてきて、とっても可愛かったんです♡
みどりちゃんはとっても人懐っこくて、甘えん坊のやんちゃっ子で、じゃれてきて可愛くてしょうがなかったんです♡♡」

大変幸せな夢だった様です。
しずこさんは職場で転んで骨折してしまい、自宅待機を余儀なくされています。時間がある今、職場でうまくコミュニケーションが取れず、対人関係で悩んでいると、集中してカウンセリングにいらっしゃいました。
今回で4回目のセッションでした。

その時ふと以前YouTubeで見た心の象の話を思い出しました。

心と行動の研究をしている津軽弁訛りの研究者は、人の心の大きさや優しさ、荒々しさを象に例えました。

象は仲間の象から感情にそっと寄り添われることで、自分の感情に素直に対応していけるという話しでした。

しずこさんの小象のみどりちゃんは、しずこさんの心自体で、ご自身がよろこびに溢れた状態になりたがっている、
そして自分自身が変わることを後押ししようとしていると感じました。

動画では感情の大切さに重点を置いているので理性の話はスルーしていますが、しずこさんの理性はかわいい子象をきびしく調教している象使いの様に感じました。

しずこさんの象使いは完全に子象を支配して、期待通りに動いてもらおうと常にコントロールしていました。
象も期待に応えようと必死ですが、自分の感情が押しつぶされかかっていました。

しずこさんに象と象使いの関係を話すと、気付きがあった様で、
今までそれが正しいと思っていてそういう風に自分を見たことがなかった、とおっしゃいました。

人の心に寄り添うのは、私たちはある程度感覚があるかと思いますが、
果たして自分の心に十分寄り添えているでしょうか?

自分の心、感情が訴えていることにとことん耳を貸して、
それがどんな感情であれ、
ジャッジせず、解決することだけにリアクションを取らず、
ただ寄り添えることがどれだけできているでしょうか?

多くの場合、私たちはとても深く聞いてもらえるだけで、明るい気持ちになります。
話しているうちに自分の中が整理され、
理解されると絶大な安心感を得られます。

傾聴スタイルのカウンセリングが効果があるのはこのためですね。

しずこさんはご自身の象使いの荒々しさを抑えなければならない、とおっしゃいましたが、象使いにもそう行動している感情的な理由があります。
どうか自分の中の象使いの話も十分に聞いて、その言動の理由を理解してあげてください。

自分の中で起こっている様々な思いを、良い悪いの判断なしにただ深く聞くこと。
ここが自己実現の入り口でもあります。

そして本題のコミュニケーションについて、象の話で以前読んだマーシャル・ローゼンバーグのNVC(Nonviolent Communication)の本を思い出しました。

人を思いやる実りある対話に導く手法を説いたローゼンバーグは、
「期待を聞かない様に。期待は1つの思考です。
その思考の裏にあるニーズ、必要性を聞いてください。
その人があなたに何の必要性を満たす様お願いしているか聞いてください。」
と言いました。

この手法で相手と対話し続けると、結果的に自分のニーズと強く繋がる様になると思います。
相手を深いレベルで聞いていると、不思議なことに自分の心の奥の声も聞こえる様になるんですね。
このためには先入観は脇に置いておき、相手に自分をたっぷり与えることを余儀なくされます。
十分に与えられた相手は安心感からリラックスでき、こちら側のニーズにも気づいてくれる様になります。

まずは相手の話をニーズのレベルでよく聞くこと。
人との関係性をよくするために、そして強いては自分自身と深く繋がるために、ここから始めるのもありですね。

最後まで読んでいただき、どうもありがとうございました。


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