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ジョエル・ロブションのショーケース

昔、恵比寿に住んでいたことがある。
その家のそばにあった恵比寿ガーデンプレイスの地下に、ジョエル・ロブションのパンとケーキが買えるお店があった。

最初のロシアの仕事から戻り、無職だったときの頃。
(ロシアには2回職を変えて行っています)

その時、荒みきっていた私の数少ない楽しみ。
それが、このお店のショーケースを覗くことだった。

そのショーケースのなかのケーキ達は、どれも素晴らしく洗練されていて、芸術作品と思わせるような美しさだった。

そんな中でも、とりわけ心に残っているのが、ブルーベリータルトだ。
なんてことはない。
タルトの上に、ブルーベリーが並べてあるだけのものだ。
カラフルな色でもなく、フレッシュでみずみずしいフルーツが乗っているわけでもない。

濃紺のブルーベリーが、規則正しく並べられている。
ただそれだけ。
シンプル。

しかし、その美しさは他のどのケーキよりも際立っていた。
フルーツやクリームでデコレートされた他のケーキが陳腐に見えた。 「こんなにも、シンプルの力って強いのか・・・」 と、感動よりも動揺したことを今でもはっきりおぼえている。

このとき受けた「シンプル」のインパクトは、今の私の料理に、間違いなく影響を与えている。

そんな思い出のお店の名前でもあったジョエル・ロブション氏が、今年の8月になくなった。
この人の皿は、本当に美しかった。
料理人時代、どれだけ彼の料理の写真を眺めて真似したか。
本当に偉大でした。

今日の料理は、そのブルーベリータルトをイメージした一皿。
【チキンのブルーベリータルト ジョエル・ロブション風】

火を入れたチキンの胸肉を四角くカット。
その上に、たっぷりとクリームチーズを塗る。
そして、ブルーベリーを並べる。

肉とブルーベリーソースを合わせるというのは意外かと思うかもしれないが、よくある組み合わせだ。
チーズとブルーベリーは、レアチーズケーキを思い出せば、相性の良さはわかるだろう。
つまり、ブルーベリーに相性がよい素材というスタートで組み合わせてみた。

そして、ブルーベリーの並べ方は、ジョエル・ロブション風に。

あのブルーベリータルト、本当に美しかったなぁ。
久しぶりにあのショーケース、覗きにいってみようかな。

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