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空間を計画する。

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2つの世界

2つの世界

このマガジンの「コミュニティとその変遷」(その1)(その2)で述べたグローバル社会とローカル社会について、対比しておきましょう。(下表)

グローバルな世界では、市場原理に基づく競争社会が浸透していて、世界は均質化・画一化しています。世界中どこに行っても、同じ味のハンバーガーを安価に食べることができます。どこの町も、似通った町並みとショッピングモールと住宅で出来ています。
これに対してローカルな世

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コミュニティとその変遷(その2)

コミュニティとその変遷(その2)

「コミュニティとその変遷(その1)」では、地縁型のコミュニティが高度経済成長、グローバル化の過程で解体されてきたことを述べました。人間は個人に還元され(アトム化)、空間は機能に分割されました(細分化と機能純化)。

それでも、地域コミュニティが解体される局面で、(そのことに対するオルタナティブとして、)嗜好や価値観を共有し、人と人の信頼関係でつながる共益団体やNPOなどの新たなコミュニティが勃興し

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コミュニティとその変遷(その1)

コミュニティとその変遷(その1)

コミュニティとは、一区切りの生活圏域を共有し、生活文化や価値観の同質性、利害関係の同一性を有する集団です。その集団への帰属意識や相互扶助の精神を有することも特徴となります。

身体を持つ「人」は、移動や情報取得に距離の制約を受けることから、身体を中心とした同心円状の生活圏域に暮らしています。すなわち私たちは、「家族」「自治会」「小学校区」「市町村」「都道府県」「国家」といったコミュニティの衣を幾重

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国土計画制度の現状(その2)

国土計画制度の現状(その2)

(その1)の国土利用計画法に基づく「土地利用計画」制度に続いて、今回は、国土総合開発法に基づく「全国総合開発計画」制度についてレポートします。

全国総合開発計画は、第1次(1962年閣議決定)から第5次(1998年閣議決定)まで実施されたもので、それぞれ「地域間の均衡ある発展」「豊かな環境の創造」「人間居住の総合的環境の整備」「多極分散型国土の構築」「多軸型国土構造形成の基礎づくり」なる基本目標

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国土計画制度の現状(その1)

国土計画制度の現状(その1)

何か少し威張ってるみたいで気が引けるのですが、私は最近「国土計画家・コンセプター」を名乗っています。そのことは、まあまあの年齢になったのでお許し願うとして、私には「古民家や文化財の面的開発による地方創生」の事業と合わせて、どうしても道筋をつけたい事案があるのです。

それは、この国の「国土計画制度」を、マトモなものにすることです。

まずは、その現状についてレポートします。戦後、日本の国土計画は、

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空間計画の作り方

空間計画の作り方

篠山盆地を横から見ると、 左の図のように、 お盆のような形をしています。 お盆の南北方向の底辺はせいぜい3km程度の幅しかありません。 そして、お盆の深さは600m程度です(盆地の底が標高200m程度で周りを取り囲む山々の標高が800m程度)。

『空間とは何か。』で定義した用語に沿って説明すると、篠山盆地の「環境」はこんな形をしています。山と森林、農地と樹木、町並みや集落などの事物の存在(環境

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「美しき村」を計画する。

「美しき村」を計画する。

「風景は果たして人間の力を以て、之を美しくすることが出来るものであろうかどうか。もしも可能とすればどの程度に、之を永遠のものとすることが許されるか。」柳田國男『美しき村』

柳田國男は、明治8年(1875年)7月31日に飾磨県神東郡田原村辻川(現在の兵庫県福崎町辻川)で生まれ、昭和37年(1962年)8月8日に、東京都世田谷区成城で没しています。

國男の生家は、福崎町辻川の辻(北条街道と生野街道

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空間とは何か。

空間とは何か。

まずは、空間とは何か、という考察から始めたいのだが、最初に、サバデイ(スペイン)のサン・ロック広場で撮られた有名なフラッシュモブを見てみよう。

演出や映像が秀逸なのはもちろんだが、ヨーロッパの都市には身近にこのような空間があることに注目してほしい。町があって広場があって町の人たちの日常がある、暮らしと生業がある。そこに旅人が混じって空間に風が吹く。楽しいことは美しい空間で起きるのだ。

ところで

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