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現代人は自己中心的だ。しかし、

 個人の意志が優先され、自己中心的な思考が当たり前になった現代において、私達が失ったものは他者への思いやりではなく、次世代への想像力である。
 即ち、よく言われるように今の時代は公共とか協調とか誰かのためにという精神が薄れ、自分が良ければそれでいいと思うようになった……というのは間違いである。
 私達は社会を生きる人間としてむしろ、自分自身を大切にしつつなお、他人の目も気になるがゆえに苦しんでいる。これまではもっと他人を助けたり優先したりすることが当たり前で悩むことは少なかった。

 つまり、自分をもっと大事にしなければという考え方が強まってきたがゆえに、私達はまだ捨てきれない他人への同情心、仲間感覚、あるいは人恋しさ、寂しさといった感覚との板挟みになっているのだ。それが現代における人生の基本である。
 しかしこの捨てきれない同情心の代わりに、私達は次世代への思いやりを失くすことになった。どうしようもない。「今の自分」というものを大切にするのならば、抱えきれない、思いやれないものも出てくる。その大きなものの1つが、まだ存在するかどうかもわからない未来のことだ。

 要するに私達は「今」をなにより大事にしているのだ。それほどに大切なものはほとんどない。ましてや自分がいなくなったあとの世界ではない。
 ある意味でそれは、余裕がなくなっていることの表れかもしれない。自分と、他人と、その住まう世界のことを、激しく変わりゆく日々のことをいつも気にしていなければならない私達にとって、それ以上を守ろうとする意思など働きようがない。そんなことしている間に、今を失っては元も子もないからだ。

 だから、私達の思いやることができない。次世代を。未来を。それよりも今の自分と、そして今の仲間達や社会をこそ見ていることしかできない。

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