音楽業界を目指す人へ伝えたい、あまり知られてないレコード会社の3つの職種と仕事内容

<たくさんの方から反響を頂きました!報告>
公開から1週間で就活生、就活や採用の関係者、社会人、元同僚の皆様から「知らなかった」「わかりやすい」「就活に役立ちそう」等の感想を頂きました。

ありがとうございます!


※質問はTwitter(@Ryo_Katayama)のDMにて。ご参考にしてください。

はじめまして。
片山(@Ryo_Katayama)です。

今回は、新卒から5年間お世話になったレコード会社であるソニーミュージックにおいて、音楽業界のサラリーマンとなり、営業とレーベルA&Rとして、音楽をつくる現場から売る現場まで経験したことを書きたいと思います。

レコード会社は、音楽アーティストを中心として音楽を生み出し、リスナーの元に届けるという、音楽業界の主要産業を担います。歌番組や年末の紅白歌合戦、コンサートからSpotifyの配信、街のCDショップまで、音楽に触れる機会は日常にたくさんあります。積極的に触れなくても渋谷を歩いているだけで新曲のプロモーションが耳に入ります。

誰もが知っているようなメジャーアーティストから注目の新人アーティストまで音楽というエンタメを発信するために、非常にたくさんの人が仕事上関わってきますし、ひとりひとりの業務も他の業界からは想像もできないくらい多岐に渡ると思っています。

世の中は就活も本格化。自分のキャリアの振り返りが少しでも参考になればと思います。

あくまで一例となりますし、情報を特定できるような記述もありません。

これから音楽業界を目指す方、そもそも音楽業界ってどんな仕事してるの?という方、シンプルに音楽が好きな方にぜひ読んでいただけたらと思います。

随時加筆するかもしれません。サクッと読めると思いますのでどーぞっ!

レコード会社(ソニーミュージック)に入ったきっかけ

ここは今回は簡単に書きます。

実は大学時代、作曲家を目指して活動しており、1年だけ休学して作曲活動に打ち込むことにしました。就活解禁してからまわりの友達と一緒にリクルートスーツを着て説明会に行ったりしていたのですが、やっぱり作曲活動をもっと頑張りたいと思って就活を辞めてしまいました。

そして休学した1年間に貴重な経験や出会いを頂きました。ちょうどその頃、世の中はAKBグループのプロデューサー・秋元康さん旋風。ぼくも秋元康さんの本を読んだりインタビューを見るうちに、音楽への関わり方として、世の中を驚かすプロデュース・企画・ビジネス面で音楽の仕事に関わりたいという気持ちになりました。

作曲のほうは、大きな成果が出なかったので、翌年にレコード会社に絞って就活をして、ご縁を頂いたというのが、入社の経緯です。

ここから、本題となるレコード会社の3つの職種と仕事内容について、ぼくが実際に入社してやっていたことをベースに書いてみたいと思います。

レコード会社の仕事 ~法人営業編~

レコード会社の営業ってどんなイメージでしょうか?一般的な営業職とは違った面があるのではないかと思います。(営業職の方、ぜひ感想を教えてください!)

<レコード会社の法人営業の仕事>
■得意先のCDショップやECに対して新作商品(CDやDVD等)の良さをプレゼンして売り込む。

リスナーの皆さんに商品へ興味をもらえるよう、CDショップと協力して販促施策を考え、実行に向け進めていく
アーティストが出演する販促イベントにおいて会場とのやり取り全般。発案段階から当日の運営まで。

特に昨今毎日のようにCDショップで開催される販促イベント(インストアライブ)はCD購入者を対象としたスペシャルイベントで、CDという商品に付加価値を乗せる販促施策の主流となっています。この関連業務が仕事の半分は占めてきますので、いわゆる営業のイメージだけでは表せない業務内容だと思います。そこが熱中しがいのあるところですし、なにより楽しいところです。学生時代は営業というと「きつそう」「やりたくない」と思っていましたが、レコード会社の営業は熱中度の高いものだったのです。

扱う商材はソニーミュージックグループが流通する全商品、数えたことはありませんが、おそらく月に何百という数になります。だいたい一つのチェーンを2~3名チームで担当します。

