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ソーシャルダンシング①

2020年11月、日本の文部科学省は、あたらしい学習指導要領を発表した。
その発表は、社会に大きな動揺をもたらした。

なぜなら、
「従来の、国語、算数、理科、社会、音楽、体育などの教科はすべて廃止して、教育の中心にダンスを置く」
というものだったからだ。

これまでも学習指導要領には「生きる力を育む」ということがうたわれ、その根幹にはコミュニケーション能力を育てるために、国語で「読む、書く、聞く、話す」ことに力を入れてきたが、その成果ははかばかしくなかった。
ペーパーテストでは点数をとれるものの、日本人はいつまでも自分の意見を言えない、意見がない、表現が乏しく伝わらない、と言われ続けてきた。

そこで政府は大胆な策に出ることにしたのだ。
この教育大改革は、1980年代のゆとり教育以来の大きな転換だ。

2021年度から、小学校の時間割は以下のようになることになった。
1時間目 クラシックダンス基礎
2時間目 ダンス創作(基礎)
3時間目 ダンス創作(理論)
4時間目 世界ダンス史
5時間目 ダンス鑑賞
6時間目 モダンダンス基礎

それに伴い、高校入試や大学入試の科目もすべて変更になった。
もちろん就職試験や面接にもダンスが不可欠になった。

11月の文科省大臣の記者会見の翌日から、目にするものすべてが変わっていった。
電車の中づり広告、Amazonのタイムセールのラインナップ、進学塾のDM、テレビコマーシャルには、すべてダンスの文字が並んでいる。

ダンス教室はもとより、ダンスウエア、英才ダンスDVDなどが次々発売された。
YouTubeやTwitterで最もフォロワーが多いのは、すべてダンサーになった。

(続く)

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