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母と娘、肌の手入れについてなかなか共鳴しないのだ

 何故そんなに肌がキレイなのか。高校生のころ、肌とか化粧品とかに興味津々になる年頃になると周りの、それほど親しくもない人たちからも聞かれたものだった。
 今の私にとっては何てうらやましい話だろう。だって35年ほども前の話だもの。今はシミがパウダーでも隠せない。ファンデーションで厚く塗るのもいやだ。なんだかもう顔だけ野生児みたいなんじゃないだろうか。50過ぎたのに大丈夫だろうか。

 高校生のころは確かにシミがなかったし、ぱつんぱつんに肌ツヤも良かった。何かしているのかと聞かれても、女優のように「何もしてません」と言えるほど何もしていなかった。
 当たり前に朝晩顔を洗うのを欠かさなかったけど、特別な石けんで洗っていたわけでもなく、にきびができるとか肌がつっぱるような日はベビークリームを塗るくらいだった。そのベビークリームもカネボウだったけど、500円くらいのものだ。当時ですら安かった。

 大学生になると甲子園球場のデイゲーム観戦とか高校野球観戦とかキャンプのリーダーとかで、シミを定着させてしまった。
 化粧品に手を出すようにもなった。基礎化粧が主で、あとはパウダーと口紅程度。
 年齢を重ねるにつれ顔のシミはなかなか消えなくなっていき、肌も乾燥したりベタついたり様々に変化しやっかいだなーと思うようになった。
 あんな化粧品、こんな化粧品、ちょこちょこ試してみたけど、合わない方が多くてすぐ吹き出物が出たり、肌の色がくすんだり。だから合う物がまれに見つかると執着し、使い続けてしまう。今もそう。安くて合うともう離れられない。とは言っても肌の何かが改善されるわけではなく、「悪くならない」が私の基準。現状維持。それも大事。

 母と離れて暮らすようになった20代半ばごろから、母はちょこちょこ化粧品についてセールスレディのようにあれこれと勧めてきた。
 最初はうるさいなあと思っていたけど、何もそんなイヤな態度取ることないよなと、とりあえず聞く姿勢を始めたのが30代半ば。だからって試すこともなかった。

 だって母と私は肌質がちがうみたいなんだもの。

 母に合ったところで私に合うかどうかわからないし、自分に合う化粧品で充分。それに当時母が困っていることとでも、私は特に困っていない。

 40代も過ぎると母はめったに化粧品を勧めてこなくなった。勧めてくる時は、「またこんな話なんだけど」と、かせみが聞くわけがないといった風に半笑いで話してくるようになった。
 ただそのころに「お母さん、最近肌がきれいね!」と驚くと「むっふふ!」と得意げに使っている洗顔剤だの新しい化粧品を紹介してくれる。まだおススメしたい気持ちがあるようだ。

 昨年の秋、3年半ぶりくらいに会えた。
 リモートでパソコン越しとはちがって、互いの顔もよく見える。
 80歳前の母なのに肌がキレイ。「そんなことないのよ。シミもこうやってあるし」って言うけどまじまじ見ないと気にならない。

 「お母さん良いなあ」「最近本当にシミが消えなくて」「ここにもここにもあるでしょ。この辺のはもううわあーってたくさん広がってるし、この辺りのは……」とかもう私の方が止まらない。
 すると母があれもこれも出してきた。「これはね、夜塗るの」「これは朝。これだけだからラクよ~」「安いけどこれで充分」。
 何十年越しかで、目の前にいるセールスレディのおススメに乗りまくる。

 帰宅後も自分で購入する。これなら家計に負担にならずに続けられそう!

 何か月か続け。
 ……効果はわからない。
 そもそもこれって朝塗ったらもう良いって昼はどうするの? 外に出ない日も朝から塗ってるのん? 夜のあれって塗り「こむ」んだよね? あんまり変わってない気がするんだよね。どのくらいで効果出るんだろう?

 質問攻めにすると母が言った。

 「そんなのかせみと私とでは肌がちがうからわかんない。自分で探したら?」

 えええ……!!!



読んでいただいて、ありがとうございます! 心に残る記事をまた書きたいです。