業務の具体的な特徴を2つ書いてみます。

まずひとつは、思っていたよりも自分の担当得意先との取り組みでは、大きく裁量を持つことができることです。(大前提としてアーティストのブランディングを担う仕事なので内容はとてもシビアです)
リスナーのみなさんに一番近い場所で仕事をしている得意先CDショップの店長さんやスタッフの皆さんのそのセンスを借りながら、一緒に店舗での売り方を考えます。それが実際にCDショップの店頭で形になるのです。そこでリスナーのみなさんが嬉しそうにCDを手に取ってレジに向かう姿に出会えるのが一番のやりがいです。

もうひとつ。イベント現場ではステージに立って前説や司会までやるのが営業の仕事です。会場によって100人~3000人以上くらいまでお客さんがいます。当然最初はガチガチに緊張しますが、盛り上げ方を先輩に教えてもらい経験を積むと、緊張に負けなくなりアナウンスも上達します。
イベントやライブは現場勝負!雰囲気づくり次第で何倍も楽しいものになりますので、ときには前説としてウケを狙いにいったり、客席に話を振ってお客さんの緊張を解いたりすることも大切です。これはエンタメ業界ならではのユニークな仕事ではないでしょうか。こういう経験をしたからか、ぼくは入社前よりも性格が明るくなったと言われることが多いです(笑)

さりげなく背中を押してくれる先輩がたくさんいたので、自分に自信をつけることができたと思っています。

レコード会社の仕事 ~営業企画編~

社内では「営業企画」という呼び方はしないのですが、一般的にはそれに近いと思うので便宜上そうさせて頂きます。

まず音楽業界の業務の流れを見てみてもらえたらと思います。

①芸能事務所
アーティストのブランディング構成・スケジュール等
  ↓
②レーベルのA&R
音楽作品のブランディング・レコーディング・MVやジャケット撮影の計画・実施。
  ↓
③営業企画
クライアントであるレーベルに向き合い「どんな作品をどれだけ売りたい」に応える指針を考え、営業のメンバーと連携します。
  ↓
④法人営業
前段のとおりCDショップやECとの連携
  ↓
⑤小売店
CDショップやECなどの販売現場
  ↓
⑥リスナーのみなさんの手元へ

このようにしてリスナーの方の手元へ渡るように落とし込まれていきます。
①はお客様であり社外である場合が多く、②~④はレコード会社内に部署があり、⑤⑥は社外となります。

③営業企画は、見てのとおりレーベルと法人営業の間を取り持つポジションです。レーベルの担当者は1アーティストに対して1~3名ほどで、一緒に決めた売り方の指針を100名ほどの法人営業のメンバーに、展開していきます。

ただし100名というのはまだ表面的な部分にすぎません
なぜなら法人営業のメンバーの先にはCDショップのバイヤーの方。バイヤーそれぞれの先に数十名~100名以上のレジスタッフ&アルバイトのみなさん。そのみなさんは1日に何百回というレジ操作をしている、ということは、もう数えきれないくらいたくさんのリスナーのみなさんが音楽をゲットしに来店してくるということです。

音楽が人々の耳に届くのに、こんなにたくさんの人が関わっているのです。
営業企画のやりがいは、その実感を最も感じられるポジションということでした。

そんな仕事内容の具体例をひとつ挙げてみます。
“商品A”を発売(リリース)するとします。購入者に参加して頂けるインストアライブを開催するとします。全国のCDショップとタッグを組み、CDショップ併設のイベントステージで開催するというケースです。

(スケジュール計画例)
①発売に先立ち先行予約者限定のインストアライブを1カ月間(週末ごと=4回)
②リリース週のインストアライブ(6回)
③その後1か月にわたり週末インストアライブ(週末ごと=4回)

これで計14回開催するとします。するとまずぼくはExcelシートの縦軸にカレンダー、横軸に候補会場を並べて、各CDショップの担当営業メンバーと連携して、できるだけ最適な会場を確保します。パズルを埋めるようにスケジュールを組んでいきます。

ここでいう“最適な会場”とはなにか?というのはケースバイケースです。
例えば商業施設の中で人通りが多く目に触れる会場ならばインストアライブの存在を知らない人にも楽しんでもらうキッカケがつくれます。いっぽう、ライブハウスのような場所で限られた入場者にとってのプレミアムな楽しみ方もあります。
そのほかに、アーティストの出身地にはライブを待っているリスナーもたくさんいるなど、地域ごとの特性も加味します。

アーティストは多忙ですから、レコーディング、テレビ収録、取材など様々なスケジュールがあるなか、すべてをとることは難しく、レーベルとCDショップの意向を聞きながらスケジュール上の最善解を考えていきます。

