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京都の野外彫刻フィールドワーク

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京都市内にある野外彫刻を見てまわっています。 作品について調べたこと感じたことなどを書いています。
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記事一覧

京都の野外彫刻 フィールドワーク80

『出会いの塔』1998年  松井 紫朗設置場所 : 山科駅前通 『出会いの塔』は、1998年に松井紫朗が設置した作品です。場所は山科駅前通と府道四ノ宮四ツ塚線の交差点付近です。山科駅はJRや地下鉄、京阪が隣接しており、京都では京都駅に次いで利用客が多い駅です。JR山科駅は毎日3万人以上の利用があるそうです。 この作品は、そんな山科駅に向かう駅前通に設置されています。通路に突出した煙突のように見えます。トンネルの排気口のようなにも見えます。ブロンズの色合いから青銅器や銅鐸

京都の野外彫刻 フィールドワーク79

『安倍晴明』像2009年  山崎 正義設置場所 : 晴明神社(上京区晴明町806) 安倍晴明は平安時代に天文や歴,時報などを学び陰陽道を成立させたひとり。天皇や多くの貴族から信頼された陰陽師で多くの伝説が伝わっている。 晴明神社は堀川通りに面して大きな石の鳥居があり,そこを通ると左に「一条戻橋」がある。さらに奥に進むともう一つ鳥居があり,それの奥に拝殿(本殿)がある。この像は拝殿に向かって左に設置されている。右には厄除桃の像が配置されている。 晴明像は少し高さのある台

京都の野外彫刻 フィールドワーク78

『時に背いて』1998年  橋本 典子設置場所 : 山科駅前公園近く 山科駅前地区の再開発事業の一環として,駅前周辺にモニュメントと彫刻が設置された。この作品もその一つ。黒い石の台座に先の鋭角な柱が立ちあがり,その上に雲のように波うつ物体が乗っている。あるいは,雲の形から光が地上に降り注ぐようにも見える。波うつ形とくし形支柱の組み合わせが面白い。金属の幾何学的な形だが波の形と傾きのある支柱により,いきいきとした動きの感じる作品だ。 「山科駅前のモニュメント・彫刻」(京

京都の野外彫刻 フィールドワーク77

『岐路』1969年  阿部 正基設置場所 : 京都府立植物園(左京区下鴨半木町) 植物園の北山門から噴水のところを右に行くと球根ガーデンがある。この作品は南側の針葉樹林の巨木と球根ガーデンの植え込みの間に設置されている。少し薄暗い場所だが、フィールドワークにでかけたこの日は樹々の間から午前の日の光が差し込んでいた。 正面からは逆行でよく見えなかったが、この像の背に光が差し込み美しかった。背後に植えられている樹木の垂直線と立像姿がよく似合っている。右脚を前に出して両手を後

京都の野外彫刻フィールドワーク76

『輪廻』1991年 藤岡 智紀設置場所 : 京都市北文化会館(北区小山北上総町49番地の2) 1991年に作られた京都市北文化会館は、北部地域の文化活動の中心地です。地下鉄北大路駅や北大路バスターミナルのすぐ近くにあり、周辺地域のキタオオジタウンとして親しまれています。この作品は、文化会館に続く通路に設置されています。 石の作品ですが、鉄に見えるほどに磨かれた巨大な重機のジョイントのようです。ボルトとナットで繋がり、重くはあるが動きそうな印象を受けます。巨大な石のおも

京都の野外彫刻フィールドワーク75

『湯川博士の胸像』1987年  山本 恪二設置場所 : 京都大学基礎物理学研究所(湯川記念館) 湯川秀樹(1907-1981年)は1949年に日本人初めてのノーベル賞を受賞した。中間子理論構想など理論物理学の発展に寄与した。また晩年は反核運動にも積極的に携わっている。 この湯川秀樹像は湯川記念財団からの依頼により山本恪二が制作した。山本恪二は京都第一中学校(現洛北高等学校)の後輩。シンプルで飾り気のない長方形の石の台座に博士の胸像が設置されている。晩年の博士の姿を知っ

京都の野外彫刻フィールドワーク74

『空にかける階段 '14-Ⅳ』2014年 富樫 実設置場所 : 京都大学東一条館 京都大学東一条館は時計台のある京都大学正門の一条通りを高野川に向かって西に進んだ途中にある。この施設のエントランスの前に作品が設置されている。題名から2014年に制作されたようだ。 長方形の石碑が波型に曲がったような形をしている。正面から見ると背もたれの長い椅子のように見えたり,側面から見ると大きな「?」の形や耳の形に見えたりもする。富樫実の「空にかける階段」シリーズの一つで市内

