水地一彰(みずちかずあき) スタートアップ× web3× 公認会計士

スタートアップの経営とトークン・NFTの制度(法・税・会計・ファイナンス)の情報発信し…

水地一彰(みずちかずあき) スタートアップ× web3× 公認会計士

スタートアップの経営とトークン・NFTの制度(法・税・会計・ファイナンス)の情報発信します!| USCPA|税理士|元経産官僚|エンジェル税制|エクイティ| SO | トークンファイナンス| M&A | IPO | IEO | 事業再生|スタートアップの入口から出口まで支援

最近の記事

IPOとIEOを比較する

I. はじめにIEO(Initial Exchange Offering)という資金調達方法があるのをご存知だろうか? 暗号資産取引所を通じてトークンを投資家に販売し、そのトークンをそのまま取引所で売買できるようになる仕組みだ。 これは、株式を上場するIPO(Initial Public Offering)のアナロジーからIEOと呼ばれるようになった。 そもそもIPOとは株式を発行することで多数の投資家から資金を調達することを意味するが、同時に株式を市場に上場させること

    • エルフトークンIEOに関する会計処理と今後のIEOで思うこと

      I. 訂正と謝罪「IEO時の会計処理は売上計上するのではなく、負債として計上される。」と記載した。 しかし、ビットフライヤー社がリリースしているIEOに関する開示情報ではエルフトークンのIEO時の会計処理について「売上計上」という記載がある。 結果、発行元の株式会社HashPalletの純資産は改善され、債務超過は解消される(と考えられる)。 この点は、僕が開示情報を十分に読み込まずに誤った情報を伝え、多くの方に誤解を与えてしまった。深く反省します。 そして、本件ご指摘いた

      • フィナンシェのスキームと法、税、会計

        I. はじめに最近話題のフィナンシェ。 「トークン!!ウェイ!!」みたいな一部のweb3の人の間で盛り上がりを見せているが、実はCAMPFIREやready forなどのクラウドファンディングのプラットフォームと同じく、どちらかというとweb2的な購入型(or寄附型)のクラウドファインディングのプラットサービスを提供している。 ざっくりサービスを解説する。 フィナンシェが発行するフィナンシェポイントをクレジットカードで購入する 購入したフィナンシェポイントでフィナンシェ

        • どうする?1円ストックオプションの対応

          I. はじめに2023年7月に国税庁から発表された1円ストックオプション(権利行使価額1円で適格要件が満たされるストックオプション)。 https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/kaisei/230707/pdf/02.pdf ストックオプション(SO)を付与された従業員のインセンティブが増加する改正であることは間違いないが、一方で、SOの設計の自由度が増すことにより、これが却って多くのスタートアップを悩ませている。

          IEO(Initial Exchange Offering)に関する会計処理

          I. はじめにIEO(Initial Exchange Offering)がなんとなく盛り上がってきているような気がする。 2021年から2022年にかけて一気に盛り上がったNFTプロジェクト。2023年にクリプトの冬が到来すると一気に盛り下がりあらゆるプロジェクトが淘汰された。 が、、しかし、、 クリプト市場全体が回復の兆しを見せてきた2023年後半から「IEOを検討しています」という話を耳にする機会が増えてきた。 「IEOの審査プロセスが緩和される」という話もあるし

          ブロックチェーンの改竄不能性を利益剰余金のアナロジーで説明する

          1.はじめに「テクノロジーが未来を変える!」 この10年くらいで耳にタコができるほど聞いた話だ。 AIは非常に分かりやすく、我々の生活をどんどん便利にしており、最近では我々の仕事を本気で奪いに来ている感はあり、確かに未来を変えている気がする。 一方で、AIの次によく耳にするテクノロジー。 ブロックチェーンはどうだろう? 仮想通貨という世にも怪しい金融商品と共に登場したことが影響し、きな臭さが拭い去れないからか、そもそも技術そのものが複雑で理解が難しいからか、いずれにせ

          ブロックチェーンの改竄不能性を利益剰余金のアナロジーで説明する

          「失われた30年」に加担してきた会計士

          公認会計士試験合格者のみなさま。おめでとうございます! みなさまのこれまでの筆舌に耐えがたい努力が実り、本日の結果につながったのだと思います。 過酷な試験勉強の日々を乗り越えて勝ち得たこの結果、喜びも一塩のことと思います。 本当におめでとうございます! さて、そんなめでたい日に全く空気を読まずに敢えて辛辣なことを申し上げたい。まだ、何色にも染まっていない今のあなたにこそ聞いてほしいと思っており、今日のこの合格の日にこの内容でブログを書くことを決めました。少しお付き合い

          会計士試験合格の本質とは

          公認会計士試験合格者のみなさま。おめでとうございます! みなさまのこれまでの筆舌に耐えがたい努力が実り、本日の結果につながったのだと思います。 過酷な試験勉強の日々を乗り越えて勝ち得たこの結果、喜びも一塩のことと思います。 本当におめでとうございます! 15年前に会計士試験に受かり、大手監査法人、事業会社、経済産業省、法律事務所、社外役員など複数のお仕事をしてきた僕個人が思う「公認会計士合格の本質」について、2023年の会計士試験に合格され、これから会計専門家として新

