見出し画像

新刊速報【2023年11月版】|柏書房営業部通信

 柏書房営業部です。10月の28日と29日に開催された神保町ブックフェスティバル、弊社ワゴンにお越しくださったみなさま、ありがとうございました。両日とも客足途絶えることなく、おかげさまで過去最高の売上となりました!……とよろこびもつかの間、お祭りが終わったということは11月、2023年も早いもので残り2ヶ月を切りました。さて、今月の柏書房の新刊は1点。性染色体XXとXYの違いは寿命や健康にどのくらい影響を及ぼすのか――身近なエピソードや歴史的な出来事、多面的な科学的見地を織り交ぜ明らかにする『寿命は遺伝子で決まる』です。


『寿命は遺伝子で決まる』

シャロン・モアレム 著
伊藤伸子 訳

【営業担当・木村から一言】
 少し前になるが敬老の日ニュース。日本の65歳以上の高齢者は3,623万人でそのうち男性は1,572万人、女性は2,051万人。ニュースを見ていた娘が意外な質問を投げかけてきた。

 「なんで女の人のほうが男の人より長く生きるの?」

 ここは父親としてしっかり答えねば。とあれこれ思い悩んだが、意外と明確な答えが出ないもの。たいていの物事は先人が解明しているものと思い込んで、普段から常識やあたりまえだとされていることに、疑問を持つことが少ないものだ。
 そう考えていると女性が長生きするのはあたりまえだとしても、じゃあ男性が早死にしてしまうのはどうしてだろう。などと思わずもっと悩み込む。なにかきっと理由があるはずに違いない。
 そんなことが気になっていた事もあった矢先、その答えを教えてくれそうな企画が刊行ラインナップにあがっていた。私はこの企画担当を密かに狙っていた。

 『寿命は遺伝子で決まる—―長寿は女性の特権だった』

 2020年以降新型コロナが蔓延すると、明らかに女性より男性が多く亡くなり、中には男性の死亡数が2倍になった国もあった。当初専門家のほとんどは女性の方が頻繁に念入りに手を洗うなど衛生習慣といった行動面に注目していた。しかし国によって感染者は女性の方が多いのに男性の方が死亡者数は多いという報告が出はじめると、行動変数だけでその理由を説明しきれなくなる。パンデミックでは生物学的に男性がいかに脆弱かをはっきり示した。それは病気、例えば「がん」にしてもほとんどの「がん」の死亡者数は女性より男性が常に多い。女性の方があきらかに生き延びる力を備えているようだ。ではこのような差はいったい何によるものなのか。本書は女性と男性の「遺伝子」の差に着目し、この謎を解き明かしていく。

 女性が寿命や回復力、耐久力などといった問題をどのように乗り越えているのか。男性をどのくらい大きく引き離しているのか。そしてこの男女の差異と女性の優位性に注目することが、病気に対する新たなアプローチに繋がるという。
 医学研究も治療もこの事実に照らしてすすめて行けば誰にとっても望ましい状況になる未来が期待できると著者は提言している。
 遺伝学研究をおこなっている著者シャロン・モアレムは臨床での発見や実際の経験、あるいは同僚の画期的な研究や科学者による従来の学説に対立する知見など豊富なエピソードをおりまぜているので、非常に読みやすく引き込まれていく。めちゃくちゃ面白い。読書の秋にこの新刊は是非おすすめしたい。

 『寿命は遺伝子で決まる』11月22日(水)の配本予定です。

 来月の新刊は2点を予定しております。それではまた次回もよろしくお願い致します。


この記事が参加している募集

推薦図書