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メンタルヘルス不調者対応の現場からーリワークにつなぐ面談-

以前、リワークとは何か、そしてその必要性について、そして、リワークを勧めるタイミングに関して記事にした。今回は、やや専門職向けになるが、リワークにつなぐ面談についてお伝えしたい

別の記事で、リワークにつなぐ面談のタイミングについてお話したが今回は、実際に対応することが多い、療養して生活リズムが落ち着いてきたタイミグに、従業員と面談する想定でお伝えしたい。
私がリワークについてお伝えしようと考えるとき、下記のような構成で面談を行うことを意識している。

状況確認・信頼関係構築

面談の対象となる方とは、初対面であったり、そうでなくてもそれほどお互いのことを知らないことが多い。面談の冒頭で私が意識しているのは、信頼関係を構築して、本人が話しやすい環境を作ることである。実際、冒頭で自分には守秘義務があることをお伝えする。そのうえで、休業して今日に至るまで、どのようなことがあったか、そして、今どんな状態かを確認し、この場でリワーク等についてお伝えすべきかどうかを判断する。睡眠の状態や、食欲、気分の変化など、メンタルヘルス不調の症状や、起床して、就寝するまでどのような生活を送っているのかなどを聞いていく。また、医療機関での治療状況や主治医とはどのような話をしているのかも確認していく。人によって、わかりやすく話してくれる場合もあるが、時系列が前後したり、話している内容が飛躍する場合もあるが、あえてそれは指摘せず、本人が話やすい環境を作ることを心掛けるようにしている

問題意識の確認

本人の状況を確認していく中で、体調に大きな問題なければ、次の問題意識の確認に進む。ここでは、職場復帰に対する不安や課題を本人が認識することを目指す。具体的には

「職場に復帰に(仕事に)ついてどう考えていますか」

と問いかけてみる。その中で、仕事や職場に戻ることに対しての不安について話が及べば、その不安をさらに掘り下げて、具体的にどんなところに不安に感じているかを質問し、本人に言語化していもらう。一方で、「すぐに戻りたい」とか、「休んだから大丈夫」とか、「○○してもらえれば・・・」「○○が変わったから」、職場復帰については楽観的に考えていたり、自分以外の力に期待している場合は、もう少し踏み込むために、

「今回体調を崩したことを振り返って、もし、貴方自身の行動や考え方を変えるとしたら、どんなことが考えられますか」

と聞いてみる。この問いに対して、具体的なものがあがってこなければ、メンタルヘルス不調の再発防止のポイントとして、ご本人の課題として、お伝えをする。また、本人なり、振り返り具体的に対策をあげてきた場合は、その根拠や、実際の現場でそれが本当にできるのか、確認をしていく。このような対応していく中で、本人なりの職場復帰(安定して就業し続ける)するための課題が明確になってくる。

リワークの紹介

本人なりの課題が明確になった段階で、次はその対応案として、リワークの紹介していく。ここでは、リワーク一択ではなく、他の選択肢と合わせて提示をして、本人が自分で選ぶという形をとるようにする。
具体的には、まず、
「今明確になったあなたの課題を、ご自身だけの力で解決していくとしたらどんな手段がありますか」
と聞き、復帰に向けた準備のための日常生活の仕方や、書籍、インターネットサイトなどを紹介する。
そのうえで、
「職場復帰を専門的に支援してくれるプログラムがありますが知りたいですか」
と聞き、リワークの紹介をする。そのうえで、自力でやった場合と、リワークを使った場合で、課題の解決にどれくらい近づくか考えてもらう。この段階まで来ると多くの場合、リワークに強く興味を持ってもらえることが多い。

具体的な利用期間の提示

私は、前段でリワークを紹介するときに、あえて、具体的な利用期間ついては、伝えていない。利用期間については「最低3か月、平均6か月」とお伝えするが、これを伝えると一気に相手のリワークに対する意欲が低下するからだ。だからこそ、前段で他の選択肢と合わせてリワークをご紹介し、リワークへの興味が高くなった段階で、利用期間の目安をつたえるようにしている。それでも、期間の長さで本人の気持ち引っかかっているようなら、
「あなた自身の5年後、10年後を創造してほしい。メンタルヘルス不調は再発が多いといわれているが、リワークを利用することで大幅にその可能性が減らすことができる。もし、利用せず復帰して、再発・再休業したらどれくらいかかるだろうか」
とお伝えすることもある。

意思確認

ここまで話をして、本人の利用の意思を確認する。ここまでお話して本人がリワークについて前向きな様子であれば、主治医とも相談してリワークを利用いただくことができる。しかし、ここでも利用したくないとおっしゃる方はいる。その時、私が意識し、相手の可能性を伝えるようにしている。別の記事でもお伝えしたが、私は、メンタルヘルス不調になっても適切に準備すれば、120%の状態で戻ってこれると信じている。これまでの経験や他人の目、自分自身に対するイメージなど、様々な要因があり、今のままでよい、無理したくないという思いが、リワークの利用を妨げているなら、リワークはそれを乗り越えるきっかけになるし、病気で苦労した分、成長して帰ってこれるという期待をお伝えするようにしている。

ここまでするのか、という考える人もいるかもしれない。それでも、リワークを利用しない方はいるし、それはそれでその人の選択なので、それ以上の無理はしない。しかし、リワークにつながらなくても、本人の可能性を信じて、少しでも良い状態で復帰できる支援を行うようにしている。

リワークにつなぐ面談についてご紹介した。面談相手は、毎回異なり、一人ひとり、考えも課題も違うので、いつも同じようにはいかない。また、これで完璧だと思っていないしまだまだ課題があると思っている。同業者の方の参考していただければうれしい。


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<著者について>
野﨑卓朗(Nozaki Takuro)
 
日本産業衛生学会 専門医・指導医
 労働衛生コンサルタント(保健衛生)
 産業医科大学 産業生態科学研究所 産業精神保健学 非常勤助教
 日本産業ストレス学会理事
 日本産業精神保健学会編集委員
 厚生労働省委託事業「働く人のメンタルヘルスポータルサイト『こころの 
 耳』」作業部会委員長
 
 「メンタルヘルス不調になった従業員が当たり前に活躍する会社を作る」



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