京都の野外彫刻フィールドワーク73

『飛翔』1987年  宮瀬 富之設置場所 : 西京極総合運動公園 陸上競技場(右京区西京極新明町32) 西京極総合運動公園は1930年に京都市運動場として開設された。1988年の第43回国民体育大会の開催を機に全面改修され,このモニュメント像も設置された。運動公園の北側の入り口から陸上競技場に向かうと競技場ゲートの右側上部に巨大な像を見ることができる。 台座から巨大な組み合わさった手が伸び,その手の先に黄金色に輝く女性像(女神)と二体の子ども像(天使)が舞っている。子

京都の野外彫刻フィールドワーク72

『対話する石』2014年設置  佐野 賢設置場所 : 京都大学東一条館(東一条通り中阿達町) 知り合いから京大の建物の前に野外彫刻があると聞き調べに行った。この京都大学東一条館は2014年に建てられた宿泊施設と研究棟がある複合施設らしい。ここは以前左京区役所があった場所ではないかと思います。 この作品は施設の南東角に設置されているのですが,はじめは京都の「いけず石」かと思いました。二つの石の作品が置かれている所が「いけず石」の位置にぴったりです。二つの石の距離感が絶妙

京都の野外彫刻 フィールドワーク71

『麦藁帽子と少女』1993年  宮瀬 富之設置場所 : 府立植物園内(北山門から入って右側) 北山門から植物園に入るとすぐに噴水に向かう通路の両側に二つの像がある。この像は西側のワールドガーデン通路沿いにある。植物園内には裸婦の立像が多いがこの像は着衣で椅子に座っている少女の像だ。Tシャツ半袖に夏のパンツスーツのような軽いいで立ちだ。夏の暑さに負けない元気なお嬢さんといった感じ。伸びた両腕の先に麦藁帽子,盛り上がった肩から手先へのV字とつま先立った両脚のV字,麦藁帽子の〇

京都の野外彫刻 フィールドワーク70

『風と舞う』1993年  江里 敏明設置場所 : 府立植物園内(北山門から噴水に向かって左側) 題名の「風と舞う」のとおり,そこに風が吹いている様子がよく分かる。女性のスカートの裾が風になびき軽やかに後ろ髪も風に流されている。その風を心地よく体に受け,風と踊るような一瞬の美しいポーズだ。右手指先やつま先,後ろにそらした首に一瞬の動きがよく表されている。府立植物園内には女性像が多く,またその多くが裸婦像だ。国内各地で野外彫刻として裸婦像が公共の場に設置された時期があった。その

京都の野外彫刻 フィールドワーク69

『歓びと期待』1974年  山崎 正義設置場所 : 府立植物園内(ばら園と沈床花壇との間にある水場) 裸婦像と二体のキューピット像で構成された作品です。女性の斜めに上げた両腕の先には空を飛ぶ一体のキューピットがいる。女性は手を開き空から降りてくるそのキューピットを受け止めようとしている。上げた両手からひねった上半身と軽く腰かけ曲げた脚へのつながりが美しい。一方キューピットは微かにほほ笑み両手を上げて受け止められようとしているようだ。もう一体のキューピットは女性像から少し離

京都の野外彫刻 フィールドワーク68

『陽』1966年   田中 彰設置場所 : 府立植物園内(観覧温室から大芝生地への通り北側) この像も植物園内に野外彫刻が設置されはじめた初期の作品群の一つだ。細身の女性の裸像。右脚を半歩ほど斜め前に伸ばし重心を左脚に置いている。上半身は垂直に伸びた左脚から斜めにつながっている。体全体が「く」の字の逆の形だが首を左にむけていることでバランスが保たれている。髪はかなりのショートカットでボーイッシュな髪型だ。題名の「陽」は太陽を意味することから明るく活発な意味がある。このモデル

京都の野外彫刻 フィールドワーク67

『追想』1964年  阿部 正基設置場所 : 府立植物園内(正面から花壇に行く途中の右側ヒマラヤスギ付近) この裸婦像は植物園に野外彫刻が設置されはじめた初期のものだろう。府立の植物園で野外彫刻展が開催されたのは1960年からでその後も毎年開催されている。また,そのころから園内に作品が設置されはじめている。 右脚を少し曲げ左脚に重心を置いて体全体を緩やかにカーブさせている。体の後ろに向けた両腕,わずかに引いた肩や右にすこし視線を向けた顔,胸の張りと引き締まったウエスト等