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本を読む時間を楽しむ

川口市出身の自称読書家 川口竜也です!

読書好きの知り合いの中に、小説よりもビジネス書や自己啓発系の本が好きな人がいる。成功した人の本を読んで、自分も「早く」その域に達したいと。

より稼ぐために、出世するために、起業するためになど、目的は違えど、将来のために本を読む人は多い(むしろ大抵のビジネス書は、それが読書をすべきという前提だ)。

それゆえに、自分の時間を有効活用するべきだと語る。みんなが休んでいるときに仕事をしろだとか、週末も仕事をして起業の準備をしろだとか。

無駄だと思える時間を、少しでも将来のために活用しようってね。

私自身、人並み以上に本を読んでいる自負はあるものの、本音を言えば、もっと本読む時間作れたじゃんと思ってばかりいる。

こんなショート動画を30分も眺めるならば、少しでも本を読めばよかったのに。1回目のアラーム通りに起床して、有意義に朝読書をすれば良いのにと。

こういう、「時間を使いたい」という気持ちは、誰しもが考えることだろう。

偶然にも、メトロミニッツ ローカリズム4月号の特集が「30時間あったらどこに行く?」であった。

私には時間が「ない」からこそ、時間があればもっと出来ることがあるのに。もっと時間を有意義に使えたら良いのに、と。

そんなわけで、去年読書会で勧められたオリバー・バーグマンの「限りある時間の使い方」かんき出版 (2022) を紐解いた次第。

現代に生きる僕たちは、休みを「有意義に使う」とか「無駄にする」という奇妙な考えにすっかり染まっている。……将来のためにならない過ごし方をすると、なんだか悪いことをした気分になる。

「限りある時間の使い方」172頁より抜粋

読書もそうで、わざわざ時間を掛けて読むならば、何かためになる本を読んだ方が良いという考え方もある。

中には、著名な方の講演会のCDとか、ビジネス書のオーディオブックなどを聴きながら仕事をしている方も少なくない。

もちろん、そういう目的や使命を持って生きられるのは凄いことである。目指しているところがあって、それに脇目もふらず走り続けられるのは、誰にでも出来ることではない。

だが、個人的には、そういう人達を見ると、どうしてもミヒャエル・エンデの「モモ」を思い出してしまう。

「今」という時間を節約して、将来節約した分の時間を使おうと。

    時間節約こそ幸福への道!
あるいは
    時間節約をしてこそ未来がある!
あるいは
    きみの生活をゆたかにするために──
        時間を節約しよう!

「モモ」103頁より抜粋

将来のために「今」頑張ること自体が悪いわけではない。ただ"頑張る"のが抽象的過ぎるために、何かしら目的や目標を設定する。

今よりも稼げるようになるために、本を読むのは肯定されることだ。むしろ、息抜きのための本ばかり読むなと言う著者もいるくらいだし。

怖いのは、「将来のために」を優先してしまい、読書している「今という時間」を蔑ろにしてしまってないかということ。

本を読んで(将来の役に立つ)何を得るかばかり考えて、本を読むことで得られる精神的なゆとりや楽しみを忘れてはないかって。

実際、人生のあらゆる瞬間はある意味で「最後の瞬間」だ。時は訪れては去っていき、僕たちの残り時間はどんどん少なくなる。この貴重な瞬間を、いつか先の時点のための踏み台としてぞんざいに扱うなんて、あまりにも愚かな行為ではないか。

「限りある時間の使い方」 156頁より抜粋

繰り返しになるが、将来のために勉強したり、せっせと週末に研修に出掛けたりすることが無駄だと言いたいわけではない。

だが、その時間を楽しめないならば、一体何のために時間を使っているんだって思う。

無理して本を読むくらいなら、もっと自分が楽しめる本を読めば良いのにと。

けれど時間とは、生きるということ、そのものなのです。そして人のいのちは心を住みかとしているのです。

「モモ」106頁より抜粋

極論、明日死ぬかもしれない。今朝も地震速報が鳴り響いたが、明日もこうやってnoteを書けるかも不確定である。

とは言え、こういうのも捉え方で、明日死ぬかもしれないからこそ、今日という日を精一杯ハードワークして過ごそうとする人もいる。もはや仕事が好き過ぎるならば、それでも良いかもしれない。

でも「限りある時間の使い方」しかり、ミヒャエル・エンデの「モモ」しかり、もっと今という時間をしっかり生きることが大事なんじゃないかな。

何かしなければ、と言うことではなく、今ここに存在することを楽しむ、という意味で。

だからこそ、本を読む時間を楽しむ。役に立つとか、価値があるではなく、本を読むこと自体を楽しむのが良いんじゃないかな。それではまた次回!


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