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会話劇→解釈の応酬

A「はじめまして」
B「はじめまして」
A「私はAと言います、そちらの名前はなんですか?」
B「私はBと言います。これからドラゴン討伐のクエストですが、Aさんは自信がありますか?」
A「いいえ、正直なところありません。ですがBさんや他のメンバーが参加されるので少し気が楽に感じています」
A「Bさんはどうですか?
B「私はワクワクしています。このクエストを達成できれば戦士として次のランクに上がれますし、何より報酬がとても多いので」

 キャラクター同士の会話は、それが「会話劇」として構成されなければならない。しかしキャラクター達の会話を表現する際に気を抜くと、それが劇ではなく、単なる感想のやりとりや、Q&Aや、情報の提示というだけに終止する、非常に上辺だけのものになってしまう。それはとてもつまらないものだ。キャラクター達の個性も分からず、感情も分からず、淡々としていて味気がない。
 そのような、単なるセリフの羅列にしないためには、キャラクター達のやりとりを「解釈の応酬」にしなければならない。

A「あ、あの、はじめまして!」
B「……ああ、あなたが新人のAさん。最初のクエストがドラゴンだなんて、運が悪いですね」
A「えっ、なんで私の名前を?」
B「私は今回このクエストのリーダーを努めるBです。メンバーの把握は当然のことですし……何より、活きの良い新人がいるって噂になってますよ」
A「ええっ!? いつの間にそんなことに……も、もしかしてこの前の魔族の件のせいで……?」

 解釈の応酬をすると、会話は会話劇になり、分かりやすく厚みが出ていることが分かる。そこには単なるセリフではなく、それによって規定されていく世界観が輪郭を伴っていくのが見て取れるのだ。
 それに加えて発言をするキャラクターの性格や、感性や、好き嫌いや、それまでに何をしてきたか、何を望むのかということも、滲み出るように表現される。
 大切なのは「解釈」である。あるキャラクターの意思を持ったセリフを、意思を持った別のキャラクターが受け取る時に起こる「ズレ」がまさに解釈とすれば、その繰り返しによって生じてくる独特の世界観が、その物語世界特有のものとなる。それは楽しく、興味を惹かせるものだ。単なる会話にはそれはできることではない。
 では、そんな単なる会話を会話劇にするために必要なのは、キャラクター達の「現在の感情」と、「解釈の幅」と、「感情の幅」が最低限必要だ。つまり、そのキャラクターは今どのような心持ちで会話をしていて、それによって受け取った言葉をどの程度まで理解した上で噛み砕いて返答するのか、そしてその流れの中で感情がどのような変化をしていくのか……こういったものである。
 会話に参加するすべてのキャラクターについて、少なくともこの3点がブレずにしっかりとしている状態であれば、セリフの羅列は会話劇になる。そして間違えてはならないのは、会話劇とはそのような前提の結果として生じるものであり、解釈が大切だからといって、全キャラクターが解釈を共用されてはならないということだ。
 解釈したくないキャラクターもいれば、得意なキャラクターもいる。そして積極的にしたいキャラクターとそうでないキャラクターがいる。それでもなお、そのキャラクターが「生きている」ならば、無意識にでも解釈の幅はごく僅かにでも存在する。それらを、キャラクターの反対にあうことなく適応し続けていくことが、まさに自然な「解釈の応酬」=「会話劇」となる。

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