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ロンドンの友人それぞれの見方

先日のミス日本2024グランプリ受賞の椎野カロリーナさんが、不倫していたことを理由にグランプリを辞退したらしい…アホくさ…。

しかし、彼女が投げかけてくれた問いについて、私は考え続けている。日本人とは、日本らしさとは、そして国籍、民族、アイデンティティはどのように形成、認識されるのかということについての問いについて。

ここ最近会った日本人ではない友人たちに、ミス日本の話を伝え、それぞれの意見を聞いてみた。
私の理解力不足や、聞き間違いもあるかもしれないが、大方このようなことを言っていたと思う。
備忘録として書いておくが、これらの意見が、これを読んだ誰かにとって、何かの気づきになればよいな、とも思っている。

まず、私から友人たちに以下の事前情報を伝えた。
「日本で“ミス日本コンテスト”が行われ、ウクライナ出身(両親共にウクライナ人)、つまり遺伝子的には日本人でない女性が優勝した。
両親は離婚し、母親が日本人男性と再婚したことを機に、彼女が5歳の頃に日本へ移住し、その後の人生をずっと日本で過ごしている。昨年末、日本国籍も取得した。
彼女が唯一話すことのできる言語は日本語で、教育も全て日本で受けているので、たとえ見た目が違っていても“自分は日本人である”と本人は認識している。
そんな彼女が優勝したことに対して、私個人としては受け入れられるべき結果だと感じているけれど、日本国内では批判的意見もたくさん出ているらしい」
それに対してどのように感じるか教えてほしいと尋ねると、それぞれ以下のように応えてくれた。

●ペドロの場合
ウクライナ出身、両親共にウクライナ人で彼の国籍もウクライナ人。ロシアのウクライナ侵攻をきっかけにロンドンへ移住。在英2年目。
「どう見てもこの人は日本人じゃないでしょう。たとえ日本国籍を取得して、(コンテストの)基準を満たしていたとしても、この人がミス日本に選ばれたっていうのは、僕はやっぱりおかしいと思うし、それに日本人が反対するのは当然だよね」

●ベロニカの場合
オランダ生まれ、両親共にオランダ人。幼少期をドイツとオランダで過ごし、成人後はフランスとイギリスに住む。両親は現在ドイツ在住。ベロニカ本人は英国在住20年以上、オランダ国籍&英国市民権保有。
「私は彼女が優勝したことに異議はない。素晴らしいことだと思う。ただ、彼女が優勝したことに賛成できない日本人がいる、ということも、もちろん理解はできる。日本は今、変化の時代に差し掛かっているのね。
私の場合、両親共にオランダ人だけれども、私自身がオランダに住んでいたのはこどもの頃のだけで、1番長く住んでいるのはロンドン。ここでの暮らしが私には1番合ってると感じている。私は自分のことを“オランダ人”というよりは“ヨーロッパ人”だと認識している」

●ルーの場合
マダガスカル生まれ、両親共にマダガスカル人。生後すぐにモーリシャスに移住、3歳から6歳までを中国、6歳からの約10年間はイタリア、その後パリに約10年居住。イギリス在住歴は25年以上、フランス国籍&英国市民権保有。
「(一部の)日本人がその結果を受け入れられない、という気持ちはわからなくもないけれど、何人か、なんていう考え方はナンセンス。私は私、あなたはあなた、彼女は彼女、みんなひとりの人間、ただそれだけよ。国籍や民族で分けて考える必要なんてないじゃない?みんな同じ地球に住んでいるんだから。
でも、そのコンテストをきっかけに、多くの日本人が“日本らしさ”や多様性について考え直すというのは、とても良いことだと思う。それによって、外に向かっても目を向けることになるもの。しょうこ(私)がそうだったように」

●ジェイクの場合
ロンドン生まれ、両親共にイギリス人。
「おもしろいね。僕は別に(ウクライナ出身の人が優勝しても)いいと思うけど、日本人にとって複雑な感情が生まれるのも理解はするよ。
僕はロンドン生まれで両親もイギリス人で、他の国に住んだことはないけれど、ロンドンにはいろんなバックグラウンドを持った人たちがいるからね。本当に多文化共生の街だと感じるよ。
それにしても僕らイギリス人はラッキーだよね。だって僕らが他の言語を学ばなくたって、他の国の人がみんな英語を勉強してくれているから、こうしていろんな国の人とも話せる。僕らは英語が母語だということに甘えてるよね」

●バータの場合
ポーランド生まれのポーランド人。英国永住権保有。
「受け入れられない、という人がいるのもわかる。でも、時代的には受け入れられなきゃいけない結果だよね。
ポーランドは日本のような島国ではないけれど、社会主義国だったからひと昔前までは自由に外国に出られる環境になかった。だから割と閉鎖的な考えの人は多い。けれど今は、私を含めて多くのポーランド人が自由に海外に行き来するようになって、考え方が変わってきたと思う」

※英国市民権と永住権の違い
永住権は、期限を定めずにイギリスに滞在、居住できる権利。しかし、一定期間イギリスを離れるとその権利は失効する。
市民権は、イギリス国民としてパスポートを持ち、選挙権も与えられる権利。永住権取得後1年以上経過してはじめて申請可能となる。