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インバウンドにこそ増税を(1)

 もう30年以上も前のこと、高校教員になろうと思ったきっかけは実に不純なもので、「企業に比べたら公立高校の教員は楽だし、自分のやりたい趣味とかにも十分時間がとれるぞ」と聞いたからです。
「高給ではないけれど、公務員だから福利厚生がしっかりしている」というのも魅力でした。

 私の父親(すでに他界)が公立中学の国語科教員であったから、小さい時から教員としての父親の姿を見て育ちました。
 その父親が「教員になるのなら、中学はしんどいから勧めない。高校の先生をめざしなさい。」と常々言ってました。

 当時の中学は「校内暴力」の真っ盛り。そりゃあ、窓ガラスやトイレの便器が全部の残らず破壊されるような学校(父親の勤務校がそうだったらしい)では仕事したくないですよ。

 それで一浪して高校教員採用試験に合格したんだけれど、最初の赴任校は定時制高校でした。
 定時制高校での勤務実態は、自分が思い描いていた教員生活とはあまりにも違っていて、最初の1年間はいわゆる「うつ」状態で勤務してました。

 でも住めば都ですな、大阪府の定時制高校は全日制とは違って少人数クラスだから(入学の段階でたいてい定員割れするし、途中でやめていく生徒も多いので、クラスの生徒人数は基準定員よりも少ないのが普通)、ひとりひとりの生徒に向き合うことができて、だんだんと仕事自体が面白くなっていったのでした。

 定時制高校勤務の頃のエピソードを紹介したところで、もう時代も違いますし、別の機会にするとして、それよか、当時はまだ独身だったから給料も全額、好きなように使えたのです。

 それで夏休み、冬休みは3週間くらい休暇をとってタイやフィリピンや韓国へ一人で旅行してました。何か目的があったわけではなくて単に暇だったからですが。

そのころ東南アジアではタイが観光ブームで湧いていました(ベトナムのドイモイ政策は始まったばかりで、まだ個人旅行は制限されてました)。

 バンコクは白人バックパッカーが我が物顔で闊歩しており、どこへいっても外国人旅行者で混雑してました。
 それで首都の喧騒に疲れて、サバイバルキットを頼りに電車でアユタヤへ行ってみたら、これがまあ静かで素朴で、おまけに夕方になれば観光客はすっかりいなくなるし(バンコクから日帰り圏内だからアユタヤに宿泊する外国人は少ない)、実に快適な場所だったのです。

 アユタヤといえば寺院遺跡がそこら中に残っていて、現在は世界遺産に指定されて遺跡公園として整備されてしまったのですが、当時はまだ手付かずの荒れ放題で、夕方に自転車で遺跡を巡っていると、ほんとうに時代がタイムスリップしたような不思議な感覚になったものです。

 有名な遺跡は入場有料で、正面入り口で50バーツくらいは払うのですが、よく見ると地元の人たちは裏門からタダで自由に出入りしてるんですよ。

 つまり観光バスで乗り付けてくる外国人観光客は正門からお金払って入場するんだけれど、裏門の存在を知ってる地元の人たちは、誰もお金払ってないのです。
 んで、自分は見ずぼらしい恰好のアジア人ですから裏門から出入りしても怪しまれないので、どこへ行ってもお金を払わずに遺跡内を散歩してました。

 さて、30年後の日本。

 暗殺されたA首相がぶち上げた「観光立国」政策が実を結び、2019年には海外から観光客が殺到し、受け入れキャパ限界を突破しました。

 もう無理、ヤバイよ! 
 と思われた矢先、絶妙のタイミングでコロナが到来して、いったんはチャラとなりました。
 
 しかし3年たってコロナも終わりそうで、入国の規制も緩くなり、この連休から何食わぬ顔して「インバウンド復活」なんて煽ってますね。

 京都や奈良は2019年のような地獄絵図が再び戻ってきてしまうのでしょうか。居住者の方々の憂鬱な顔が目に浮かびます。

大勢の金持ちが安い国に遊びに来たがってます。安い国の人たちはどうしたらいいですか?

 CHAT-GPT に訊かなくても答えは明白。

 「衰退国として、これからは観光で儲けます」という方針転換をしたなら、変な良心やプライドは捨てて、とことん海外からの観光客からお金をふんだくって差し上げるべきなのですよ。(続く)

 

 
 

 

 

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