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夏祭りが楽しい記憶だと良いな

 4年ぶりに、町内夏祭りが開かれる。音が近隣に迷惑だから、近年盆踊りはないけれど。うら寂しい話だよなと思ってしまう。

 幼い息子は盆踊りが大好きで、小学2年生くらいまで、輪の先頭と見られる踊り子さんの真後ろで踊っていた。
 青色の地にトンボの柄の入った甚平の後は、紺色の地にかすりの柄。両方リサイクルショップで見つけた。それを着て踊る姿が可愛くて。
 出店も好きで、スーパーボールやゴム風船をすくい、輪投げを楽しんでいた。知らない大人と言葉を交わしながら何かしらもらえる。「わ。うれしいね」と笑うと、息子もうれしそうな表情でちょっと跳ねたりなんかするのだった。

 私は子供の頃、盆踊りに加われなかった。踊りのフリがわからないことが恥ずかしかった。祖母の田舎や自分の住んでいる町内のどこでも輪の外から眺めるだけ。
 ゴム風船や金魚すくいは、手に入れたい欲に負けてしまったけど、輪投げなんて失敗したらもう居心地悪くてじっとしていられない感じ。

 そんなの失敗しても楽しめば良いのだと知ったのは、夫と知り合ってから。
 「こういう場に来たら、入りこんじゃえば良いのだ」と、テーマパークの独特な雰囲気に、静かながらも楽しむ夫を見て、新たな一面を知った気がした。
 札幌に引っ越してから夫に「こういうの楽しめた?」と、町の夏祭りを見ながら聞くと「バイトしたこともあるよ」と言う。うちわを配ったり、盆踊りに参加したりだって。楽しそう。

 私がそういった所で消極的なのを、両親はガッカリして見ていたのではとずっと思っていたので、息子の楽しむ姿を見せたかった。

 両親の住む地域の夏祭り。
 いつもの田舎とはちがって、たくさんの人が来ていて混んでいた。
 慣れていない環境や雰囲気って、当時の息子にとってはストレスだった。

 以前から両親の住む家に行くと、旅の疲れや、いつもと違う環境で、気持ちが緩み始める3日目くらいに、大かんしゃくを起こす。少しずつ我慢やしんどい気持ちが積もってくるのだ。

 この日も出店のを楽しんでいるうち、ちょっとしたことをきっかけに、表面張力の最後の一滴、みたいに気持ちがバクハツした。

 大、大号泣!!

 とてもじゃないけどその後の盆踊りに参加できそうにない。私まで泣きそうになりながら息子の手を引き、帰ってきた。
 
 帰宅後、息子と話し合って両親に謝ったけれど、二人とも何でもないよと言っていた。
 私とはちがった可愛さを持つ息子を見せたかった、私の独りよがりな気持ちだったのだろう。息子はもう疲れていたのに。

 後で両親と息子のうつった写真を見ていたら、一番楽しみにしていたのは、私のような気がしてきた。
 自分の親バカとエゴとを省みる。ああ。私ってばもう。いやになっちゃう。

 息子にとって夏祭りが楽しい思い出として残っていると良いけれど。今度聞いてみよう。


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