多角化戦略を取る根拠とは

はじめに

既存市場での成長が見込まれなくなった、企業の内部に新たな資源が蓄積されてきた ーそんな時に企業が取るべき選択肢は「多角化」である。多角化の動機は実に様々なものがあるが、ただ動機があるだけでは多角化は成功しない。多角化によって新事業が成功するだろうという根拠が必要だ。今回は、その「多角化戦略を取る根拠」について突き詰めて考えていこう。

3つの根拠

① 範囲の経済性が活かせる
② リスクの分散ができる
③ 成長の経済が活かせる

① 範囲の経済性が活かせる

範囲の経済性とは、
企業が複数の事業活動を同時に営むことによって、それぞれの事業を同時に行っている時よりも、コストが割安になる、という現象
のことである

範囲の経済が生まれる基本的な原因は、「未利用資源の活用」にある。
未利用資源は主に2つに大別される。

(1)結合生産物
これができるのは、既存事業の生産活動から副産物が出てくる場合である。
例えば、Aという原材料からBを生成するときに、同時にCも生成できたとする。このCが他の事業で活かすことができるならば、それは結合生産物としての未利用資源であると言える。

(2)見えざる資産(情報的経営資源)
これができるのは、既存事業が生み出す技術などの情報的経営資源が他の事業分野でも活かせる場合である。「同時共通利用ができる」ことが、見えざる資産の特徴である。

「未利用資源」の他にも範囲の経済性を生み出すもの(源泉)がある。
(3)遊休資源
既存事業が何らかの理由で使用していない(遊休状態にある)資源が他の事業分野でも活かせるとき、これらの資源は範囲の経済性の源泉と言える。例えば、遊休土地を使ってレジャー産業や不動産業へ進出することは遊休資源の利用と捉えることができる。ただし、遊休資源を使っての範囲の経済は、企業にとって新しい事業の中心になるような大きなものが出にくいことが知られている。

② リスクの分散ができる

企業が全ての資源を単一の事業に集中して投入するとき、環境変化によるリスクは企業のリスクそのものになってしまう。ちょうど、全財産を使って競馬の単勝に賭けるようなものだ。失敗してしまうと企業成長にとって大きなダメージなので、通常は事業を多角化してリスクを分散している。

リスクの分散による効果を実現するためには、環境からの影響が互いに干渉しないあるいは逆の影響を受けるような事業同士を組み合わせると良い。

③ 成長の経済が活かせる

成長の経済とは、
成長するプロセスそのものが経済的なメリットを企業にもたらすというものである。

これと混同しやすい表現に、規模の経済性という言葉がある。

規模の経済性とは、
成長の結果、企業が大きくなったことで生まれる「大きいという状態」が企業にメリット(固定費の分散)をもたらすというものである。
(詳しくは別記事「規模の経済性」で解説している)

成長の経済では、「成長というプロセスそのもの」が企業にメリットを与えるとされているが、なぜ「成長」からメリットが生まれるのか?

理由の1つとして、「従業員のモチベーション向上」が挙げられる。
企業成長が様々なインセンティブを従業員に与え、それによって従業員のコミットメントの強まりは、企業をさらなる成長へと前進させるエネルギーとなる。

ただし、成長の経済には限度があるため、多角化による成長の維持が望ましくなるのだ。




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