大人が子供に伝えたいこと~「ジョジョラビット」より~

 熟成下書きを出してみよう。今だから、ちょうど良いのかもしれないと思った内容がある。

 こんなご時世、大人は子供に何を伝えられるだろうか。子供が不安な気持ちに襲われてしまう時、大人はどんな態度を示したら良いだろうか。

***

 少し前の話になるけど、「ジョジョラビット」二度目の鑑賞は、息子を連れて行った。
 タイカ・ワイティティ監督だから、忙しい息子も納得してついてきてくれた。
 
 2度目もやはり私はロージーに、感情を翻弄された。

 注意して見れば見るほど、彼女の母親としての愛情がよく表現されていて、素敵だ。


*直接的なスジではないけど、詳細な部分でのネタバレあります。観たことない人で知りたくない人は読まないで下さい。


 二人で喋ったりフザけたりした後、お母さんと並んで自転車に乗る時間。
 靴ひもを結べなくたって、ヒステリーに怒らない。
 ジョジョがナチスの真似をしてもむやみに批判しない。
 むやみに批判はしないけれど、食卓の場では中立で話しましょうと毅然とした態度を取る。
 ジョジョがケガしたら、クレンツェンドルフ大尉を監督不行き届きで殴るのもいとわない。
 
 何より、戦時下でありながら、明るくてとぼけた母親そのままでいようとしているのが素敵。

 ジョジョが寝る時に、ベッドの横でジョジョと話すシーンは特に印象的。
 ウィンクできない息子の目を両手でコントロールする。私にも身に覚えがある。ウィンクできない息子の目を、私が両手でウィンクさせて二人でケタケタ笑った。
 息子が一人で寝れるようになってからも、よく私は息子のベッドサイドに呼ばれた。色々話しかけてくる。眠れないかもしれないからそばで見守っていてとか背中をかいてとか言う時もあった。一年くらい前まであった。さすがに最近は勉強などで私より遅く寝るようになって、呼ばれなくなったけど。

 あのシーンを観ながら、ああ親子ってこうだよなと思った。そして、そんな風に息子が観ているとしたら、息子も幸せ者だなあとも。


 ロージーと、かくまっているエルサとの会話も印象的。
 「大人の女になるってどんなこと? そんな風にワインばっかり飲むの?」って聞かれる。

 それまで少し愚痴を言っていたロージーが、母親の顔になる。ワインを飲むのは、愚痴を言うためだけじゃない。それにワイン以外のお酒だって飲める。それを選ぶのは自分だと言いたげに、「大人の女になるって、自由になることよ」と話す。
 そうは言わなかったけど、そんな内容だった。その内容が具体的なだけに、エルサに希望が胸の内に広がるのが表情でわかる。夢や希望を教わったエルサは、ほんのりと笑顔を浮かべる。
 あのシーンは、大人になる意味が「ちゃんと伝わった」んだなと観ている側まで納得できた。子供が何かを問いかけ、大人が言葉を伝える時には、できるだけ具体的であった方が良い。

 「人を信じられるのも大人よ」と言った時、エルサは「どうやって信じられる人かどうかわかるの?」と聞く。
 ロージーは
 「ただ信じてみるだけよ」
 と何でもないように言う。

 信じて傷つく日もあるだろう。私も信じては傷つき、の繰り返しだ。それでも信じる。信じないことには始まらないからだ。信じるとか信じない以上に、傷ついてから立ち上がる力が必要だ。その時には周りの人にやはり助けられ起こしてもらう。
 信じたいと思う人は限られているけれど、信じている人に「信じて良いんだ」と思わせられる瞬間は、心の底から幸せを感じる。
 
 彼女が最後までエルサとジョジョを守れたらなあと思う。けれど、彼女は正しい方を選びたかったんだ。それも彼女の生き方。
 戦争は愚かで無意味で残酷だ。

***

 観終わってから、「映画、付き合ってくれてありがとうね」と高校生息子に言った。
 「うん。観て良かったから、むしろ行って良かったよ」。映画を観終わった直後、言葉少なだった息子は、ようやく夜にそんな風に言ってくれた。

#映画 #感想 #エッセイ  

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