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裏社長大河の悪魔版就職斡旋社 第35話 エピローグ

はじめに

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裏社長大河の悪魔版就職斡旋社 35話

 エミレートファイナンスを崩壊に導いてからあとはそっちは世間の流れに任せることにして、オレたちはこれからのこと、むしろ数時間先の未来まで考えないといけない。仕事に関しては金があるからしばらくは何をしなくても生きてはいけるのだが、ここまで裏でも顔が知れ渡っているオレたちの弱体化を悟られると恨みを買った連中からの反撃が怖い。それに工場が消えたからスマホ以外の情報伝達手段がない。フリークメディアにつなげていたオンラインツールも今頃消し炭だ。その結果、今を振り返ると意外とオレたちが他方に救護を求める手段もなかったりする。泣きっ面に蜂、弱り目に祟り目と言われるが、裏社会では弱った姿を見せた奴の方が悪い。そういう世界だ。
 ここにいる限り、即座にそういう対抗相手に居場所がバレるとはおもわねぇが、オレたちが担っていたポジションは競合会社に取られちまってる結果になるだろうってのはオレも覚悟している。むしろそうでなくちゃいけないだろう。つまりは元の経済的な状態に戻すのも無理、恨んでる奴は虎視眈々と狙ってきやがる、相手は無限に星の数ほどいるだろうからな。麗奈だってフリークメディアに売った連中だってオレたちを狙う理由はあるわけだ、お偉方も含めてな。中途半端な再起だけは絶対にやっちゃいけねぇ。つくづくめんどくせぇことをしてくれたな、エミレートファイナンスめ。
 オレはぶつくさと頭の中での考えを呟きながら聖奈のいる大学病院に向かった。中山たちには拠点で金や書類の警備と休息を取ってもらう、交互にな。聖奈は昨日手術が終わって感染などの兆候が無ければ午後には一般の整形外科病棟に移ることになっている。個室対応もしてくれるそうだ。昨今の病院は回転が早い、癌の手術でも4泊5日程度だったりするそうだ。医学の発展に裏社会も大きく貢献してるんじゃねぇかな。
 オレが大学病院に着いた時、既に聖奈は個室への移動を完了していた。オレが整形外科病棟のナースステーションで来訪者登録をして最も奥の個室に案内してもらう最中に担当看護師からは、
 「くれぐれも安静で、激しい運動はしないでください。」
 と、釘を刺されてしまった。流石に人前や病院でする趣味はオレはもってねぇが、相手がいることだからな。ここでは控えるように言おう。
 最も奥にある個室をノックして部屋に入ると、まだ手術明けで尿道カテーテルなどを抜く処置が終わったばっかりの聖奈がいた。思ったよりは元気そうだが、入院服の下から見える傷跡は痛々しい。スタッフの人たちも気を遣ってくれたのか、必要な処置や処理を終えると速やかに部屋の外に退出してくれた。
 「聖奈。」
 オレは聖奈に声をかけるが応答がない。
 「聖奈?」
 オレは再度声を掛けて聖奈の正面に回り込む。
 「うお、どうした!?処置が痛かったか?腕痛むか?!」
 聖奈の顔を見ると涙がボロボロで鼻水は出ているわ、顔は真っ赤だわで大変な状態になっていた。
 「ぢがうよぉぉぉぉ、だいががいぎででよがっっだぁぁぁ。」
 「オレが死ぬわけねぇだろ、ゴキブリ並みにしぶとい男だぞ。」
 「でもぉ、あいづらやばがっだがら!」
 「はいはい、でも、こうして無事に戻ってきましたよっと。」
 聖奈とハグするも左腕は手術しているし、ロボットのように分厚く包帯やギプス、後で教えてもらったんだがシーネって固定具でガッチガチにされていたのを見て、オレは奴らへの怒りがまた湧き立ち始めた。
 「これ、辛かったな。」
 「文字通り、へし折られた。痛かった〜。死ぬかと思った。」
 「全身ボッコボコだったな。あの部屋にいた連中はオレと中山で全員三途の川を渡らせたからな。」
 「うええええええん、ありがとおおおお、アイツらおっぱいもおしりも鷲掴みにして・・・下の毛まで引っこ抜かれて、おしっことアレまで掛けたんだから。」
 「あぁ、知ってる。」
 「生き返らせて殺したい。」
 「まぁ待て、オレは恨みを晴らしたから、聖奈はゆっくり休むんだ。」
 「私の手でころしたいぃぃ!」
 「はいはい、思ったより元気そうでよかったよ。」
 「左手と肋骨の所はめちゃくちゃ痛いけどねー、今は坐薬入れて貰ってるから痛いの落ち着いてるけど、夜中が地獄。」
 「そうなのか。」
 「地獄中の地獄よ、あ、でもね、私頑張ったんだよ!」
 「手術もよく頑張ったな!」
 「違うよ!」
 「ん?」
