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まぐろの尻尾

もう1か月以上前のこと。

緊急事態宣言が発令され、世の中の飲食店が休業や時短営業を余儀なくされ、それに伴って、卸業者の方々にも影響が出始めたころ。ネットなどでは高級魚が余っているとか、卸すはずだった食材が行き場をなくしているとか、そんな話をちらほら耳にし始めた。その割には、スーパーに置いてある食材は値下がりする気配もなく、ものによっては高くなってさえいると感じるくらい、さしたる影響も見えなかった。

結局、高級魚は獲らなきゃいいだけの話(漁師さんは相場が大きく下がると赤字になるから漁をしない※高級魚に関して)だし、野菜その他食材はそもそもの流通経路が違うから、そんなにすぐスーパーに影響が出るわけではないし、むしろ需要が多くなるなら原理的に価格が下がるとかありえないわけで。じゃあ余っている食材ってどうなっちゃうんだろう、と思っていた矢先。

これスーパーで売るか普通

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マグロの尻尾」が売っていた。売ってるところは売ってるんだろうけど、少なくとも僕の拙い人生の中では、近所のスーパーでマグロの尻尾が売っているなんてこと、夢にすら見たこともない光景で、思わず2度見してしまった。

その価格は500円。それが高いのか安いのかはさっぱりわからない。まだ築地に場内市場があった時に、マグロ専門卸業者さんと話をした時の相場はもう覚えていないし、10年以上前の話だから物価が参考にならないし。

とにかく、これはたぶん、先述した飲食業の縮小による影響で、こうしてスーパーに回ってきたものだろうと勝手に解釈し、レア食材を手に入れる思いでウキウキして買い物かごに入れた。そりゃもうウッキウキです。

マグロのテールステーキって、たまーに居酒屋さんとか炉端焼き屋さんとかで見かけることがあるけれど、他のものに浮気してる間にお腹いっぱいになっちゃって、結局一度も食べたことがなかった。自分の働いているお店でも何度もトライしようと思ったけど、結局試作すらすることもなく、僕の中でどんどん伝説と化し、もはやレジェンダリーアイテムの一つになっている。

もう絶対に食べたいので、買うことは決定。あとは仕上げをどうするかだが、この日は白ワインとのことだったので、洋風仕上げにするべく他の必要な食材をまとめて購入。さて、あとは焼くだけだ。

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尻尾だ。

この感じが胴体まで続いていて、赤身だトロだといわれる部位になるんですよ。わかりますかこれ。これがまとめて味わえるんだから、マグロを1匹まるごと食べていると言っても過言ではない(過言)。実際、セリに出るマグロは尻尾が切り落とされていて、その部分を仲買人が確認して質を見極めるそうだ。

さて、焼いていこう。

【下処理】
流水でしっかり洗っておく。この際、皮についている鱗をしっかりとっておく。
キッチンペーパーで水気をしっかり拭き取り、両面に塩コショウをしておく。
ニンニクをスライスしておく。

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フライパンにオリーブオイルを多めにひいて中火にかけ、温まってきたらマグロの尻尾を入れる。周りにスライスしたニンニクを散らす。ここで少し火を弱め、中弱火に。

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程よく焦げ目がついたら裏返す。同様にじっくりと焼く。にんにくはカリっとしてきたら焦げる前に引き上げておく。

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焼きあがったマグロの尻尾を皿に盛り、同じフライパンで焼いていたにんにくを乗せて、仕上げ用のオリーブオイル(ちょっといいやつ。薫り高いやつ)をかけてパセリを散らす。

以上である。とてもシンプル。

実際に食べてみると、噂には聞いていたがまるで獣肉のようだ。しっかりした弾力、かじるごとにあふれる肉汁はとても満足感が高く、火を入れてオリーブオイルをかけていることによって白ワインとの相性もばっちり。皮の部分もコラーゲンたっぷりのもっちり食感でとてもジューシー。これは買ってよかったと心から思った。作るの超簡単だし。

もう1品

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焼きの魚があるなら生の魚も欲しいよね、ということで、真鯛とカブを合わせてカルパッチョに。これも超絶カンタンなのに激うまになった1品だが、仕上がったもの以外の写真を撮り忘れてしまって、詳しく説明できないのが残念なところ。ざっくりとした作り方は

カブは茎を少し残して薄めのくし切りにする
真鯛は刺身より少し薄めにスライスする
オリーブオイルと根昆布だしを合わせてソースを作る
カブ、鯛、カブ、鯛の順に並べていき、合わせたソースをかけ、軽く胡椒を振る
ワサビや柚子胡椒を添えて完成

あくまで参考に。ぶっちゃけ、カブの切り方はお好みでいいし、鯛の厚さもお好みでいい。どちらかというと根昆布だしのソースが重要になる。根昆布だしがカブの甘味を引き出し鯛の旨味をブーストしてくれ、オリーブオイルがカブをフルーティにし、わずかな鯛の生臭みをマスキングしてくれるので、ワインとの相性がグッと増すのだ。食べるときはカブと鯛は必ず一緒に食べて欲しい。

ちなみにこのソース、何気に作ったのだがかなりいい。シンプルなので応用が利きまくるし、何より適当に混ぜるだけで味がキマッてくれるというのが最高だ。ぜひ試していただきたい。絶対にハマるから。


今回は2品で、いつものですます調からである調にしてみました。レシピ紹介って感じでもなかったので、読み物的にしてみたくて。

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