このように多くの人の力を借りながら進めていくのですが、それだけの人数規模になると難易度が上がってくるのは隅々まで統制を取ることです。これは容易ではありません。トラブルが起きてしまってはリスナーのみなさんに迷惑をかけてしまうため、リスク管理も大事な仕事です。

関係者の間で板挟みになる事も多いですが、その分、大ヒットにつながった時に感じる喜びは、関係者への「感謝」という言葉がぴったりだと本当に思います。

レーベルごとに2~3名チームで担当します。ひとつのレーベルにつきアーティスト数十組くらいです。法人営業よりも扱う商材は少なくなり、その分アーティストの戦略により深く入り込んだ業務になります。

さて、いよいよ次がラストです。
ザ・レコード会社のイメージ、であろうアーティスト担当の話です。

レコード会社のお仕事 ~レーベル A&R編~

レコード会社の中で最もアーティストと対面するポジションがA&R(読み:えーあんどあーる)と呼ばれる職種です。

A&Rは「アーティスト・アンド・レパートリー」の略で、音楽面におけるブランディング、音源制作(レコーディング)やMusic Video(MV)やジャケット制作の内容を考えたり、進行を管理したりします。レコード会社の音楽制作の0→1の部分であり、クリエイティブ要素も強くなりますが、本質はむしろシンプルでどんな音楽ならリスナーのみなさんに楽しんでもらえるだろうか?をシンプルに突き詰める職種だと思います。

1組のアーティストを1~3名チームで担当することが多いですが、仕事のやり方は本当にアーティストによって、チームによって様々です。

具体的にはこんな計画を立てます

(計画例)
・ニューシングルをいつ発売するか?
・そのために制作する楽曲は何曲でいつレコーディングするか?
・ジャケットとMVはいつまでに納品するのかCD生産管理部門と連携
・そのために撮影はいつ、どこで行うか?屋内スタジオか屋外ロケか?
・先述の営業部門とどのような施策に取り組むか?
・営業部門からの状況や提案をもらい応えていく
 等々…

音源制作は、クリエイターがつくるデモテープの段階からイメージをつくっていき、レコーディング現場では音をチェックし、現場でエンジニアさんやディレクターさんと音響処理をしていったりします。

自分はA&Rをやったときに、はじめてAdobeのクリエイティブ系ソフトをインストールしました。自分でカメラを回すこともあったので私物カメラの機材も買い足しました。

アーティストと常に二人三脚するので、ラジオ局、出版社、代理店、スタジオ、クリエイターの方など社外の方と関わる機会も多い職種でもあります。

また、意外と多いのが音だけでなく印刷物のチェックです。出版社やデザイン関係でもあたりまえですが「色校正」などです。
CDジャケットの仕上がり、ポスターの仕上がりなど、特典グッズに写真が使われる場合に印刷の仕上がりがおかしな色合いにならないように、実はスタッフが事前に微妙な色の濃淡が異なる何パターンもの試作品をチェックして調整しています。これは決して不具合によるものではなく、データを物に印刷すると発生するムラを加味した設定をした上で、量産するために必要な行程です。

こうした数字で表せないクリエイティブのクオリティを守るのはA&Rの責任になります。

そんなふうに、日々、アーティストと対面して過ごす時間は、純粋にかけがえないものだと思いますし、仕事そのものが商品(作品)そのものになるのは、やりがいがあります。Music Videoの撮影が1日がかりで早朝から深夜までなんてこともありますが、後日編集を経て完成した時は喜びを感じる瞬間です。

A&Rはいわゆる想像しやすいレコード会社像かと思います。アーティストとチームによって本当にやり方はさまざまですので、自分がなにがなんでもこれをやるのだ!という気持ちが燃料になる職種だと思います。

あとがき

この記事では、粛々と売る現場から作る現場までの業務を紹介しました。
ここには書いていないこともまだまだありますので、機会をみて追記していきたいと思います。

また記事では、ぼくが本業で経験していないので割愛しましたが、プロモーションのためメディア出演をブッキングする「プロモーター」もよく知られた音楽業界の職種として存在します。

音楽業界を目指したい方や、ただただ音楽が好きな方に、なにか参考になれば嬉しいです。ぼくのときは新卒採用は内定まで学歴を聞かないという珍しい選考方法でした。それだけ本人のポテンシャルを試されるし、平等にチャンスのある仕事だと思います。そして圧倒的に貴重で濃い人生経験ができると思います。

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