 「アイツらに犯させなかった!」
 「そっちか!」
 「そうだよ、大河以外の人にヤられたら私は死ぬ。」
 「待て待て待て、オレを置いてくな。」
 「じゃ、手放さないでね。私のここ今空いてるよ♡」
 「絶対安静だからダメだって来る前に釘刺されたわ。」
 「ちっ、あの看護師、明日無事に出勤できると思うなー!」
 「怖すぎんだろ。」
 「冗談よ。でもなー、ちょっとこっちの手は時間かかると思う。力全然入んないし、へし折られたから中があんまりいい感じじゃないんだって。後遺症の可能性はここの手術して来れた先生も、私たちの先生も同じようなことを言ってた。」
 「そうか・・・。」
 「左手で良かったわ、まだ。」
 「まぁ、確かに利き腕じゃないのはよかったと言えるか。」
 「大河のをしゃぶる上でもシゴく上でも支障はないわ!」
 「お前、全員助かったと分かって安心したら欲求不満だろ。」
 「バレた?」
 「ハァー、全くお前には振り回されるな、まぁでもしっかり治せ。治したら、その・・・。」
 「どうしたの?」
 「んーとな、その、まぁ・・・本気で子作りでもしようや。」
 「いいの!?」
 「あんまり聞くと気が変わっちまうぞ!」
 「骨よー・・・くっつけ!」
 「昨日の今日で!?」
 「骨よー・・・くっつけ!」
 「手術したてで!?」
 こういうふざけた会話ができるのも聖奈だけだ。今までは聖奈がオレを頼っているという感覚でいたんだが、オレたちは持ちつ持たれつだなという感覚に変わったのは今回の件がきっかけではあった。まぁ、もう良いだろう。年貢を納めても。聖奈はずっと望んでたしな。
 「そう言えば、大河。工場も何もかも無くなっちゃったでしょ。私たちこれからどうするかって考えあったりする?」
 「いやぁ、色々考えてるんだがな。敵が多いオレたちが中途半端なことを仕掛けると碌な事がないのは目に見えているだろう。だからどうしたもんかなとない頭を悶々とさせてる所だ。」
 「今、私たちのところにあるのはエミレートファイナンスに奪われなかった僅かな地権と現金だけじゃない。」
 「そうだな。」
 「それでね、今まで暗躍がバレないようにってつもりで工場作ったりしてたけどさ。」
 「うん。」
 「フリークとかさ、色んな伝手は作ってあるし。もう自社工場なんて作らずにさ。シンプルにやればいいんじゃない。闇金。」
 オレは今までの経験からこういうストレートな考えが抜け落ちていた。そうだな、確かに隠しながらやるメリットは今のオレたちにはほとんどない。エミレートファイナンスに関わった人間として名前が知れ渡るにはそう時間はかからない。そうなったらわざわざ隠してる意味はないということだ。なるべく隠そうと思っていたわけだが、そうする必要ないんじゃないかと聖奈に言われて妙に納得した自分がいる。
 「確かになぁ。」
 「でしょ?私たちにあるのはテナントになるくらいの土地とお金そのものしかないんだもの。お金だけで出来るのは保険か闇金か。だったら闇金の方が楽よ、みんな帰ってきてくれたんだから!」
 「それならすぐ出来るってわけか。」
 「私が退院してからでも数日で目処は立つんじゃないかしら。」
 「そうだな。みんなに話してみて最後は決めるか。」
 「名前はねー、『リバー』」
 「リバー?」
 「大河の河を意味してる上に一般人からも覚えられやすくかつ違和感のない名前っていうことで。」
 「手術受けながら考えてたんかってくらいまとまってるな。」
 「大河金融って書かれたら怖過ぎて誰も借りに来ないでしょ。」
 「そ、そうか。」
 「そういうことよ。」
 オレはこの案を持ち帰って梅野たちにも話をした。反対する者は誰も居らず、分かりやすくなることでむしろ歓迎している声の方が大きかった。だったら話はシンプルだ、聖奈が治り次第、シンプルに話を進めていこうじゃないか。オレは徐にテレビをつけた。ニュースはこのように伝えていた。
 『全世界から誘拐と人身売買、人権侵害の罪に問われていたエミレートファイナンスグループの総裁が先程、身柄を拘束された、もしくは射殺されたとの情報が入りました。エミレートファイナンスは分かっているだけでも世界中の32の国と地域から女性を拉致し、繁殖と称して同意なく子どもを産ませていたことが判明しており世界中の国から金融活動の停止や口座のアクセスが停止されており、関係者は各国で逮捕されることもあり国際機関を通じて釈放もしくは送還されている状況です。世界から厳しい目が向けられているエミレートファイナンスグループの殲滅は時間の問題となりつつあると言って良いでしょう。』
 ってさ。

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