          ブロックチェーンゲームWizardry(ドリコム社)のスキーム

          I. はじめに2023年10月に東証グロース市場に上場しているドリコム社からリリースされたブロックチェーンwizardry。 これまでweb3界隈では暗号資産(仮想通貨)、NFTを活用したブロックチェーンを上場会社が行うことは難しいと言われ続けてきた。 しかし、社長の内藤氏は「いろんな弁護士さん、公認会計士さん、監査法人にチェックしてもらったこともあってこのスキームだったら大丈夫だろう」と発言しており、複数の専門家のお墨付き得て、この度満を持してローンチにこぎ着けたものと思わ

          ブロックチェーンゲームWizardry(ドリコム社)のスキーム

          単線型キャリアか複線型キャリアか

          I. はじめに 先日尊敬する会計士の大先輩のてりたまさんのXでの以下の投稿がバズっていた。 「監査法人を辞めたタイミング」と「その意思決定の根拠」の2点を募ったXの投稿。進路に悩む若手の会計士に向けてのものだ。 皆自身の過去を振り返り、思い思いの経験を書き込んだ。 インプレッションが伸びたというバズという現象以上に実体験が書かれたことから、多くの若い会計士にとって非常に有益なスレッドになったようだ。 まぁ、僕が全く同じことをやっても全然書き込みされることはなく、ここま

          IEO時のトークンバリュエーション

          I. はじめにトークンを発行して資金調達を行う、いわゆるIEO(Initial Exchange Offering)が今後増加していく見込みだ。 自民党から公表されている「webホワイトペーパー」においても、「web3推進に直ちに対処するべき課題」の中にトークンの審査、発行、流通が位置づけられており、トークンを上場するIEOの審査の効率化、具体化、透明化が課題として掲げられている。 これまでは、既に市場で流通しているトークンが国内の暗号資産取引所に上場するケースが多かっ

          税制改正のプロセスを株式会社の予算になぞらえて解説する

          税制改正ってぶっちゃけよく分からなくないですか? 政治家と役人が永田町と霞が関のお作法に則り作り込んでいくので、外からは窺い知ることはなかなかできない。 そこで、多くのビジネスパーソンに馴染みのある株式会社の予算のプロセスになぞらえて、各省庁からの令和位6年度の税制改正要望が提出されたこのタイミングで税制改正のプロセスの全体像を説明してみたい。 株式会社の予算プロセス各事業部が予算案を作成する 各事業部が経営管理部に予算案を提出する 経理管理部は各事業部と折衝を重ね

          税制改正のプロセスを株式会社の予算になぞらえて解説する

          暗号資産信託の解説

          三菱UFJ信託銀行とGincoの暗号資産信託のニュースを理解できた方いますか?? https://www.coindeskjapan.com/199510/?utm_source=twitter&utm_medium=ifttt 多くの方が「???」となっていると思い、このプレスリリースの内容について解説してみますね。 (ちなみに僕もすぐに理解できずCoinDeskの記事を2回読みました) 暗号資産の販売はNGまず、前提として暗号資産交換業のライセンスをもってない

          資本政策とかSOとかスタートアップのお金に関するあれこれ(アイデミー編)

          I. 概要5月19日に上場承認され、6月22日に上場したアイデミー社の資本政策とSOについて詳細を深掘りする。 why アイデミー? オーソドックスな資本政策とSOの付与であるため、多くのスタートアップにとって大いに参考になる事例である 創業者から経営陣への株式譲渡をしており、事例としても面白いと思ったから 本題に入る前に会社の概要からスタートする。 (1)事業内容AI/DXプロダクト事業とAI/DXソリューション事業を運営。 これを代理店含むB2B、B2Cで展開(

          資本政策とかSOとかスタートアップのお金に関するあれこれ(アイデミー編)

          トークン発行ダメ問題のボトルネックの在りか

          I. はじめにweb3の起業家の海外流出が止まらない 上場会社はトークンを発行できない トークン発行するとIPOできない などなど、詐欺が跋扈する仮想通貨という怪しい金融商品に端を発したブロックチェーン技術をビジネスに応用すると風向きが悪い。 しかし、「(なんとなく)怪しいから駄目だ!!」みたいに十把一絡げに悪と認定される乱暴な議論が横行していると思う。 何がダメで、何が良くて、ダメな場合それは何に抵触していてダメとされているのか? この辺りの議論が非常に粗く、w

          トークン発行ダメ問題のボトルネックの在りか

          エンジェル税制申請時の留意点など

          1.はじめに政府のスタートアップ支援の目玉政策であるエンジェル税制。 個人投資家がシード・アーリー期のスタートアップへ投資すると最大20億円の税金が免除されるというすさまじい税制と話題になった。 しかし、、、まぁ、、、普通の人が利用できるようなものではなく超絶複雑。一回やったくらいでは覚えられるわけがない。 そもそも対象が3つに分かれており、コースも3つに分かれており、要件も会社の状況に応じて15くらいに分類されている。経産省から出ているガイダンスが90ページを超える。 誰が