メーカーがキャッシュを生み出す経営

黒字なのにお金が減った!?

毎年の決算で、利益が出ているのに自社のお金が増えていないことに気づく経営者も多いと思います。それもそのはず、会計上の損益とキャッシュ(現金)の増減は異なるからです。

経営には運転資金が必要?

経営には、商品を「仕入」して、「在庫」して、「売上」げる3つの要素があるとしたら、その結果、「仕入債務」、「棚卸資産(在庫)」、「売上債権」から構成される運転資金が発生します。運転資金が増えれば増えるほどキャッシュは減少します。

運転資金の構成要素
売上債権+棚卸資産-仕入債務

売上債権と棚卸資産の増加はキャッシュの減少要因、仕入債務は増加要因です。計算式でいうと、運転資金は、売上債権+棚卸資産-仕入債務で、売上が増えれば、売上債権も増えるのでキャッシュが減少します。急成長中の企業がお金が足らなくなる理由はここにあります。しかし一方で、売上を増やすためには、仕入も増えるので、利益率との関係もあるものの、売上と仕入によるキャッシュの増減はある程度相殺されます。となると、キャッシュを食う最も大きな存在が棚卸資産(在庫)でしょう。

銀行の存在意義

運転資金を賄うために必要なのが銀行の存在といえます。とある取引先銀行の担当者によると、運転資金(売上債権+棚卸資産-仕入債務)に1か月分の売上高を足した金額が必要融資資金とのことです。銀行はこの水準を基準として融資をしてくれます。

必要融資資金=運転資金(売上債権+棚卸資産-仕入債務)+1か月分の売上高

ファブレスメーカーのメリットとデメリット

当社は、業種でいうと卸売業に分類されますが、メーカー商品を必要な分だけ仕入れて小売店に卸す卸売ではありません。協力工場に製造を委託して自社企画商品をつくるファブレスメーカーです。協力工場には、生産ロットや経済ロットがあるため、一定数以上の数量を生産し、当社はそれを在庫しなければいけません。

当社のようなファブレスメーカーは、他社の技術や設備を利用するため、身軽な経営ができるメリットがありますが、放っておけば、どんどん在庫が膨れ上がるため注意が必要です。

商品回転率という指標

多くの経営者にとって重要な指標は、やはり利益率でしょう。なぜならキャッシュを生み出す源泉が、利益だからです。しかし、冒頭からお話ししているのように、利益が増えても運転資金が増えるとキャッシュは増えません。そこで、よく使われている指標は、商品回転率です。商品回転率は、年間の売上高を在庫金額で割った数字(売上原価を在庫で割る場合もあるようですが、当社では売上高で割り算しています)です。

商品回転率=年間売上高÷在庫金額

交差比率という指標

当社では、商品回転率に粗利益率を掛けた交差比率を重視しています。それは、在庫が多めで回転率が悪くても、利益率が高いので、利益額が在庫を賄えるとこともある(下記①の場合)という考えからです。逆に、利益率が悪くても、在庫が少なくてよく回転している商品(下記②場合)はキャッシュを生みます。一般的に、交差比率150%を超えると優良といわれています。

交差比率200%以上→優
交差比率150~200%→良
交差比率100~150%→可
交差比率100%以下→不可
同じ交差比率でも内容が異なる例
①商品回転率4回転×粗利益率40%→交差比率160%
②商品回転率8回転×粗利益率20%→交差比率160%

当社では、商品一つひとつの交差比率も把握していますが、商品単体での在庫金額のブレが大きいため、商品カテゴリーごとにグループ分けをしてウォッチしています。商品またはそのグループを継続して販売していくか判断する指標として、この交差比率を大切にしています。


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河口慶二郎(経営者 / 中小企業診断士)

経営やマーケティングなどビジネスに活かせる情報やツールを発信。株式会社KAWAGUCHI 代表取締役、デジタルハリウッド大学大学院DCM修士、中小企業診断士 Web: https://www.kwgc.co.jp/

コメント3件

実務的な内容で興味深く読ませていただきました。
1点質問です。商品回転率は年間の売上高を在庫金額で割った数字を使っているとのことですが、なぜ売上原価ではなく売上を使っているのでしょうか?売上を使うと売上原価を使うより少し商品回転率が高くなると思いました。
メッセージありがとうございます。売上高で在庫金額を割るか、売上原価で割るかは、会社の方針次第かと思います。小売店では売上原価で割ることが多いようですが、当社は計算がしやすいこともあり、売上高で割っています。
返信ありがとうございます。他社との比較ではなく、自社の商品カテゴリーごとの商品回転率を見る上では計算しやすいほうを使うということで理解出来ました。
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