見出し画像

神田橋処方とフラッシュバック

私はもう20年以上「うつ症状」と闘っている。それだけでなく30代に入りある出来事がきっかけでPTSD(心的外傷後ストレス障害)だと診断された。症状が改善された時期もあったが、トリガーになる出来事に遭遇するとフラッシュバックが再発する。

11月〜2月は私にとって「トラウマ月間」である。トラウマになる出来事が立て続けに起こった期間だからだ。11月が近づいてくると悪夢にうなされる、朝起きた瞬間溢れんばかりの涙が出る、不安発作が起きてうまく息が出来なくなるなどの症状が現れる。

今年は春頃から既に調子が悪かった。ツラく悲しい記憶だけを集めたそのスライドショーのような映像は一日中絶え間なく頭の中で再生される。あまりの迫力に圧倒されて気付けば泣きじゃくっている私がいる。

信号無視の車に跳ねられた時の運転手がとっさにハンドルから手を離した瞬間や、ギラギラと銀色に光るハサミが私の髪を切り落としてゆく瞬間、アパートの二階からまるでスローモーションのように地面に落ちる瞬間、病院で目覚めた時に見た保安官の顔…これらはその映像のほんの一部に過ぎない。

慢性化した「うつ症状」に加えてPTSDの症状が酷い今年は絶望的な気持ちになっていた。朝から晩まで一日中辛い思いをするだけの繰り返しなら、いっそ高い所から飛び降りようか、線路に飛び込んでしまおうかなどと考えてしまうほど追い詰められていた。

そんな時、数年前にTwitterで知り合った高木のぞみさんに連絡を取ってみた。高木のぞみさんは「生きづらいHSPのための、自己肯定感を育てるレッスン」の著者である。この本は「うつ病」を経験したHSPであるのぞみさんの経験や日常生活の中で自己肯定感を育てる為の工夫について書かれており、繰り返し拝読させてもらっていた。


過去に私のYouTubeチャンネルでこの本について取りあげてさせてもらってことがあった。

高木のぞみさんに連絡をした際に「神田橋処方」という漢方について教えてもらった。神田橋処方とは漢方薬の四物湯と桂枝加芍薬湯の組み合わせたものでフラッシュバックの薬剤治療に使われることがあるそうだ。PTSDやフラッシュバックといった病態に珍しく効果があると言われている処方だそうだ。

半信半疑だったが藁にもすがるような気持ちで私は医師の元を訪ねた。担当医師は「神田橋処方」について知らなかったが多くの精神科医がこの処方について知っているそうだ。

薬を処方してもらい早速試してみた。驚く事に二、三日後には変化が見られた。

神田橋処方


【変化その①】
いつもは朝起きると身体中に重い鉄の鉛がくっついているような感覚があった。強い倦怠感があり午後2時頃までは頭がぼーっとして動けない。遮光カーテンを開ける事がはばかられるほど目覚めた瞬間から疲れ切っていた。けれど、なんだか脳の疲れが取れたような気がして太陽の光が気持ちよく感じられるようになった。

【変化その②】
PTSDの症状の一つでもある悪夢、睡眠中に過去の辛い出来事を思い出しているのだろう、私はよく悪夢にうなされた。寝ている間に歯を食いしばっているのでとうとう顎関節症になってしまったほどだ。けれど、その悪夢が消え夢を見たとしてもいわゆるごく普通の夢になった。

【変化その③】これは一番大きな変化だと言える。一日中頭の中で再生される体感型(4D)の悲劇のスライドショーが止まったこと。場面ごとに頭の中で再生されることはは未だにあるけれど、今はその映像と私の間に距離が出来たような感覚がある。どこか遠いところで起こっている現象を客観的に見ているといった感覚だ。自分自身がフラッシュバックという津波にのみこまれ溺れてしまっていた頃とはまるで違う感覚である。

【変化その④】
「完全夜型人間」だった私が夜11時頃には眠いと感じるようになった事には驚いた。朝は布団から出る事が出来ず、毎朝不安発作に襲われていた私の体は「夜11時頃からやっとエンジンがかかる」という状態だった。完全に自律神経が乱れていた。休養・運動療法・栄養療法・カウンセリング・ヨガ・瞑想など、ありとあらゆる事を試してきたけれど自律神経の乱れが改善される事はなかったので本当に不思議である。

多くの社会人のように朝6時頃起きて8時、9時には仕事を開始、夕方6時頃仕事を終えて帰宅、夜11時頃に就寝するというような生活は、「慢性的な抑うつ症状」がある私にとって恐らく無理だろう。けれど、日中少しでも動けるようになった事は日常生活を送る上でありがたい変化である。

神田橋処方を試して10日が経過した。私は疑い深い性格だからかプラセボ効果が効きやすい人間ではない。20年以上にもなる闘病生活の中で、さまざまな薬を試して来たけれどこれほどまでに「薬が効いた」と感じた事は一度もなかった。以前漢方も試したことがあったけれど神田橋処方ではなかった。

今回の件で情報交換の大切さを痛感した。もし高木のぞみさんに連絡を取っていなければ私は一生「神田橋処方」について知らなかったかもしれない。そしてもう既にこの世にはいなかったかもしれない。

そう考えると勇気を出して助けを求めて良かったと思う。私が「神田橋処方」についてブログに書こうと思ったのは、言うまでもないがフラッシュバックに苦しむ方に「神田橋処方」について知ってもらいたかったからだ。

フラッシュバックを起こして感情的になったり泣き虫になっている自分、ネガティブになっている自分を「これは自分の性格だ」と勘違いし、自分を責めてはいないだろうか。私はそうだった。でもそれは間違いだった。「神田橋処方」を始めてそれら全てが病気の症状であることが理解出来た。これからも経過報告を時々ブログに書いていこうと思う。


Keilani


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?